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タイ語のテキストにおじさん構文が多い件について(第2回)

『タイ語中級読本』という教科書に出てくる文章には、おじさん構文が多い


中級読本はとても良い本で、

まず、単語や熟語などが厳選されていて、
タイ生活に必要な語彙が身につく

また、長文読解の内容がタイの伝統社会について、くわしく書かれているので、

読んでいるうちにタイに関する知識が自然と身につく、、などなど、

とてもたくさんのメリットがある


それで、うちのタイ語みちゅうクラスでも、
この『中級読本』を教材として使っている


中級読本は、こんなにも良い教科書なのだけど、
たった1つ、僕が気になっていることがある

それは、『おじさん構文』が多いこと


 ↑
おじさん構文については、
先日も記事を書いたので、
詳しくはこちらの記事も見てほしい


今回は、「では具体的にどういうおじさん構文が載っているのか」ということについて、

実際の画像も交えながら紹介していきたいと思う


本当に、たくさんのおじさん構文が登場するので、
おそらくあなたも、びっくりすると思う


まず1つめ

「本当は、僕は男の子よりも女の子が欲しいんです」

これはたぶん、シチュエーションとしては、

「自分の妻が、男児を妊娠(出産)した」という文脈だろう

それで、自分の友人や同僚とかに向かって、「僕は女の子の方が良かったのに」って言ってるんだろうけど、

こんなこと言ったら息子が可哀想だから、普通は言わない


言ったとしても独り言のレベルで、
わざわざ声に出して他人に言うことではない


赤ちゃんは、胎児のころから、
周囲の話を全部聞いていると言われている

妊娠中に夫婦喧嘩してはいけないのも、それが’理由だ

だから、妊娠中は、ネガティブな話はなるべくしないほうがいいし、

ましてや、赤ちゃんが気を悪くするようなことは、言ってはいけないのだ


おなかの中に男の子がいるのに、
「女の子が良かった」なんていうのは、

赤ちゃんが傷つくから、
本当にやめたほうがいい


では2つめ

「彼女は美貌を成功への階段として利用した」

要は、

美人だったおかげで成功できた、
って言いたいんだろうけど、

これも、もって回ったような言い方で、
やっぱり、すごくおじさんっぽい


それに、成功の陰には当然、
運とか努力とかもあるんだから、

美貌を一番に持ってくるあたりが、
おじさん構文、という感じがするのだ


3つめ、

「年寄りが娘ふうの服装をしても、見ばえがしませんよ」

僕の中では、これが一番最低の文章である

女性にとって、年齢というものは、とてもセンシティブなものだから、

そもそも普段から、年齢の話題は慎むのがマナーだ

それはタイも同じで、タイでは相手の年齢をからかってもいい、なんてことは絶対にない


それに、タイの女性は、何歳になっても原色の服を着たり、ショートパンツやノースリーブを着ることも多いから、

「若い服装だと見ばえがしない」なんてことを、
タイの人も言わないんじゃないかな、と思う


ということはつまり、この文が発話されるシチュエーションは、

日本のおじさんが、タイの女性をからかうための文章、ということになる

なんともイヤな場面である


繰り返しになるが、タイは何歳になっても、若い服装をして構わない

あなたもせっかくタイへ行くなら、
自分が着たい服を着るべきなのだ


4つめ

「美人のなかには、写真うつりの悪い人もいる」

これも、100% おじさん構文。

おじさん構文の最大の特徴は、
年齢や外見をからかうことだ

これは最低のマナー違反で、本当に「誰得」というやつだ


この文章も、おそらく、美人さんが写っている写真を見て、

「この人、美人なのに写真うつり悪いよねww」
って言ってるんだろうけど、

そんなの、わざわざ口に出して言うことか?

