作家としての最後の一日。(長文7500文字。それなのに前置きのみで本文は始まりません! すまんこってす!!)
昨日まで「作家」を名乗っていました。今日から「フリーター」のソウ マチです☆
自分の中では昨年の8月に作家という立場は終わっていました。自著を上梓した後に、次巻のご依頼がなかったからです。仕事のご依頼がないのに、作家を名乗るってどうよ? それって「元作家」じゃん。
けれども有難いことに「作家として講演(授業)をしてほしい」というご依頼を4件も受けていたので、この4件が終わるまでは「作家」と名乗ることにしました。
そして昨日、無事に最後の授業が終わりました。いつも応援してくださった皆さまのおかげです。本当に感謝しております。ありがとうございました。授業の内容はまた後日アップします。その節はどうぞご高覧ください(^▽^)
今日は、作家として過ごした最後の一日のお話です。
きっかけは私を激推ししてくださっている教育長さまが「小学校でソウさんに話をしてもらいたい!」そうおっしゃって、4校が名乗りを上げてくださったことです。これだけでも感謝です! どこの馬の骨ともわからん私に大事な授業をさせてくださる! ネットでちょっと調べたら「パンツはいてない」とか「クソビンボーで薬が買えない」など不穏なコトしか書いてないのに、大事な生徒さんを逢わせてくださるなんて!
それに作家なんてワケわからんヤツと、先生方がやり取りするのは面倒だったと思います。いつでも最初のメールに「作家ではありますけれど、正しい日本語は使えません! 先生もどうぞお気になさらず!」そう書きました。作家と名乗ると「正しい日本語を駆使しなければ!」と、すごく難しい言葉を使ってくださる方が多いためです。「〇〇の候、ソウ先生におかれましては益々御活躍のことと推察致します」みたいな。私、そういうのムリですから! どうぞお気軽に!
小学生に何を話せばいいか、最初は悩みました。色々と考えて「みなさんのお役に立つお話をしたい」ソウはそう思いました。でももっと、大事なこともお伝えしたい……。
以前の私は「人は生きてるだけで百点満点!」と言っていました。寝たきりで意思疎通ができなくても、生きてるだけで百点満点! そしてそういう方も感謝される世界にしたい! それでは人は、なぜ生まれてきたのだろう? 人が生きる目的って、なんだろう?
「人は幸せになるため生まれてきた」
これだ! この大事な目的を小学生の皆さんへお伝えしたい! そして皆さんが幸せになるため、私の失敗から学んだことをお話したい! そういうワケで必死のもっしで原稿を書き上げて、最初の小学校へ行ったのが先月です。そこから2校目へオジャマして、昨日は最後の3校目でした。4校からご依頼を受けましたけれど、生徒さんの人数が少ないため、昨日は2つの小学校の合同授業だったのです。生徒さんは4校ですが、場所は3ヶ所です。
お話したのは全員6年生です。同じお話をすれば楽だったのですけれど、お話をして大事な生徒さんたちの反応を見ていると「ここを深堀りすれば良かった!」「あぁ、このお話をすれば良かった!」など反省や後悔が次から次へと出てきます。ゆえに3回とも少しずつ内容が違いました。でもどれがベストだったか、わかりません。どれもその時の精一杯を詰め込みました。
昨日の早朝、私はギリギリで完成した原稿を持って、雪にぶち当たりながらチャリでレンタカー屋さんへ行きました。寒い! 痛い! 今までの小学校は場所が比較的近かったので、厚かましくも車の送迎をお願いしました。でも今日の学校は、とんでもなく遠い山の中です! 先生に雪道を2往復してもらうのは危険なので、自分で車を借りました。オレは行くぜ!
ドキドキしながらレンタカー屋さんへ行くと、優しそうなおじさまが車の説明をしてくれました。そして……。
おじ:お仕事で遠くからお見えですか? 雪の中、大変ですね!
ソウ:家はすぐ近くですよ!(車を持ってないから借りました)
おじ:どうぞお気をつけて! どちら方面へ?
ソウ:信楽方面です。
おじ:おぉ! ワシは信楽に住んでるんですよ! 家は〇〇あたりで、〇〇が〇〇で、〇〇したんですよ!(←個人情報ダダ漏れ)。あっちは雪はぜんぜん降ってないです!
ソウ:良かった! 雪を心配していたのです! ありがとうございます!
