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「ハープ」って呼んでるけどこれからは「テンホールズ」と呼びたい件

ギター弾き語りでアリス(谷村新司・堀内孝雄・矢沢透)を唄っていたのが、中2~高2の3年間と、37~45歳の8年間。50歳代ではいよいよギターが弾けなくなり、誤魔化し誤魔化し数えるほどになってしまって、それでもなんとかアリスを唄い続けたい、ライブで聴衆側ではなく出演者側で居たいとの想いがあって、数年前から「カホン」という打楽器を始めました。

ここ半年はそのカホンにもいろいろ付け加えたくなり、最初はシンバル(10inchのハンドスプラッシュシンバル)を1枚、さらにはサイズ違いのシンバル(同8inch)をもう1枚、そして先日のライブでは間奏の間を持たせようと「ハープ」にも挑戦してみました。

2016年、71歳のニール・ヤング

年代によって想起されるアーチストが異なるかと思いますが、70代の方にはニール・ヤング、60代の方には吉田拓郎、50代の方には長渕剛、40代の方には ゆずをイメージしてもらえればよろしいでしょうか?

ゆずの岩沢さん

いずれも「ハープ」を首から提げて、ギターを弾きながら吹いたり吸ったりして演奏しています。

「ハープ」と申しましたが、実はこれ、「Blues Harpブルースハープ」を気取って省略して呼んでいるだけで、正しい呼称ではありません。音楽に興味ない方が聞けば、あのセレブ感溢れる「竪琴たてごと」こそが「ハープ」じゃないの?と思われても当然なわけで、ハーモニカ吹きの大半はそんなこと百も承知で、わざとミュージシャンを気取って「ハープ」と呼んでいるんだと思います。

元祖・ホーナー社ブルースハープ

もっと言えば…
その「Blues Harpブルースハープ」も、元祖であるドイツ・HOHNERホーナー社の登録商標(ブランド名)であって、一般名称はその見た目のとおり「10 holes harmonicaテン・ホールズハーモニカ」。
最近では「ブルースハープ」よりも「テンホールズ」の方が呼び方として主流になりつつあります。

ケースは意外と安っぽい?

見た目のとおりと申しましたが、「テンホールズ」には長さ10cmほどのボディに10個の穴が一列に並んでいて、ハーモニカの原型に近いモデルと言われています。
一つの穴の上面と下面に互いに逆向きにリードが取りつけてあって、吹いた時と吸った時に違う音が出ます。
C調のものを例に取ると、10個の穴を左から順に吹いた時には「ド・ミ・ソ・ド・ミ・ソ・ド・ミ・ソ・ド」。
左から順に吸った時には、「レ・ソ・シ・レ・ファ・ラ・シ・レ・ファ・ラ」です。

ピアノでも習っていて和音コードに詳しい方ならお察しかと思いますが、
隣り合う3つの穴をまとめて吹けば「トニックコード」(上記の例ではどの3つを吹いてもド・ミ・ソが鳴る)、1~3番目か2~4番目を吸えば「ドミナントコード」(上記だとシ・レ・ソ)、4~6番目か8~10番目をまとめて吸えば「サブドミナントコード」(レ・ファ・ラ)となります。

ただしこれはそのテンホールズがC調の場合であって、楽曲のキーに応じてそれぞれの調子のテンホールズを用意せねばならず、本気でやっている人のハーモニカバッグにはとんでもない本数のテンホールズが格納されています(販売されているキーは30種類に及びますが、アーチストによってよく使うキーはそんなに多くないので全部は使いません…)。

ところで、昨今は小学校や中学校の音楽の授業でハーモニカはやらないようですね。
アラカン世代の私の記憶では、小学校低学年で15穴のC調「ダイアトニック(全音階)ハーモニカ」。これは教育用の初心者向けハーモニカで、よく「チューリップ」なんかを吹くやつ。
そして小学校高学年で上下二段式の「クロマチック・ハーモニカ」に。

今や懐かしい上下二段式クロマチックハーモニカ

実はこれも日本で学校教育用に開発されたもので、鍵盤楽器の白鍵に当たる音(全音階)が下段に、黒鍵に当たる音(半音階)が上段に配置されていました。
これは子供にとっては厚みがあり過ぎて演奏しにくく、またこの頃から「鍵盤ハーモニカ」、いわゆる「ピアニカ」が急速に普及した為、今では殆ど消滅しているようです。