冗談だとしても、笑えない


5つめ

「生まれてこのかた、あなたほどきれいな人はまだ見たことがない」

要は、好きな女性を口説いている、というシチュエーションだから、
まぁ、普通と言えば普通だろう

「おじさん構文」といちいち断罪するほどでもないかもしれない


ただ、タイには昔から、「女性を口説くためのタイ語」の需要が一定数あるのも事実で、

実際、そのためにタイ語を勉強しているおじさんも多かった


だから、こういう「口説くためのフレーズ」を見ると、

当時のおじさん全盛だったころが思い出されるのだ


6つめ

「独身だと思ってましたが、本当は結婚してました」

この文のシチュエーションとしては、おそらく、いつも一緒に夜遊びしている同僚がいて、

「家庭とか全然気にしてない様子だったから、独身だと思ってたけど、じつは結婚してたんだな」

というようなセリフだろう


まぁ、よくあると言えばよくある話だから、
特におじさん構文というほどでもないかもしれないが、

他人の結婚のことは放っておいてほしい、という思いもある

未婚か、既婚か
をいちいち探ろうとするのは、

やっぱり昭和的と言うか、
おじさん構文に含めていいと思う


7つめ、

「スガンヤーさんは、もうすぐ姓が変わります、もうすぐ夫と別れるんです」

これは、明らかに「ジョーク」として言っている

初めっから、「離婚するらしいですね」と言えば一言で済むのに、

「名字変わるらしいよ」
「えっ、結婚?」
「いや、離婚www」

みたいな


起承転結の形にして、
わざわざオチをつける、

みたいな言い方が、つくづくおじさんっぽいなーと思う

でも、ジョークとしては、全く笑えない


しかも、スガンヤーさん本人のいる前で言うんじゃなく、
(それも最低だけど)

スガンヤーさんのいないところで、
陰口として言う、ってのが本当に最低だ

なんというか、人の離婚を笑い話のネタにする、という感性には、やっぱりついていけない


・・・以上、今回は、7つの「おじさん構文」を紹介してきた


いかがだろうか

特に、女性の読者にとっては、
「たしかに、おじさん構文だ」
と、納得してもらえたんじゃないかと思う


他人の容姿、年齢、恋愛に口を出しがち


これらのおじさん構文を通読してみて思うのは、、

全体的に、他人の容姿や年齢、恋愛に口を挟みすぎる、ということ

そんなこと、放っておいてやれよ
と思うような内容の文が多い


もちろん、タイ人の話すタイ語にも、
そういう傾向が多いのも事実だろう

実際、タイの人は、他人の色恋沙汰に対してすごく関心が高く、

話題も、自然と恋愛の話になることは多い


でも、、、

それもやっぱり、平成の頃までじゃないかなという気もする


今の若い人、いわゆるZ世代と呼ばれている人たちは、日本もタイも同じで、他人のことにあんまり干渉しないから、

我々昭和世代から見ると、ものすごくクールというか、スマートに見える


だから、いずれZ世代が、中級読本を学ぶようになるころには、

「昔の日本のおじさんたちは、他人の色恋にこんなに興味を持っていたのか!?」

って思うんじゃないかな


だからこそ、こういった他人の離婚とか失恋とか年齢とかをあげつらうような例文には、やっぱり違和感があるし、

おそらく、この違和感は、
年々大きくなっていくと思う


僕も、普通にこの本を読んでるだけだったら、たぶん、おじさん構文のことにも気づかずにスルーしてたかもしれないが、

うちのクラスは比較的女子生徒が多いので、こういったおじさん構文が出てくるたびに、教室の空気がちょっと変な感じになるのが気になっていたのだ


かと言って、おじさん的であることを放棄して、中性的を追求しすぎると、

今度は、「これはペンです」みたいな、無機質でロボットのような文章になってしまうから、

文章の人間味を追求するのであれば、やはり文にもある程度のジェンダー要素はあって当然、という考え方もあり、このバランスはなかなか難しい


僕自身、昔からZ世代寄りというか、日本のおじさんたちのノリについていけないところがあって、

職場で浮いてしまうことが多く、若いころは本当に苦労した

だからこそ、僕は人一倍、おじさん構文にアレルギーを感じてしまうのかもしれない


共感疲労とは


ところで今回、
この記事を書くにあたり、

「自分には全然関係ないのに、他人が他人に言った悪口で自分が傷つく現象って、何か名前あるのかな??」

と気になって検索してみたら、こういうのは、
共感疲労」または「共感性疲労」と言うらしい


他人が傷つくのを想像して、自分も傷つく、

つまり、共感をして、傷ついたり疲れたりするから、「共感疲労」というわけ


僕は昔から、こういう繊細というか、過敏なところがあった

人をからかったり傷つけたりしてゲラゲラ笑うおじさんたちとは、対極にある感性だったから、

そのせいで、おじさん社会にはうまくなじめなかった


それで、自分で独立してやっていこうと思い、日本のおじさん社会を飛び出して、今に至っているのだが、

タイ語を教えて暮らしていく中で、
意外なところでおじさん構文に出会ってしまい、

またしても、共感疲労を食らっている、というわけである



最後までお読みいただき、ありがとうございました!


最後に、中級読本は、
本当に良い教科書です

ディスるつもりはさらさらなく、僕はむしろ絶賛してるんですが、

ただ、
読んで傷つく例文がちょっと多いかな、と言いたいだけなのです、あしからず
🙇



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