通信は速くならない



ある日私はこの星の反対側に住んでいる友達とVR上で話をしていた。

「最近親にあってなくて、久しぶりに声聞きたいんだけどなかなか難しくて」

「ええ~、親VRとか嫌いなの?」

「いや、親今地球にいるんだよね」

「ああ、なるほど。そりゃ無理ね。」

秒速およそ30万km、それが通信速度の物理的限界。およそ2年に一度の最接近時でさえここ火星から地球までは片道3分以上の遅延が発生するわけで到底リアルタイムの通信なんて不可能だ。かつて人類には距離の制約が無い時代があった、その頃は時間の差なんてものは太陽の位置の差でしかなく、同じ時間を共有できていた。

とある日突然どこからともなく、こんなアナウンスが流れた。

「今は滅びた人類発祥の地、太陽系を仮想世界で再現する。その目標のもとこのプロジェクトはスタートしました。この度残念ながらシステムの老朽化のためサービス続行は困難との決定により、プレイヤーの皆様にお伝え下通り、本サービスはあと10分で終了の運びとなりました。プレイヤーの皆様に置かれましては長らくのご愛顧ありがとうございました」

そんな話は聞いていない。私達はプレイヤーではないのだから。急いで母に連絡のメッセージを送り、そこではたと気づいた。

このメッセージが地球に届くまで今なら15分かかる。もし本当に世界が10分後に終わるならメッセージは届かないはずだ。しかし時間は相対的なもの、火星における現在と地球における現在を私達を計算するプログラムはどのように設定しているのだろうか。

結局このメッセージが母に届いたかどうか最後の瞬間までわからなかった。




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