新潟市『アクエリアス』の名畑マスターの想い出を語る件
先週のこのブログで、『酒類会社の元セールスが、オーセンティックバーをお薦めする件』を書かせていただきました。
本当は、ここに書きます有名なバーテンダーとの想い出話しを綴りたかったのですが、そのバーテンダーに登場いただくまでの前段階だけで、先週のブログで3千文字を費やしてしまいました。
悪いクセです…
さて、そのバーテンダーは名畑さんといいます。
新潟市古町、いやたしか東堀通で、『アクエリアス』というカクテルバーを営んでおられました。
私が新潟市で仕事をして、名畑マスターにお世話になっていたのが1992~95年頃。
既に平成ですから、ネットを探せば【新潟市_アクエリアス】でも【名畑_新潟_バーテンダー】でも何かしら検索で引っ掛かると踏んでいたのです。
しかしながら、残念なことに『アクエリアス』というカクテルバーも、『名畑』さんに関する情報もほとんど出てこない…
同僚や後輩の同業者にも、またメーカーのセールスも人望厚かった方なので、NBA(日本バーテンダー協会)新潟支部の幹部でもいらっしゃったはずです。私の記憶では技術部長だったかと思いますが、ネットでは相談役もされていたような記述がありました。
残念ながら、フルネームが出てこない。25年も前のことで、当時の名刺も残っておらず。
10年以上前でしたか、風の噂でその名畑マスターの訃報に触れました。
驚いて、哀しくて、その時にネットを検索したら幾つかの記事にヒットした記憶があります。だから、もう少ししっかり検索したら、往年のお写真くらいは見つけられないかと…
お読みになった方で、『アクエリアスの名畑マスター』をご存知の方、或いはネット検索で引っ掛かったよ!という方がいらっしゃいましたら、情報提供いただければ嬉しいです。
そんな名畑マスターには、カクテルをいただきながらいろんなお話しを教えていただきました。
私が大好きな高田純次さんの如く、飄々として掴みどころがない方で、軽妙洒脱なトークが魅力的でした。
名畑マスターから承った幾つかのバートークを、想い出に浸りながらご紹介してみます。
名畑マスター 『なぁ、ウイスキーって、何通りの飲み方があるか、知ってるか?』
私 『え? 水割りとかストレートとかですか? オンザロックとかソーダ割りとか入れたら5通りくらいですか?』
マスター 『違うだろ、ウイスキーだぞ。3通り(SUNTORY)に決まってるじゃないか!』
私 『え? マスター、サントリー派でしたっけ?』
マスター 『違うな、オレはこっちのウイスキー飲むのが、日課(NIKKA)だよ!』
名畑マスター 『おぉ、もうすぐ大晦日といえば除夜の鐘だな。なぁ、除夜の鐘って幾つ鳴らす?』
私 『108でしたっけ?』
マスター 『その108って、どういう意味だ?』
私 『人間には108個の煩悩があるとかで、その108の煩悩を追い出すんですよね』
マスター 『だからその108の内訳だよ!』
私 『え~、分かんないっす・・・』
マスター 『人生はな、辛くて苦しいことばかり。な、人生って四苦八苦なんだよ。』
私 『はい?』
マスター 『だから、四苦(4×9)=36、八苦(8×9)=72なんだよ。足して幾つだ?』
私 『36と72とで、あ、108になります・・・』
マスター 『おぅ、分かったか?』
こんな調子で、妙な算数に付き合わされます。
名畑マスター 『酒はな、飲み過ぎてはイカン。でも、適量を嗜むことは健康にもいいことだ!』
私 『そうですね、まさに酒は、百薬の長ですよね!』
マスター 『そう、ところで、百薬ってなんだ?』
私 『どんな薬にも勝るってことですよ』
マスター 『違う、なんで百薬だ?って訊いてる』
私 『知りません・・・』
マスター 『酒を飲むとな、泣き上戸っていってシクシク泣くヤツと、笑い上戸といって笑うヤツが居るだろ?』
私 『はい、他にも怒り上戸とか居ますよね。』
マスター 『怒り上戸はいいんだ、この際。シクシク泣くヤツと、ワハハハと笑うヤツが居るだろ?』
私 『はい、まぁ、そうです。』
マスター 『泣くヤツは、シクシク(4×9)で36だ。で、笑うヤツはハハハ(8×8)で64だ。足したら幾つだ?』
私 『36と64で、あ、100であります!』
マスター 『そうだろ? それが酒が百薬の長と言われる所以だ!』
なんだかもう、突っ込む気にもなりませんが…
あれから30年を経て、いまだに鮮明に、講釈を垂れ終えて得意満面の名畑マスターの笑顔が思い出されるのです。
さて、前段で名畑マスターに関するネット情報が何もないと申し上げました。
なんとか思い出したのは、確か古町に名畑マスターの愛弟子のバーテンダーが1人いらしたこと。
私の在任中、1994年頃に独立し古町6番町辺りにショットバー『ヨークシャテリア』を開店された古川佳彦さん。
その前年1993年のNBA全国バーテンダー技能競技大会で総合優勝に輝いた、創作カクテル『紙風船』の考案者です。
ならば、【新潟_ヨークシャ_古川】とかで検索すれば何かしら分かるだろうと思って検索するも、またもや何もヒットせず。私の新潟時代の想い出が悉くなかったことになっている…
でも、名畑マスターは亡くなったけど、古川さんはまだ若かったはず!と思い直し、【新潟_紙風船_カクテル】とか検索しているうちに、妙なお店に行き当たりました。
『居酒家すいとんや』
食べログで外観写真を見る限りでは典型的な和風居酒屋で、店名からして『すいとん』を提供されている?
しかも赤い暖簾には、『らーめんや』の染め抜きが…?
老舗ホテル・イタリア軒の門前、坂内小路で営業されているようです。
ただ口コミを読んでみると、衝撃の文字が…!
そこでもう、涙腺が緩んでしまって涙が止まりませんでした。
そういえば古川さんは、ヨークシャテリア開店前に何処かの料理屋で板前をやっていらっしゃいました。
今は『すいとんや』の板長なのかマスターなのか分かりませんが、古町のど真ん中でやりたかったことを貫いていらっしゃるようで、嬉しい限りです。
どなたか訪問される機会がありましたら、『こんな男が京都に居るらしい』とひと言、お伝えくださいませ。
最後に…
あの当時、スナックや高級クラブでのママさん営業に疲れた若手セールスの私を癒してくださった、古町の幾つかのショットバーの中で、今もネット検索に引っ掛かる懐かしい店名を…
いつしか、新潟市に出張か旅行する機会があったら…
名畑マスターにはもう会えないけれど、『すいとんや』の古川さんと、『BAR町田』の町田さんにはしっかりご挨拶申し上げたいと、心から楽しみにしています。
あ、もう1つ、思い出しました。
名畑マスター 『新潟名産のフルーツって何がある?』
私 『あぁ、ラ・フランスとか葡萄、あと桃とかスイカでしたっけ?』
マスター 『イチゴだよ! 越後の国って言うだろうが!』
これはあながち冗談でもなくて、この後、『越後姫』というブランドのイチゴが県の名産品となって、それを使ったフローズンカクテルが名畑マスターを代表するカクテルの1つとなりました。
飲んでみたかったなぁ…
※タイトル写真は、zakzak 2016/5/17より。三澤政樹バーテンダーの作品画像をお借りしました。