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"ことば"で何がわかる?

良く聞く会話。
「言葉で伝えないと何も伝わらない」
「とことん話せばわかる」

仕事をしていても、いつまでも "ことば" で互いの認識を確認し合う場面はよくある。

しかし、私はこう思う。

「そもそも、相手の脳内を見ることができない以上、相手を理解することは不可能である」

たとえ "ことば" で表現したとしても、
その "ことば" から得られるイメージは、その人の人生によって形成されるものであり、人それぞれだからだ。

"ことば" で伝えられることは、辞書に載っている意味だけである。
しかしその意味も "ことば" で表現されている以上、
人によって捉え方は異なってしまう。

社会ではそんな不確実なツールを使って、
会話をすることを求められているのである。

だからこそ "ことば" でわかる ことがある。
「違う」ということだ。

「違うそうじゃない」
「なんとなく伝わっていない気がする」
「なんか薄っぺらくなったな、本当はもっと…..」

相手と自分は違う人間であるということが、"ことば" を使うと見えてくる。

だから、私は "ことば" を使う。


美術や音楽などの表現を心得ている人は、
"ことば" 以外の選択肢を持っている。

だからこそ、
"ことば" に頼りたくないと思っている人も多いのではないだろうか?

そんな人と一緒にいると、私は心地良い。
それは「言葉ではどうせわからない….」という前提が揃っているからかもしれない。

特徴があるとするならば、
互いに相手の "ことば" には興味がなく、
"言葉選び" に興味を持ってやり取りをしている
という点ではないだろうか。

"言葉選び" にその人の人生が反映されるからである。


私は仕事とは関係なしに絵を描いている。
俗に言う、絵描きである。

"ことば" で伝わらないことはわかっていても、
一人で抱えるのは しんどい ものである。

そういった点で、救われることもあると感じる。

救われるのはなぜだろう。。。
人間という生き物は他者との意思疎通が一定のストレスを軽減するらしい。
"ことば" では伝わらないことが多いせいで、
返ってストレスになっているわけで……つまり伝えられるから?
しかし絵画で何かが伝わるかというと、
人それぞれの受け取り方になるし、正解はない。
また、芸術評論に関する授業を大学で受けたことがあるので、
芸術の伝わり方に関してもそれなりの解像度がある。

そう、正確さで言えば "ことば" 以下だろう。
…..だからだ。

"ことば" だと、
人間はわかった気になってしまう(どうですか?)
それが一番のストレスなのかもしれない。

芸術は、まず「わからない」という感想を持つ人がほとんどだ。
そして芸術鑑賞の教養がある人間も、
「わからない」こと理解しているからこそ楽しめるのである。
だからこそ「芸術は人を饒舌にする」と言われるのである。

「わからない」ということが心地良いのだ。
「わからない」ということを「わかってほしい」のだ。
「ほら、わからないだろう?」と、私は言いたいんだ!


そもそも人間とは、
わからないことに対してストレスを感じる生き物である。
自然界において「わからない」=「危険かもしれない」
故に、警戒することを本能レベルで覚えているはずだ。
だからこそ、「わかろう」としてしまう

「わからない」を楽しむことは、一つの能力なのかもしれない。

そんな中「ネガティブケイパビリティ」という言葉に仕事中に出会った。
エンジニアから共有を受けた言葉だった。

ネガティブ・ケイパビリティ英語: Negative capability)は詩人ジョン・キーツが不確実なものや未解決のものを受容する能力を記述した言葉。日本語訳は定まっておらず、「消極的能力」「消極的受容力」「否定的能力」など数多くの訳語が存在する

Wikipedia-ネガティブケイパビリティ

私は普段デザインの仕事をしており、
エンジニアと会話をすることも多い。
そんな中、確かにエンジニアはネガティブ・ケイパビリティの能力が低い傾向があるかもしれないと感じた。
対して、デザイナーはネガティブ・ケイパビリティの能力が高い傾向があるのではないだろうか。

だからこそデザイナーはコミュニケーションにおいて、
言葉の限界を見極めビジュアルを出す
という役割が求められている。

チームビルドにおいても、
「理屈ではわかっているが釈然としないメンバー」にいち早く気づき、
言葉で猛進するチームのストッパーになることも求められている。


話すことが苦手…と感じる表現者は多い(少なくとも私の周りには)
苦手と感じるのは、「わからない」「伝わらない」ことを知っているからかもしれない。

だからこそ、自信を持ってその能力を発揮してほしい。
そんな人が芸術の分野だけではなく、社会全体に増えたら
もっとストレスなく、働ける未来がやってくるかもしれない。

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