プリウスが停止線のかなり手前で停車する謎を語る件
約40年も自動車を運転していますと、モータリゼーションのいろんな変化が気になります。
最近思うのは、なんのエビデンスもありませんが、信号の停止線の手前で停まるクルマの停車位置がどんどん後ろになっているような気がしてなりません。
停止線を超えて停まるのも行儀が悪く、例えば横断歩道を渡る歩行者にとっても邪魔になりますが、停止線よりもずっと後方に停まるクルマを見つけると、これはこれでなんとなくイライラしてしまう自分が居るのです。
因みに、殆どの運転者が卒業したはずの自動車免許教習所の指導基準では、停止線の手前から概ね2m以内の手前で停止するように指導されています。2mといえば大人が寝そべった長さよりも長いので相当手前かなと思いますが、実際、街中には車両1台分つまり4m以上も手前に停車しているクルマが非常に多いと感じるのです。
それが気になって、ネットで騒がれていないか調べていたところ、やはり停車位置が後方過ぎると気になっている人と、反対に敢えて後方に停めている人の意見が見つかりました。
まず、後方過ぎると気になっている人の怒りの意見です。
そして、敢えて停止線よりも後方で停めている人の意見は…
という3つの意見が大半のようでした。
3つめの声は、論外です。
一度、自宅の前の道路に縄跳びの縄を置くなり目印を決めて、そこで停車する実験をしてみてください。ふだんから目印の3mくらい手前で停まっているのではないでしょうか?
マイカーでしたら、『停止線の両端がサイドミラーのここに重なったら丁度良い加減』等の目安を覚えるべきだと思います。斜視持ちで遠近感のない私でも、車両乗り換えの度に停止線ピッタリで停められるように車両間隔を把握してから運転しています。
1番目の、大型車両への配慮ですが…
実はこの配慮がさりげなくできている人が、一番素敵なドライバー。
大型車は左折する際に車両の軌道が大きく外側に膨らむ為、停止線で止まっているクルマの右先端ギリギリを通過せざるを得ないケースがあります。
そのような状況に備えて停止線よりもやや手前に止まっていれば、大型車が余裕を持って左折できます。大型車側のドライバーから感謝の会釈が返ってくることも多いですね。
あと、もっと深く考えて、『二次的な事故被害』を想定して停止線より手前に止めるドライバーも居るようです。
たとえば、信号待ちしている時によそ見運転の後続車に追突されたりすると、勢いで横断歩道の歩行者を巻き込んでしまう危険性があります。停止線まで余裕を持っておくことで、そのリスクを少しは低減できます。
そうした思慮深いドライバーさんには、リスペクトを感じます。
一方で、大型車が右左折してくる交差点ではない(一本道や高架道路の側道等)、また前方に横断歩道があるわけでもない場所の赤信号で、4m以上の空白を残して停車する車両、ドライバーには別の事情があるのでしょうか?
私はそれを身を以て体験し、納得した出来事がありました。
名古屋在勤時には週に2回、レンタカーで愛知県・岐阜県・三重県の各所を巡回していたのですが、いつものコンパクトカーが出払っているとやむなく軽自動車を借りることがあります。昨今の軽自動車の主流は『ハイトールワゴン』といって、車長・車幅に対して背の高いスタイルが多いのですが、共通した特徴としてフロントガラスがほぼ直立に切り立っています。
フロントガラス(クルマ関係の記事ではフロントウインドウとかフロンドスクリーンとも書かれています)を切り立ててルーフを前に延ばすことで、運転席を前方に確保し、室内空間全体を拡大できるのでしょう。
こうしたスタイルの軽自動車で、赤信号が近づいてきていつもの感覚でブレーキを踏み始めると、ある程度近づいた時点で突然、信号機がルーフに隠れて視界から消えたのです!
車両間隔としては停止線までもう2mほど近寄りたいのに、信号機が見えない為にやむなく手前で停車せざるを得ない状況に…
信号機が見えないことには、青信号に変わったことに気付かず後続車に迷惑が掛かります。
あぁ、こういう事情で軽自動車は停止線の手前で停まっているのかと。
クルマのスポーティーさや燃費を競う限りでは、やれ空力抵抗だ、Cd値だとこだわり、フロントガラスを強く寝かせることが主流となっています。一方で、軽自動車はパーソナルユース、つまり1~2名乗車からファミリーユースとして4名乗車での居住性が求められるようになり、法的に制限された全長の中で室内空間を前方に拡大するには、空力による燃費改善を犠牲にしてでもフロントガラスを直角に立てるというのが、解決策だったのでしょう。
ところで、軽自動車以外にも停止線のかなり手前で停車して、矢鱈と目立つクルマがあります。
個人的見解に過ぎませんが、それは新型プリウスです。
ただでさえ、高齢運転者による踏み間違え事故が多発して(プリウスミサイル)、悪目立ちしがちなプリウスですが、昨年(2023年)春に5代目がデビューし、そのさらに先進的なスタイリングが話題になりました。登場から1年経過して、街中でもよく見るようになりましたが、もはやファミリーカー、ベーシックカーの域を超えてスペシャリティカーのジャンルになってしまいました(価格面も含めて)。
そのスタイリングを特徴づける1つが、先ほどから論じているフロントガラスの傾斜角です。
その傾斜角度の明確な数値は公表されていませんが、トヨタ関係者によると『20度弱』。
その数値がどれだけスゴイかというと、フェラーリで約30度弱(296GTB)、日本を代表するスポーツカーであるGRスープラも約30度。
現在、最もフロントが寝ているとみられるランボルギーニのウラカンEVO spiderが約18度と公表されており、それに匹敵する傾斜度ということになります。
因みに一般的なセダンで33~35度、先述のハイトールワゴンタイプの軽自動車は40~50度。中でも軽自動車でベストセラーを続けているHONDA N-BOXは60度です。
量販車種であるプリウスが何を目指してそこまで攻めたのかは分かりませんが、思い切りの凄さには驚きます。
そして不思議なことに、私が見る限りでは、停止線からかなり後方に停車している車種としてプリウスもかなり目立つのです。
先代と較べて車高が約40mmも低くなっていますので、運転姿勢も影響しているのかもしれません。
ま、恐らくは私の同車種に対する偏見でしょうけどね…
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