タイ語は看護婦?看護師?
今回のテーマは、
「看護婦と看護師」。
タイ語ではどのように言うか、について。
最近、日本では、「看護婦」という言葉をめっきり聞かなくなった。
もっぱら「看護師」の名称で統一されているようだ。
タイ語では、นางพยาบาล
「ナーン・パヤバーン」という。
นางพยาบาลは、直訳すると「看護する女性」なので、「看護婦さん」。
つまり、
นางพยาบาล(看護婦)という言葉には、初めから女性性のジェンダーが含まれている、ということになる。
なので、僕はタイの文脈で、นางพยาบาลを日本語に訳すときは、
「看護師」と言わずに、あえて「看護婦さん」という言葉を使うようにしている。
そのほうが、原語のนางพยาบาลのニュアンスに近いと思うからだ。
そもそも、日本人が「看護婦」という名称を使わなくなったのは、
「ジェンダーレス」の風潮に配慮しているからだろう。
「職業名は、男女で同じにしましょうね」
という配慮。
しかし、タイでは、
そういう配慮は特に必要ない。
むしろ、
日本の言い方に合わせて、นางพยาบาลを「看護師」と訳してしまうと、
そっちのほうが違和感があり、
タイでは、何だかしっくりこない。
นาง พยาบาล(看護婦)という言葉には、初めからนาง(婦)が入ってるんだから、
そこは原語に忠実に訳して、「看護婦さん」でいいんじゃないの?というのが僕の考え。
なんというか、
タイにおいては、
นางพยาบาลという言葉は、
ただの職業名だけでなく、
「かわいさ」とか「美しさ」などのニュアンスも含まれている気がするからだ。
「女性であることを前面に出している」
と言ってもいいかもしれない。
女性ならではの、「美しい職業」というニュアンス。
それに、そもそもタイには
男性看護師自体が少ない。
僕自身、タイの人生で、男性看護師に出会ったのは数えるほどしかない。
体感としては、たぶん、
95%以上が女性じゃないかな。
そんな状況で、タイの「看護婦さん」を、わざわざ「看護師さん」と言い換える必要性があるんだろうか?
また、タイは伝統的に、
「美人○○」
という称号を好む傾向がある。
どんな職業にも「美人○○」の称号がある、という印象だ。
・・・といった具合。
かの有名なタクシン首相の妹だって、デビュー時は「美人政治家」という肩書だった。
そして、「美人市長」「美人校長」「美人シェフ」「美人政治家」などの用語が、普通に新聞の見出しになったりする。
マスコミも持ち上げるし、市民も喜ぶ。
当然本人だって、悪い気はしない。
タイには昔から、そんな風潮がある。
今回の看護婦もしかりで、
ひとたび病院に「美人看護婦」が現れたら、
SNSで注目され、すぐに評判になる。
注目された方もまんざらでもなく、「美人看護婦」としてインスタ投稿を頑張って、さらに有名になったりする。
そこには、「ジェンダー差別」なんて概念はさらさらない。
むしろ、看護婦が「女性」であることが、
1つのアドバンテージになっているのだ。
また、看護婦さんの制服にも、病院ごとの特色やこだわりがある。
日本ではどんどん簡素化されていくナースキャップだが、
タイのはけっこうちゃんと作られている。
タイでは、制服がかわいい病院には、求人も集まりやすいし、
それを着ている職員も、制服に誇りを持っていたりする。
これがつまり、「女性ならではの職業」ということ。
タイでは、男女の職業名をわざわざ分けているのだから、
タイ語の นางพยาบาล を「看護師」と訳すのは、どうもしっくりこない。
やっぱり、「看護婦さん」と呼んだほうが、理にかなっている気がするのだ。
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