雪の情報はありがたかったですけれど、大事な個人情報を初対面の私に漏らしちゃダメですよ! 住所も〇〇も〇〇も〇〇も、すべて言っちゃダメです! どうして人は、どなた様も私に個人情報を話したがるのだろう?(←異常に話しやすいらしい)
首をひねりながら軽自動車を発進させます。車さん、今日はよろしくね! 町中は雪が残っていましたけれど、信楽へ入ると雪はなくなりました。陶器の狸が並んだ街道をトコトコ走ります。雪が心配で1時間早く出発したので時間に余裕があります。いろいろな陶器店の狸を横目に見ながら、早春の信楽を進んでゆきます。
初めて信楽を訪れたのは、今から25年前です。当時は福岡県に住んでいて、一生福岡から出る予定はありませんでした。旅行で尋ねた信楽を「もう二度と来られないから、目に焼き付けておこう!」そう思ってガン見していたのに、アレコレあって滋賀県へ移り住み、そこで根っこを生やして作家として信楽でお話をする……人生、何が起こるかわからんなぁ……当時25歳で主婦の新妻だった私に「あなたは将来離婚して作家になって、この町の小学校でお話をするんだよ」そう伝えたら、なんと答えただろう?
車はどんどん山の中を進みます。信楽の小さな町を抜け、どんどん進んでゆく。お店も家もまばらになり、山と田んぼが広がるばかり……そのうち田んぼもなくなって、山しか見えない……時間があったらコンビニでお菓子でも食べながら待機しようと思っていたけれど、最後にあったコンビニは遥か後方です。後戻りしていたら、遅刻してしまう……とにかく小学校へ行ってみよう。
ナビに従って道を曲がり、離合できない狭い道をどんどん進んでゆきます。こんなところに小学校があるのか……不安な気持ちで走っていると、小さな校舎が見えました。ちっちゃ! あまりに校舎が小さすぎて、校舎からこちらが丸見えです。まだ1時間も前なのに、先生方に見つかったらお気を遣わせてしまう! 逃げろ! 狭い道で苦労して車をターンさせて本道へ戻りました。
これからどうしよう? あったかい時期なら自然の中をのんびり散策するのもありですけれど、今日は氷点下です。うっかり外をウロウロしていたらカゼをひいてしまう……たしかお茶屋さんがあった……あそこで緑茶でも買って時間をつぶそう……しばらく車を走らせると、ポツンと藁ぶき屋根の立派なお茶屋さんがありました。店内に人はいないようです。平日の朝10時に来る客なんていないから、店員さんは奥へ引っ込んでいるのかしら? 誰もいないと思いつつ、引き戸を開けながら小声でつぶやきます。
ソウ:おじゃまします……。
おじ:いらっしゃい。
ソウ:(ヒイ! 人がいた!)
見るとお店の奥に立派な囲炉裏があって、白髪の上品なおじいさんが新聞を読んでいました。
おじ:今日は寒いねぇ! お茶でも一服お上がっていきなさい。
ソウ:ありがとうございます! 頂きます!
おじ:緑茶の茶葉が入った炭酸せんべいは好きかね? 食べるか?
ソウ:食べたことありません! いただきます!
おじいさんが信楽焼きの茶碗に、あったかいほうじ茶を淹れてくれます。そしてサクサク甘い炭酸せんべいを出してくれました。ほんのり茶葉の味がしておいしい!
ソウ:お茶も炭酸せんべいも美味しいです!
おじ:ほっほ♪ どこから来なさった? 大津か?
ソウ:ちがいます。〇〇です。
おじ:観光じゃないのか?
ソウ:住民です。〇〇小学校でお話をさせてもらうため来ました♪
おじ:おぉ! あそこの小学校は、生徒より先生が多いぞ。ww
ソウ:マジすか!? 少人数だと聞いていましたけれど、先生のほうが多いとは!! ご主人が小学校の頃は、どうでした?
おじ:今より人数は多かったなぁ。それでも1学年に2クラスだったが……。私が小学生だったのは、昭和〇〇頃だよ。あんたさんのお祖父さんと同じ年代じゃないかい?
ソウ:私は52歳です♪
おじ:…………それならお父さんと同じ年代だ。
……私をいくつだと思っていたんだろう……聞けば良かった!! そこからご主人の小学校時代の話が始まり、学生時代、社会人時代、定年後の今の暮らしまでダイジェストで聞かせてもらいました。昔はコピー機がなかったから書類を手書き(!)で書いていたそうです! だから1枚の書類を50枚作るのに、2~3日もかかったらしい! 私も児童書作家として学校へ呼ばれたと説明しました。
いろいろお話するうちに私を信用してくださったのか、定年されるまで働いていた機関を教えてくださいました。ほほぅ~! なかなか立派な所ですね! どうりで知的な方だと思った!(←また個人情報を聞いてしまっている)
あっという間に1時間がたったので、お暇(いとま)することにしました。
ソウ:そろそろ小学校へ行きます。
おじ:あんたさん、名刺は持ってないんかね?
