HONDA『プレリュード』復活!で反響はスゴイが売れるのか?が不安な件
昨年秋の『ジャパンモビリティショー2023』、そして『ロサンゼルスオートショー2023』に於いて、HONDAから『新型プレリュード』のコンセプトカーが発表されました。
市販化でどう変わるかは不明ですが、リアデザインは『横一文字ライト』を採用しているようです。
その時のボディカラーは白でしたが、この4月のイベント(NTTインディカーシリーズ第2戦・アキュラグランプリ・オブ ロングビーチ2024)では、HONDAらしい赤いボディカラーが展示され、多くのクルマファン、とりわけ私と同世代のミドルシニア層から熱い視線を集めていました。
『プレリュード』の車名復活!となれば、遠く筆者の学生時代に遡らざるを得ませんね。
ネット記事では『22年振りの復活』と書かれていますが、全5世代あるプレリュードの中でも、プレリュードが『デートカー』の呼称を確立し最大の人気を誇ったのが2代目(1982~1987年)だと思っていますので、そこからカウントするとなんと約47年も経過していることになるわけです。
続く3代目(1987~1991年)は、リトラクタブルヘッドライトを継承した正常進化版でしたが、その後、安全基準の変更からリトラクタブルヘッドライトが廃止され、また『スペシャリティカー』や『スポーティカー』というジャンルの人気が低下してきた4代目(1991~1996年)では平凡なデザインとなり、5代目(1996~2001年)を以てそのブランドは一旦途絶えてしまいました。
先ほど触れた筆者の学生時代(1984~1988年)、多くの男子にとって『大学生とクルマ』は切っても切れない関係にあって、それが親からのお下がりであっても、バイトで稼いだお金で自分で買ったものであっても、『クルマを持っていることは当たり前』であり、男子の価値が『乗っているクルマ』で値踏みされる、そんな時代でもありました。
私は大阪府の郊外にある、周辺からは『イモ大学』と揶揄される『ダサ系』の大学に通っていましたが、それでも年に数回は誰かが『合コン』の話しを持ってきてくれて、ダサいながらもアイビー系の服を着ては張り切って参加しておりました。
その際、最初の自己紹介の段で女子チームから最初に訊かれることが、
『クルマ、何に乗ってはるんですか?』
昨今、『合コン』という言葉があるのかどうかは分かりませんが、取り敢えず女子からの関心事は、①年収・勤め先、②ルックス、③性格・趣味・相性の順番なのかなと思います。
それが私の学生時分には、まず所有しているクルマを確認することで、その男性の経済力と趣味・センスを推し量っていたのでしょうか?
その時期(1985年前後)、クルマには『デートカー』というジャンルがあって、その確固たるヒエラルキーが存在していました。
そのトップに君臨していたのが、20歳代の学生やサラリーマンでの所有率は低いものの『外車』層です。
まずは、後に『六本木のカローラ』と呼ばれることになる『BMW 320i』。欲を言えばその上位の『BMW 325i』。
そして、『小ベンツ』と馬鹿にされながらも庶民には高嶺の花だった『M.BENZ190E』。さらにはその上位の『190-2.6E』や『300E』。
学生にとってはこうした『外車』(私は個人的には『輸入車・外国車』と呼ぶポリシーですが、当時は『ガイシャ』と呼ぶのが一般的でした…)は限られた上位層のものでしたが、私の中高同級生のK原クンは新入生の時から『BMW 633CSi』という高級車に乗っていて、『イモ大』のキャンパスでは浮いておりました…
そうそう、『ガイシャ』と言えば『Volkswagen』も、それなりの評価がありました。
中高大の親友のAクンは『GOLF Ⅱ』、同じく中高親友のY村クンは『GOLF Cabriolet』、後輩のT橋クンは『Karmann Ghia』に乗っていました。カッコヨカッタなぁ…
さて、限られた上位層の次に来る『国産車でのアッパークラス』が、当時の呼称で『ハイソカー』と『スペシャリティカー』です。
まず『ハイソカー=ハイソサエティカー』ですが、4ドアセダンでいえばTOYOTA 『CROWN』や『MARKⅡ』といった『オヤジ車』。当時の学生にとっては、オヤジっぽくてダサいというよりも、背伸びした大人の世界に憧れたのでしょうか…
父親のお下がりというパターンもありましたが、中でも人気を二分していたのは『CROW Royal Saloon』と『MARKⅡGRANDE Hardtop』の2車種でした
『MARKⅡ』には『CRESTA』・『CHASER』という兄弟車もありましたが、女子は『MARKⅡ』に何故かこだわっていました。
あと、『TOYOTA CARINA EDも入れてくれ~』という声も聞こえてきそうです。
ED=Exciting & Dressyの略でしたが、現代では男子たるもの、EDという車名には乗りにくいですね…(苦笑)
