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“魚との思い出ばかりの20年、だから200年後にも残したい” りっきー / 福井県立大学先端増養殖科学科 / 京都チーム
THE BLUE CAMPに参加する学生たちを、それぞれがエントリー時に提出した自己紹介およびエッセイとともに紹介します。京都チームは、高校生1名、調理学校生1名、大学生5名(うち1名水産研究)の計7名です。
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“魚との思い出ばかりの20年、だから200年後にも残したい”
今回紹介するのは 石田律貴 (りっきー) です。
彼は水産業は漁業者、海の資源、お客様の三本柱で成り立っていると考えている中で、その三本全ての柱が支えるには脆弱な状態だと危惧しています。養殖に魅了されて水産を学ぶと海に優しくないことを知り、美味しい魚介類を養殖で育てたとしても市場では簡単に売れない事実。水産への想いと現実との乖離に葛藤を抱えてきました。そんな悩みを彼は抱ながらも、語り口は饒舌で名司会者のように場を盛り上げていく一面もあり、彼がポップアップの際にどんな話をしてくれるのか今からワクワクしています。
応募時 自己紹介
私は、魚介類が大好きだ。10 歳の時、父と行った和歌山県の釣り堀で釣った真鯛を家で、 自分で捌いて食べた時から、魚の魅力の虜になった。それからは、より美味しい魚を求めて 様々な場所へ足を運び、たくさん美味しい魚介類を食べてきた。
中学・高校生の時は、阪急百貨店梅田本店の魚介類コーナーに毎日通い、四季折々で店頭に 並ぶ魚を学んだ。その梅田百貨店で仲の良くなった店員におすすめされた、愛媛県で養殖さ れている鯛一郎くんという真鯛に出会い、養殖魚に興味を持った。養殖業は乱獲を防ぎ、海 の豊かさにつながる。そう思い、福井県立大学先端増養殖科学科に入学した。
しかし大学で 養殖のことを深く学ぶと、養殖業は全然海に優しくないことがわかった。なぜなら、魚を育 てるための餌は、天然の鰯などの魚を使った魚粉だからだ。それを知ってからは、魚粉を使 わず育てられる牡蠣の養殖。磯焼けの原因になっているムラサキウニの蓄養を大学で研究 している。いずれは獣害などで問題になっている鹿肉を使用した、魚粉不使用の餌を作りた いと考えている。
私は 200 年後も美味しい魚介類が食べられることを目標にしている。豊かな海を守るため に、さまざまな活動をしていきたい。
応募時 エッセイ
「海と食の未来について思うこと、取り組みたいこと」
水産業には3本の柱がある。漁業者、海の資源、そしてお客様。この柱が1本でも折れると水産業の未来はない。漁業者がいなくなればもちろん魚は食べられないし、海の生態系は今とは大きく変わるだろう。海の資源がなくなれば、もちろん魚は食べられない。お客様がいなければ、漁業者は魚をとっても給料が出ない。未来に水産業を残すためには、この三本の柱は一本たりともかけてはいけない。
近年は、お客様が変わってきた。年々魚介類の消費量は下がっている。スーパーに並ぶ魚はマグロ、サーモン、ブリばかり。秋刀魚やイカナゴの高騰などが毎年話題になるが、魚介類の値段は同じタンパク源の鶏肉と比べると高い。
海の資源も変わってきた。私が今住んでいる福井県では、数年前まであまり獲れなかったサワラが今や大量に獲れる。これは乱獲が原因だという人がいるが、少なくとも私の知っている漁業者は皆資源の回復のため尽力している。数年後のために、あわびやサザエをあえて獲らない。逆にそれらの天敵となるタコをたくさん漁獲する。越前カニの漁獲制限、アマモの再生。それだけしても全然増えない海の資源。それが故に漁業者の収入が苦しくなっている。
儲からないから、子供に跡を継がせない漁業者が私の知り合いには多い。また、新規で漁業に就く若者は少なくなっている。このままでは、漁業者は水産大国日本からいなくなるかもしれない。
一本でも折れるといけないのにも関わらず、三本の柱が全て折れかけている。この状況はかなり深刻だと思う。私はこの状況を、養殖業で解決したいと考えている。そのため現在私は大学で養殖を専門に学んでいる。大学で学んでいく中で、魚粉を餌として与える現在の魚類養殖は私の目指す将来像ではないとわかった。そのため、現在は牡蠣養殖とムラサキウニの蓄養を主に研究している。
しかし、今は養殖した美味しい魚介類が簡単に売れる時代ではない。むしろ売るほうが難しいとよく言われる。今冬、福井で牡蠣小屋を運営する予定だ。目的は、三本の柱の強化だ。私は美味しい牡蠣を養殖できるが、売るためのノウハウが乏しい。そのため、今回のブルーキャンプでコンセプト設計や接客、メニューの構成などを学びたいと考えている。
私は、今の美味しい魚介類を私が死ぬまで、200年後まで食べたい。また、こんなにも美味しい魚介類をまだ食べたことのない、知らない人たちに知ってもらいたい。海の未来、食の未来はきっと変わってしまうかもしれないけれど、三本の柱が折れないように、200年後の子孫のためにも尽力したい。