「原付・原チャリ」の「新基準」について整理する件
私のブログの読者さんは昭和生まれが多いようですので(当社推測(笑))、「原チャリ」という呼称はご存知かと思いますし、なんなら学生時代や若い頃に「原チャリ」=50ccスクーターで通学・通勤されていた方もいらっしゃるかと思います。
さて私こと、来年5月に還暦を迎えるのを機に、自分への誕生日プレゼントとして「赤いチャンチャンコ」ならぬ「赤いハンターカブ」を買う計画を進めていることは、自身への約束と忘備の意味も兼ねてあちこちで発信・宣言してきました。
「ハンターカブ」というのは、HONDAが製造・販売する排気量125ccの、いわゆる「原付2種」バイクの名称です(厳密には「ハンターカブ」は愛称であって正式名称は「CT125」)。
この noteブログでも、
2022/10/6には「早く『カブ主』になりたい件」、
2022/10/20には「原付2種の先っちょにある白いV字型のペイントに気付いた件」
と題して、その辺の想いを書き連ねたことがあります。
そこへきて、この春くらいから「原付」バイクに関する妙なニュースが目に留まりました。
2025年から「原付免許」で125ccのバイクに乗れる!?
これ、けっこう誤解されている方が多いらしいので簡単にお話ししておくと、普通自動車免許に付随している「原付免許」で現状の125ccバイク(いわゆる原付2種)にも乗れる!というわけではなくて、「最高出力を50ccの原付相当(4.0kW)に制御した、125cc以下の二輪車には乗れる」ということになります。
難しい表現ですね。
ボディサイズとしては、今の原付(1種)よりもひと回り大きい125ccクラスのバイクやスクーターでも、出力つまり馬力が出ないようにして最高速度を一定以下に抑えてあれば、「原付免許」で運転してもいいよ!と。
その代わり、「原付」特有のルールである「制限速度30km/h以下」や「二段階右折」、「二人乗りの禁止」は、出力制御した125ccボディの車両でも継続適用されますよ~ということです。
この改定の背景としては、世界基準での排ガス規制に対応するためということです。
有害物質が含まれる排ガスを新基準値まで浄化しなければならないわけですが、規制をクリアできる原付エンジンの開発が技術的に困難であること、開発するだけのコストに見合う売上見込が立たないことから、現行区分での原付の生産・販売の継続が困難であるという事情があるようです。
排気量50cc以下の原付1種、いわゆる「原チャリ」は、四輪市場に於ける軽自動車と同様に日本独自のガラパゴス規格であって、世界市場(特にアジア)は約100cc~250ccが主流であること。また、日本国内では若年層の二輪離れもあって、原付1種販売台数はピーク時(1982年・278万台)から30分の1まで減少している(2023年・9万台)という事情もあって、二輪メーカーが新しい50ccエンジンの開発を断念したことが挙げられます。
ということで苦肉の策として、現状の原付2種車両の馬力と速度を制限(デチューン)した「新規格原付」とも呼ばれる区分の車両が、来年以降、新発売されるということです。
とはいえ、「新規格原付」は現状の「原チャリ」に比べてボディサイズや重量が増大し、取り回しや駐輪スペースの問題もありますので、現行の50cc原チャリが販売されている間に新車に買い替えておこう!と考える方もいらっしゃるわけですが、メーカー各社とも現行規格での50ccの生産は既に終えており、市場在庫、つまり街のバイク屋さんの店頭在庫の争奪戦も終盤となっています…
付け加えるならば、
今の原付免許で、或いは普通自動車免許で125ccのバイク・スクーターに乗れるようになるのなら、冒頭の HONDA CT125ハンターカブや、HONDA PCX、YAMAHA NMAXといった(125ccとしては)大柄な人気車種に乗ってみたい!といった声も大きいわけですが、そうした「大型原付2種」では「新規格原付」への対応はせず、今の原チャリよりひと回り大きいくらいの「軽量原付2種」車種から「新規格対応」のグレードが発売されるのでは?とみています。
もしくは全く新しい新モデルの登場も期待されますが、世界同時発売にしてよほどの台数が見込めなければ開発コストは回収できないでしょうし、それだけの開発費用を投じるならば、今なら「電動バイク」の開発の方が優先度が高いと思われます。
そうなってくると、例えば仮に現行の HONDA Dio110や YAMAHA JOG125の「新規格版」が発売されたとして、それが最高速度60km/hの原付2種なのか、30km/hの新規格原付1種なのか、街中でパトカーや白バイ警官が速度違反を見張る際にどうやって判別するのか?という問題が残りそうです。
明確な判別方法としては、ナンバープレートの色が、
・50cc以下(原付1種);白
・51~90cc(原付2種乙);黄色(現在は市販の新車なし)
・91~125cc(原付2種甲);ピンク
と規定されていますので、車両後方からその色を確認するしかありませんし(前方にはナンバープレートなし)、行儀悪い輩がナンバープレートを折り曲げて見えなくする(法令違反)と、もう瞬時には判別不能です。
以前の記事で書いたように、最高速度60km/hの原付2種の場合はフロントのフェンダー先端の白いV字マーク、後方のフェンダーに白い逆三角形の識別マークを付けるという規則があるわけですが、これまた逆輸入車両には貼られていなかったり、市販のシールが売られていたり、そもそもホワイトのフェンダーの場合はマークが見えないなど、現時点でも問題だらけです。
あと、一番の不安としては、もともと60km/h以上で走れるポテンシャルのあるエンジンを、コンピューターチューニング等によって出力制限するわけですが、そこはちょっとした知識とPCと工具があれば、素人でもすぐに馬力アップできるんじゃないの?という点です。
そこはメーカー各社に対して、相応の専用設備や専用工具がないとプログラムを触れないような対策を求められているわけですが、その辺は昔からイタチゴッコがつきもの。当然ながら、いとも簡単に改変できる「チューニングキット」が通販や個人ショップで出回るのも時間の問題なんでしょうね。
というわけで、書きたかった本題に到達する前に文字数を稼いでしまいました。
もともと書きたかったのは、排気量ごとのバイクの車両区分(大型二輪とか普通二輪とか)と免許区分(二輪の小型自動車とか軽二輪とか)の複雑怪奇な区分けについてのお話しだったわけですが、それはまた次回の機会に…