私の友人では、H田クンが真っ赤な『PRELUDE』から『CARINA ED』に乗り換えていました。
2ドアでいうと、なんといっても『TOYOTA SOARER』ですね。
その唯一無二の存在感は、現在の『LEXUS SC』に引き継がれています。
そういえば、私の小中高大を通じての親友・N岡クンは、『CROW Royal Saloon』から『SOARER』と華麗に乗り継いでいましたが、両車とも阪神高速か名神高速の壁に激突して廃車にしていたような記憶があります…
さて、いよいよ学生らしいレベルでの『デートカー』たちです。
今や軽自動車の高級グレードが総額200万円を超える時代ですが、当時はコンパクトカーで120万円、スポーツモデルでも200万円まででなんとか買えました。
加えて、学部によっては授業も殆ど出席しなくても卒業できたとか、大学生というだけで美味しいアルバイトがいくらでも探せたとかの環境もあって、『多くの男子学生がクルマを買う』、『大した用事もないのにクルマで行く』、『何人かで遊びに行く時もそれぞれがクルマを出す』、『パーツ交換等でクルマを弄る』というのが当たり前の時代でした。
かく言う私も、家庭教師から予備校事務員、ラーメン屋から交通量調査員、赤ペン先生と様々なバイトを掛け持ちし、稼いだ現金110万円をポケットに入れて、自転車でHONDAディーラーに走って『HONDA CIVIC 25R』を購入しています。
その当時、『デートカー』として『SOARER』や『PRELUDE』に次ぐ人気を誇っていたのが、『NISSAN SILVIA』と『TOYOTA CERICA XX』。
『CERICA XX』はその後、映画『私をスキーに連れてって』に登場する『GT-FOUR』を経て『SUPRA』に発展しますが、そんな高級車になる前の『ダブルエックス』が学生の定番でした。
一方で、男子学生みんなが『女性にモテる為』にデートカーを選んでいたかというとそうでもなく、純粋にスポーティーなクルマを選択する層も少なからず居たわけで…
そちらの代表で言うと、『NISSAN FAIRLADY Z』であったり、『TOYOTA Corolla LEVIN/Sprinter TRUENO』。このレビンとトレノの兄弟車は、当時の形式番号であるAE86を継承して、現代の『TOYOTA 86』というスポーティーカーに進化しています。
あと、『2シータースポーツ』というジャンルでは、『MAZDA(Eunos) Roadster』と『TOYOTA MR2』の2車種が欠かせない。
ま、上記何台かの車種を『女性ウケ云々ではなく純粋にクルマを…』とは書いたものの、これらのクルマに乗っていた男子の多くも、やはり女子ウケを考えていたに違いないことは明白でありますが…
さて、ここからが本日の本題です(笑)
冒頭に書きましたように、『HONDA PRELUDE』の車名が復活し、2025年には市販化が濃厚と報道されています。この『PRELUDE』の名跡復活に、40代以上のモータージャーナリストやクルマ好きオヤジたちはザワついていますが、果たして目論んだ売上げは見込めるのでしょうか?
私が回顧してきた40年近く昔と現代とで、クルマの価格は大きく上昇した一方で、若年層の年収はそれに見合うだけの増分はありません。また、若年層の小遣いの使い道がスマホだサブスクだと多岐に亘るなか、40年前のようにクルマに注ぎ込むカネもないし、そもそも興味がありません。
例えば、私が21歳で買った HONDA CIVIC は、当時コミコミ110万円でしたが、今では400万円の高級スポーツカーです。HONDA PRELUDE も、当時は約200万円あれば買えましたが来年市販される新型はその2倍では済まないでしょう。
その価格帯に食いつけるのは、子供がある程度大きくなって『ファミリーカー』を卒業したオヤジ層だと思いますが、オヤジ層にとって車高150cm以下の低いクルマは、実はその乗り降りがたいへんなんです。
学生時代は身体の柔軟性もあって機敏に動けたので、全高129cmのPRELUDEに乗り込むのも苦にはなりませんでしたが、40代を超えるとしんどくなってきます。
だから今、背の高いSUV車やミニバンが大人気なわけです。
昭和の時代、政治家や大企業役員は黒塗りのセンチュリー、ヤクザの親分は黒塗りのベンツSクラスと相場が決まっていましたが、昨今は殆どが ALPHARD・VELLFIRE に取って変わられました。それほどまでに、『車高が高いことが正義』と価値観が変わってきています。
というわけで、プレリュードの復活&市販化はクルマ好きオヤジにとって非常に嬉しいニュースであるものの、若者には高過ぎて(価格)、ミドルシニアには低過ぎる(車高)という、なかなか難しい条件を孕んでいると思わざるを得ないのです。
願わくば、この素人オヤジの予想がハズレて、新型プレリュードが大ヒットすることを祈っております。