見出し画像

いのちの星屑

「あっ、”あおぞら”がきた!」 「おい、”あおぞら”、空、見てねえじゃねえか」ってよくからかわれることもあった。そういう日には、ママチャリを飛ばし、施設近くにある高台の公園を駆け上り、好きなだけ空を見ることにしていた。
 高い山々や太平洋も一気に飛び越え、どこまでもどこまでも自由に飛んでいける渡り鳥に憧れた。鳥になりたいって。思いながら空に向かって手を合わせたこともあったっけ。あらん限りの力でブーンブーン羽を震わせながら、大空に舞い上がっていく渡り鳥。
 市街地から電車で三十分ほど行くと車窓の風景がのどかな田園と雑木林に一変する。小高い丘の上に建てられたキリスト教系の児童養護施設に僕は引き取られることとなった。施設からママチャリで十分も飛ばせば、白い灯台のある岬から遥か水平線を眺めることができた。一気に石段を駆け降ると入り江の砂浜によくヘッドスライディングなんかしたり、砂浜の中から桃色のタカラ貝をよく拾ったりもしたものだ。
つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?