スーツ選びで『センターベント』よりも『サイドベンツ』が主流で驚かされた件
水曜日はオヤジのファッションを語っております。
少し日が経過してしまいましたが、11月に『パーソナルコーディネーターの真似事をした件』を書きました。
後輩のご子息の成人式向けのスーツを見繕いに同伴させていただいたわけですが、私としてもいろいろと気付きがありました。
最終ノミネートに残った2つのブランドを含め、巡回したブランドの過半にて、スーツが全て『サイドベンツ』仕立てだったのです。
スーツ自体はオーセンティックで上質なものばかりを較べてきましたが、何故か最もオーソドックスな(だと私が考えている)『センターベント』のスーツが見当たらない…
どうも不思議な気分で、店員さんに『最近はセンターベントってないんですか?』と尋ねてみたところ、『そうですねぇ、うちでいえばちょっと前からもう全部、サイドベンツですね』との由。
ここで、『センターベント』と『サイドベンツ』について、説明が必要でしょうか?
簡単にいえばジャケット、スーツの上着でもブレザーでも共通ですが、その背中下(尻)部分の切れ込みで、画像のように真ん中が切れているのが『センターベント』、両端に切れ込みあるのが『サイドベンツ』ですね。
何故、前者が『ベント』で後者が『ベンツ』なのかは、単数か複数かの違いです。
スーツの起源がイギリスですので、この切れ込みも元々はイギリスが発祥です。
私のいつしかのブログで書いたかもしれないのですが、イギリスの乗馬文化の中で、馬の鞍に跨った際にジャケットが美しく見えるようにしたのが『サイドベンツ』だと思い込んでいました。
ただ、今回改めて調べてみると、『乗馬の際に美しく見えるよう』に発明されたのは、『サイドベンツ』ではなく『センターベント』だということです。
え?と思ったけど、そう書いてある記事の方が多いから仕方ない…
じゃ、『サイドベンツ』が何故生まれたのか?というと、どうやら腰に剣を差すのに収まりが良いように真横に切れ込みを入れたようです。
剣?
おそらくは軍服に短剣かサーベルを差すイメージですかね。
いずれにせよ、ここ数年のトレンドとしてセレクトショップ等で取り扱っているスーツ・ジャケットは『サイドベンツ』らしいです。
尤も、ロードサイドの紳士服量販店では従来どおり『センターベント』の方が主流のようですので、そこはあまり拘らなくてよいのかも。
因みに、『センターベント』にするか、『サイドベンツ』を選ぶか、敢えて悩む方には下記を目安に…
年齢的には、サイドベンツはダンディでエレガントな感じが伴いますので30歳代以上の大人の方に。
20歳代の方にはセンターベントが似合うと思うのですが、上述のように若い方向けのスーツもサイドベンツが増えているということはチェックしておいてください。
ついでにあと2つ、蘊蓄を述べておきましょうか。
1つは、センターベントの切れ込みのデザインを『鍵』型にデザインしてあるものは、『フックトベント(フックドベント・フックベント)』と呼ばれています。
これはアメリカ・アイビーリーグで生まれた『アイビー・ファション』に始まり、『オーセンティック・トラディショナル』としてアメリカの政界・財界に広がった意匠です。
私が大好きな J.PRESS社のアイコンでもあります。
もう1つは、『センターベント』でも『サイドベンツ』でもなく、切れ込みがない『ノーベント』。
このタイプは、タキシードやディレクターズスーツと呼ばれる『礼装』によく見られるタイプです。或いは、1980年代に一世を風靡した『デザイナーズブランド』のモード系スーツでも、この『ノーベント』が主流でした。
背中からお尻にかけてのラインをスッキリとまとめ、スタイリッシュなシルエットが期待できますが、その一方で、ボタンを留めたまま立ったり座ったりする時に若干の窮屈さを感じるかもしれません。
1980~90年代のバブル期は機能性よりもファッション性が優先された時代でしたね。
というわけで、ジャケットの裾の切れ込みについての取り留めないお話しでした。
※トップ画像はMARUTOMI BLOG 2019/6/10 よりお借りしています。