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カウンターの隣席 #13

今や貸店舗も超急ぎ足

 前回の「宿題」「自立」「得意技」を書いて以来、僕は本当に空き店舗を探しだしているんですけども、今は本当にあっという間に契約が決まってしまってびっくりします。

 この間、近所にほどよい物件がたまたまあって、ちょっと考えるので少し返事を待ってください、と不動産屋にいうと「もちろんです。ぜひご検討ください」となって、あれこれ試算をしている間に「あの物件は契約が決まりました」と連絡がありました。

 見てからわずか2日ですよ。不動産屋の担当者は見たところ30代前半。彼もまたびっくりしていました。この情報が公開されたのは3日前のことで、この不動産くんが最初の公開者だそうです。

「いやぁ本当に年々、こういう重飲食可、居抜きの小型店舗はすぐに決まることが増えてます。ここの家主さんは弊社と懇意な間柄なんですけど、知らない間に他の不動産屋なんかから申し込んで来るんでしょうね。今や物件によっては情報が公開されることなく、次のオーナーが決まってから後付けで不動産業者が加わるということもしばしば。そうなるともうどうしようもないです」

 僕は昔、鉄砲玉とか行動バ〇と言われるほど、思考がカメな体質でしたが、そんな自分ももはや旧アナログ民族なのかと落胆してしまいました。そりゃ昔と今ではスピード感が落ちているというのもあるかもしれないし、さすがの僕も様々な経験をしてきたので、ちょっとは試算やメニューの再考くらいはするわけで。そういうと不動産くんはこう言いました。

「そりゃそうですよ、ごもっともです。それはご商売の基本中の基本。ただ、世の中には情報が公開された瞬間に内覧、即申し込み、なんて人が増えているのも事実です。中には物件も見ないで申し込む人もいます。特にワンオペ向きの小型、カウンターが残る居抜き、というのが最も競争率が高くて取り合いになりつつあります」

 おいおい、それなら僕は飲食じゃなく不動産屋になりたい。

「で、その殆どは都心からの流出組。独立よりも移転縮小というのが多いみたいで。さらに脱サラ系もどんどん増えてます。中でも特に目立つのがスパイスカレー屋ですね」

 え、まだ増えてる? これはもはや一時期のそば屋ラーメン屋の数を超えているんじゃないの。そばやラーメンと違い、いわゆるスパイスカレーは誰でもできる感じだからますます増えていくのかもしれないね。

「ええ、そして閉業していくのもカレー屋さんが多いです。特に昔ながらのカレーというんでしょうか。ワンコインでやっても厳しいみたいで。スパイスカレー屋さんは1000円とか1500円とかする世界。同じカレーでも客単価が全然違いますね」

 そうか、僕にはスパイスカレーがいったい何かよくわかってないけど、単純にインドカレーを出せばお客さんがいっぱい来てくれるかな、と思っていました。でも、それじゃカレー同士でぶつかってしまうね。ちょっと方向性を修正しなきゃならないかも。

「今はテイクアウトの需要が高まっている気がします」

 おお、だったらカレー専門のテイクアウト屋ですかね。

「いいですね。でもこの先にカレーのチェーン系ドライブスルーがあります」

 むむ、ならば出前ありきの町中華とか!?天津飯に骨付き唐揚げ、薄っすら鶏がらスープの懐かしラーメン。

「うわっうまそう。大衆中華は今あらためて注目されてるみたいだし、いいかもですね。あ、しかし、すぐそこに王将がありました」

 うう、王将なら自分も食べに行きたい。そうか、だったらスタンド喫茶はどうかな。立ち飲み、立ち食いのカフェ。僕はこのジャンルでも働いてきましたから自信がありますヨ。トマトとチーズをのせて焼いたクロックムッシュなんかもだしてね。

「いいですね、ただしかし、北摂のハコは基本的に広さ15坪前後が主流。狭小店舗そのものが希少でして。あ、そうだ、料理教室なんてどうですか。いま流行ってますよね。公のそれじゃなく、もっと個人的な関係でのお習い事。よく聞かれるんですよ、この辺で料理教室出来る場所はないかって。弊社でもそういう場所を作ろうかって話が出てるくらいで」

 なるほど、確かにそう。僕でさえも2023年から主宰しているくらいだから。呼ばれて行く分には今も昔もちょくちょくやってますよ。

「そうですか、すでにやっておられるんですね。だったらやっぱりカレー屋さんじゃないですか。人によって味も違うだろうし、カワムラさんには人が集まってきそうな気配がむんむんしてるから」

 そう言われると嬉しいね。ふむ、どこかにカレー屋のない町はないかな。というか、貸店舗そのものがないだろうか。

「物件はご縁ですから。また何かありましたら連絡差し上げます。カワムラさんも気になる物件があったらご連絡ください」と、こうして定番の挨拶で終わってしまいました。

 今は内食(自炊)・中食(スーパーなどの総菜や弁当など)の時代と言われながらも、店をやりたい者はどんどんと増えて、さらにそのスピードが激化しているというへんてこな時代。

 この何十年もの間、もっと考えろ、慎重になれ、計算と計画というものを練れ!などと散々あちこちから言われてきましたが、いやいや、もしかしたら今こそ直感の時代なんじゃないですか。即決でらくちんだもん。というわけで、今から空き店舗探しに行ってきま~す。ふふふ。今日は今年一番の寒さらしいです。


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カワムラケンジ
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