ソウ:車にあるから、持ってきますね。
まさかお店でこんな出会いがあるなんて思っていなかったので、お財布しか持ってなかった。車からバッグを取り出し、お店でおじいさんに名刺をお渡します。
ソウ:作家のソウ マチです。
おじ:あんたさんの本が欲しかったら、ソウ マチという名前を書店で言うたらええのか?
ソウ:じゃあ、名刺に書名を書いておきます♪
私の名刺はシンプルで、ペンネームと電話番号とメアドしか書いていません。 余白に書名を書きます。するとおじいさんがご自分の名刺を取り出しました。その名刺には「代表取締役」の文字が! ひょえぇ~! お茶屋さんのご店主だと思っていたら、とんでもなかった! 会社の社長さんだったんだ!
おじ:この名刺は古いから、今は肩書が違うけど……。
そう言いながら代表の部分に横線を引いて「代表取締役」となさいました。……代表を退いて取締役になったということは、かなりデカイ会社ですね……役員さんが複数人いらっしゃるのですね……。どうして私はウッカリ偉い人と知り合いになるんだろう? 先日の社長さんは何度も連絡してきて(←エッセイに書いていませんが、今月も連絡がありました。ガン無視しています)怖かった……もう、そういうのはいいから。社長さんは前の夫でおなかいっぱいだから……そう思ってお名刺を眺めていたら、下の方に小さく「行政書士事務所」の文字が……!!
ソウ:げっ!? 書士さんですか!? 士業の方だったのですか!? 先生ですやん!
おじ:ほっほ♪ 先生なんて偉いもんじゃないで。ww
ソウ:でも士業なら先生ですやん!?
おじ:先生(教員)じゃないけんど以前、教育委員長はしておったぞ(^▽^)/
ソウ:げっ! 私今日、教育委員会に言われて小学校へ行くんですよ!
おじ:そんなことじゃろうと思った。ww
ソウ:ととと、とりあえず時間なので行ってきます!
おじ:気をつけて行っておいで♪♪
思いもかけない偶然にパニックです! なんで!? なんで教育委員会の偉いさんがお茶屋さんで店番してるの!? そして行政書士さんって、どういうこと!? おちケツ、違う、落ち着け! 落ち着くんだ! こういうミラクルは異常に多いから、そろそろ慣れろ! ムリだ! 意味がわからん! なんでこうなった!?
パニくりながらも車を走らせ、小学校へ到着しました。やっぱ校舎、ちっちゃ! 正面玄関のインターホンを押すと、すぐに教頭先生(女性・たぶん50代)が笑顔で迎えてくださいました。
教頭:遠い所をありがとうございます! 今朝、ソウさんにメールをしたのですが!
ソウ:えぇ!? すみません、見ていません!
教頭:それがややこしいコトになっていまして! とりあえず校長室へご案内致します!
挨拶もそこそこに校長室へ入ります。そこには華やかな雰囲気の女性が2人いらっしゃって、同時に革張りのソファから立ち上がりました。そして紹介された校長先生(女性・たぶん50代)のお顔を見て、私は固まりました。校長先生とは初対面です。でも聡明な顔立ち、切れ長の目、ツヤツヤとした黒髪……校長先生は、私が知っている人物と酷似していました。その人物とは……、
職場で私をいじめて退職へ追い込んだかつての女上司です。被害者は数多くいて、彼女は「クラッシャー」と呼ばれていました。「アイツに殺される!」そう言って休職に追い込まれた被害者もいますし、私のように退職した方も複数人います。その上司にそっくりの女性が目の前に……。
数か月前にも、その上司に似た女性を見ました。その時はPTSDでフラッシュバックして頭が真っ白になってしまって動けなくなりました。退職したのは何年も前なのに、いまだに心の傷は治っていなかったようです。それなのに目の前に、上司と酷似した女性が立っている……言葉を失った私に、横から教頭先生が話しかけます。
教頭:今朝ソウさんへメールを送ったのですけれど、セキュリティの関係で送信できなかったようです。ソウさんが生徒たちへ書いてくださったお手紙ですが……。
教頭先生が差し出した手紙のプリントアウトを見た私は察しました。
ソウ:手紙の内容がえげつなかったのですね?
教頭:申し上げにくいのですが……修正をお願いしたく……。
可愛い生徒が被害に遭わないため、少々不穏な内容のお手紙を書きました。後で皆さんへお渡し願いたいと思っていたのですけれど、先生方のご判断でエグすぎるとなったらしい……。チラリと校長先生を見ると、難しい顔です。その雰囲気は、かつての上司が不機嫌だった時と同じ……不機嫌な顔の上司の前に何十分も立たされて、理不尽な責め苦を受けた頃を思い出します……動けない……言葉が出ない……今日は失敗する……失敗確定……今まで上手くやれたのに、今日はムリだ……終わった……。
いいや! 私は以前の私と違う!!