現在、半音階も出せるクロマチック・ハーモニカの主流は「スライド式」が主流となり学校教育では見られないが、一般のアンサンブルではこのスライド式クロマチックが用いられます。
その他、日本式配列の「複音ハーモニカ」(「赤とんぼ」のイメージ)等も有名ですが、ここでは割愛します。

因みに、先ほど「鍵盤ハーモニカ」いわゆる「ピアニカ」と書きましたが、これも「ブルースハープがホーナー社の登録商標」であるのと同様に、「ピアニカはヤマハの登録商標」です。某調査で「鍵盤ハーモニカのことを何と呼んでいるか?」を調べたところ、YAMAHA の「ピアニカ」が約7割を占めており、SUZUKI の「メロディオン」が約15%。残りの大半が商品名ではなく「鍵盤ハーモニカ」と呼んでいました。
これは殆どの小学校で、教材として買わされたメーカー・ブランドの名称そのまま授業でも使っていたことからと推察されますが、中には少数派ですが HOHNER社のブランドである「メロディカ」と呼んでいた人も居るようです…

ヤマハのピアニカ

県別に見ても「ピアニカ」が約7割というのは共通していますが、新潟県では「メロディオン」が大半とか、山口県と沖縄県では「鍵盤ハーモニカ」が主流とか、面白い傾向もありました。
※Jタウンネット調べ

さて、話しを冒頭の「テンホールズ・ハーモニカ」に戻しますが、前述の通り、元祖はドイツ・ホーナー社であって、ホーナー「Blues Harpブルースハープ」が世界中で愛用されましたが、日本のトンボ楽器が1980年代に「MAJOR BOYメジャーボーイ」というブランドを立ち上げ、長渕剛らが使用することで急速に普及しました。

TOMBO メジャーボーイ

ホーナー社が元祖であることは知っていましたが、ホーナー社の「Blues Harpブルースハープ」はボディが木製。「MAJOR BOY」はボディが樹脂製です。ハーモニカという楽器は演奏後に必然的に唾液ツバが溜まりやすいので頻繁に水洗いする必要がありますが、木製だと水分を含んで歪んだり乾くのが遅かったりします。その点、樹脂製のボディだと水切りだけですぐ使えますし水分による狂いもないので便利だということです。
あと、ホーナー「Blues Harp」が約5千円(現在は約7千円)だったのに対して、トンボ「MAJOR BOY」が約3千円(現在は約5千円弱)と入手しやすかったことも大きいかと思います。

ボディの後方にはしっかりロゴマークを!

そして、トンボ社は長渕剛や ゆずのライブで自社ブランドを盛大に訴求し、今やフォーク、ポップス、ブルース、ストリートミュージシャンに至るまで絶大なる信頼と人気を誇るブランドとなりました。

TOMBO社が長渕剛に提供しているTSUYOSHIモデル

蛇足ですが…
1980年代、高校生の私が長渕剛の楽曲を弾いていた頃に、「MAJOR BOYメジャーボーイ」に加えて「MINOR BOYマイナーボーイ」というシリーズもありました。
長渕剛の楽曲は Em等、短調の曲が多かったので、マイナー音階も必要でした。
ところが現在、検索しても「MINOR BOY」という商品が存在しません。そしてなんと、「MAJOR BOY」のキー展開の中に、Amから Gmまで12種類のマイナーキーが用意されていたのです。
メジャーボーイなのにマイナーキー?
どうやら「MINOR BOY」という単語が人種差別問題の中でNGワードだったらしく、輸出もできないし国内販売でも支障があったようです。いろいろ難しい…

最後に、
ギターを弾きながら、或いは珍しいとは思いますが私のようにカホンを叩きながら「テンホールズ」を演奏したい場合には、金属製の「ハーモニカホルダー」なるものを装着するのですが…
これが、ここ半世紀ほど全く進化していないのではないか!と感じていました。

一番シンプルで安いタイプ

昔も今も、ハーモニカを固定するバネが固かったり、首に当たる部分が細くて痛かったり、あと約2千円という価格もあまり変わっていません。

トンボ社の長渕剛アドバイサリーモデル

ところが、ちょっと今風なカッコいいハーモニカホルダーを見つけて、こりゃいいわ!と思って値段を調べたら、なんと約8千円から1万円でした!

HOHNER社の1万円以上するやつ!

ごめんなさい、ホルダーにこだわる前にもっと演奏技術自体を磨きます…

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