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スーパーカーのボンネットに『逆ワニ型』が多い件

木曜日はオヤジのクルマ談義です。

1965年(昭和40年)生まれ、スーパーカー世代です。
1976年(昭和51年)、たしか小学5年生の時に大阪ひらかたパークの駐車場で開催された『スーパーカーショウ』を観に行って、幾多の近未来的なマシンに大興奮し、父親から借りた PENTAXで写真を撮りまくった憶えがあります。
あ、その帰り道にその PENTAXを落として壊してしまい、父を悲しませた想い出も蘇ってきました…。

スーパーカーの展示はチビッ子が手を触れないようにチェーンで囲われていましたが、一定時間おきにスタッフがクルマのドアやボンネットを全開にしたりして、スーパーカーに『ポージング』させていました。今でいう『映え』ですね。
特にランボルギーニ・カウンタック等の『シザーズドア』の全開スタイルは躍動感と非現実感に溢れ、子供心にワクワクしたものです。
カウンタックを『ガルウイング』ではなく『シザーズドア』と呼ぶ件についてはこちら

ランボルギーニ・カウンタックLP400 の全開ポーズ。何度も申しますが『ガルウイング』ではなく『シザーズドア』です。

ドアの他に驚いたのが、ボンネットの開き方でした。
一般的に、というか子供の頃から近所で見慣れた風景は、ボンネット(フロントフード)は『ワニの口』のようにガバッと前方が開くスタイル。つまり、ボンネット後方にヒンジがあるタイプでした。
然るに、展示されているスーパーカーのうちの何台かは車両の前方先端にヒンジがあって、ボンネット後方から前に開く形式です。もっと言えば、蓋のようなフロントフードだけが開くだけでなく、ボディの前半部分がそのまま斜めに開いてしまう車種もありました。
あぁ、スーパーカーってやっぱり違うんや…
子供心に、興奮冷めやらぬ風景。

ランボルギーニ・ミウラの前後ボンネット開放の図(トップ画像も同じ)。因みにミッドシップですのでエンジンは座席後方に積んでいます。

先ほど申し上げたように、『ワニの口』の如く前方が開く通常のタイプは、専門的には『アリゲーター型(ワニ型)』と呼ばれています(クロコダイルではダメなのかと問われても分かりません…)。或いは『後ヒンジ型』。
一方で、上記のスーパーカーのようにボンネットの後方が持ち上がるタイプを『逆アリゲーター型(逆ワニ型)』、『前ヒンジ型』、或いは『チルトボンネット』と呼ぶそうです。スーパーカーのみならず、一部のクラシックカー、ヴィンテージカーに見られる形状です。
クラシックカーにも見られるということは、超高速を求められるスーパーカーのように空気抵抗や風切り音対策を突き詰めた結果という訳でもなさそうですね。
その辺が気になって調べてみると、どうやら当時のボンネットロックの強度に問題があったようです。
即ち、走行中に風圧を受けてボンネットロックが外れた場合、『ワニ型』だとボンネットフードが全開してドライバーの前方視界を塞いでしまい、極めて危険な状態になります。
これが『逆ワニ型』だと、後方のボンネットロックが外れたところでフードは風圧に抑え込まれたままで大丈夫です。

スーパーカーブームで3大人気を競ったフェラーリ 512BB(ベルリネッタボクサー)のボンネット開放。
上記BBの後継車であるフェラーリ・テスタロッサも同様の開き方です。

ただ、スーパーカーにお似合いでカッコよく見える『逆ワニ型』には大きなデメリットがあります。
それはメンテナンス性
即ち、エンジンそのもののメンテのみならずオイル交換でもバッテリー交換でもさらにはウォッシャー液補充でも、『逆ワニ型』ボンネットはクルマの側方からエンジンルームを覗き込むことになり、手を入れるのも実に面倒。
それが『ワニ型』ボンネットなら、クルマの前方からエンジンルームを一瞥できるので一連のメンテが非常にやりやすいというわけです。(尤も、ミウラやテスタロッサのようにミッドシップエンジンの場合は前部は小トランクでしかありませんが…)

逆ワニ型』のもう一つのデメリット。
それは激しい正面衝突の事故の際に、『逆ワニ型』だとボンネットフードがフロントガラスを突き破って運転席・助手席に飛び込んでくる…(怖)
ワニ型』であれば、後ヒンジのおかげでボンネットフードがフロントガラスを襲う危険性は少なくなります。

BMWのヒストリックカーのミーティングでは、逆ボンネットを開けて記念撮影するのがお約束だそうです。
MベンツのヒストリックSLもこんな感じ。因みにこのドアこそがガルウイングです。

さらに、『ワニ型』が主流になった背景として大きいのが、『二重ロック機構』の登場です。
一般的なクルマの用語として『半ドア』というのは理解いただけるかと思います。即ち、完全に閉まった状態ではないけれど、多少の力が加わってもドアが開かない状態。これが『二重ロック機構』です。これをボンネットフードのロックにも採用することにより、万一、ボンネットフードが開いても『半ドア』状態が保たれて、全開は免れるという仕組みです。
ボンネットに於ける二重ロックは、車内のレバーでロックを外し、次いでボンネット自体のロックを解除するという手順を要します。

現行で逆アリゲーターボンネットを採用するマッチョカーの代表=シボレー・コルベット
現行で逆アリゲーターボンネットを採用するジャガーF type

かくして、現在のクルマは安全性とメンテナンス性に優れた『アリゲーター型(ワニ型)(前ヒンジ型)』が圧倒的主流となったわけです。

ただたまには、安全性を担保した上でのデザイン重視で、『逆アリゲーター型(逆ワニ型)(後ヒンジ型)』のモデルが発売されないかなぁと楽しみにしています。
もしかしたら、私が知らないだけで何車種かが販売されているのかもしれませんが…

最後に、ランボルギーニ・カウンタックの曾孫というか系譜を引く現代のアヴェンタドールは、一般的なワニ口ボンネットでした(苦笑)

本記事および多くの写真は、Web CARTOP ‘22/4/27 および web Car Graphic ‘05/7/23を参考にさせていただきました。

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