私は強くなったんだ!!
たくさん失敗して、たくさん泣きながら進んできた!
私はもう弱くない!!
私は強いから大丈夫!!
私ならできる!!
教頭先生から書類を受け取ると、アンダーラインが引かれています。
ソウ:この部分が不適当と御判断されたのですね? 「バラバラ殺人」とか「お前を殺しに行く!」という部分ですね?
教頭:申し訳ありません……。
校長:…………。
ソウ:私も書きながらこの部分が気になっていたので、ご指摘は正しいと思います。できれば最大限に生徒さんを不安にさせたかったので、あえて不穏な表現にしています。
教頭:うちの子たちはあまり世間に慣れていないので、こういう表現はちょっと……。
ソウ:わかりました。生徒の皆さんに合わせて修正します。このお手紙は今日のお話と直接関係はないので、今日お渡しする必要はありません。後日、私が修正したものを先生方にご判断頂いて間に合います。
教頭:お忙しいのに申し訳ありません!
ソウ:もう一つ、ご相談があります。もし今日、時間が余ったら、生徒さんたちに練習をしてほしいです。セリフを読み上げて頂くのですけれど、こちらにも不穏な内容があれば変更します。
テキパキと原稿を取り出してテーブルへ広げます。
ソウ:今日の参加者は10人ですか?
教頭:10人ですが、1人は体調が思わしくなくてリモートです。
ソウ:ではリモートの子には、振らないほうがいいですか?
教頭:できれば負担を減らしたいので……。その子、小学3年生の頃からソウさんのファンなのです。
ソウ:え!?
教頭:3年前にソウさんのご本を読んで、それからずっとファンなのです。今回ソウさんが来てくださることになったので体調は思わしくないのですが、かなり頑張ってリモートで参加してくれています。
愛する読者さまがいらっしゃった! そして私の話を聞くため頑張ってくれている! ここで私が踏ん張らなくてどうする!? オレも頑張れ!! その子のためにオレ、頑張れ!!
頭をフル回転させて考えます。
ソウ:わかりました。予備のセリフもありますし、これとこれは内容が似ているので削除して、これで人数分になります。この内容でよろしいですか?
するとずっと黙っていた校長先生が緊張した様子で口を開きました。
校長:結構です。今日はわざわざお越し頂いてありがとうございます。
ドアが開いて優しそうな女性の先生がお茶を持って来てくださいました。
4人でお茶を飲みます。全員が50代でしょう。それにしても、この4人目の方誰だ??
校長:ご紹介します。〇〇小学校の〇〇校長です。
ソウ:まぁ、なんてこと! 合同授業に校長先生がわざわざ来てくださったのですか!?
女性登用が進んでいると聞いていたけれど、教育界はすごいなぁ~! 前回の小学校も校長先生、教頭先生は女性だったし、今日も校長先生お二人、教頭先生ともに女性か!! そして今、私は校長先生と教頭先生に囲まれてお茶を飲んでいる……(白目)……いつから私はそんなに偉くなったんだ?(←別に偉くない)
まだ時間に余裕があったので、天気や学校のことなど無難な話をしていました。けれども同じ年代の気安さか、少しずつ打ち解けてきた。打ち解けてみたら校長先生は、かつての上司と似た部分はあるものの、当たり前ですがまったくの別人でした。4人で話をしていると、懐かしい気持ちを思い出した……この気持ち……ずっと昔に……そうだ! 高校の女子クラスだった時の感じだ! 男子のいない女子クラスで、のびのびと過ごしていた頃にそっくり!! あけすけな話をして、ゲラゲラ笑ってたっけ! 懐かしい!!
話が進むにつれて、個人的な話も出てきました。聞けば4人とも滋賀県とは縁もゆかりもないらしい。
ソウ:私は福岡県出身です。
校長:私は〇〇、教頭先生は〇〇、〇〇校長先生は〇〇です。
ソウ:ぜんぜん滋賀県と関係ないですね……。
校長:そしてバラバラですね(;^ω^)
ソウ:そんな私たち4人が……。
校長:滋賀県の小さな小学校で……。
教頭:一緒に集まって……。
〇〇校長:私たちが出会う確率なんて……。
ソウ:ゼロですね……今、ミラクルが起きていますね……。
(全員でうなずく)
見えない糸に引かれるように集まってお茶を飲んでいる4人ですけれど、絶対に出会うコトはなかったはず……それなのに実際に同じ時間を共有している……これって、なんなんだろう??
そして肝心の授業の話は1ミリも出ないまま、今日のお話は終わります! いつもすみません! 続きはまた明日!!
どなたさまにも楽しいミラクルが起きますように☆☆☆
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