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音楽家がドビュッシーから学ぶ事5選!

はじめに

音楽史というのは「史実を正確に学ぶ」ことが目的ではありません。史実とされていることを受けて自分の音楽人生にどのように反映させるかが大切です。私達藝大生は複数の歴史書を暗記していますが、有名歴史書同士でそう反する内容もあるものです。ここを議論する人達は歴史好きであり、私達音楽家が議論する相手ではありません

音楽家の皆さん、歴史をご自身の音楽人生に取り入れてください。

以下は拙著からの抜粋です。この記事が気に入って頂けましたら是非本書を手に取ってお読み頂けますと嬉しいです。最下段にリンクをご用意します

ドビュッシーから学ぶことの一つ目は「脱ワーグナー」です。

ドビュッシーの時代は皆がワーグナー風の音楽を書いていました。しかし、ロシアのムソルグスキーの音楽に触れた後、全音音階(ホール・トーン・スケール)、空虚和音(パワー・コード)、教会旋法(モード)などの全く違う音楽語法を使いました。これがその後の音楽家に多大なる影響を与えました。音楽業界はドビュッシーのおかげでロマン主義から抜け出せたのです。私達も時代の転換のきっかけになる音楽家を目指したいものです。

ドビュッシーから学ぶことの二つ目は「ぼわっとした感じ」です。

人々はドビュッシーの音楽を「印象派」と呼んだりしますが、モネやルノワールの絵にたとえているのでしょう。確かに先述の音楽語法を使うことで調性や和音や音階が特定されない雰囲気になるので印象派の絵にたとえるのが正しいのかもしれません。しかし、「印象派」と言うとなんだか派閥を作ったようなイメージになります。そうではなく、《海》がなんとなく水の動きを表現しているように聞こえたり、その海を見ている気分を表現しているように感じたり、交響組曲《春》がボッティチェリの絵を想起させたりという「ぼわっとした感じ」でイメージさせるところが、過去のロマン派の「はい! これを表現します!」という感じとは異なるのです。あたかも「虚」を作る日本美のようなセンスを私達日本人は特に学びたいものです。

ドビュッシーから学ぶことの三つ目は「文学的表現」です。

まず《牧神の午後への前奏曲》を聴いてください。詩人マラルメの『半獣神の午後』という詩の音楽版です。詩に音楽を付けるのではなく、楽器だけで表現しています。雑な説明をすると、下半身が獣の神様が昼寝から起きて、女神と遊んだ夢を思い出しながらダラダラしているイメージです。楽器のメリットとデメリットを活用した作曲方法は、作曲家はもちろん、あらゆる楽器奏者、現代の編曲家にいたるまで聖書のように崇めるべき曲ではないでしょうか。

ドビュッシーから学ぶことの四つ目は「心の表現」です。

娘さんをイメージした《子供の領分》というピアノ曲集があります。子供用に書かれている曲ではなくて、大人が子供に戻った気分を味わえるように作られています。特に《グラドゥス・ア
ド・パルナッスム博士》は、子供が面倒くさいクレメンティの《グラドゥス・アド・パルナッスム》を練習している雰囲気をコントのように表現しています。個人的には大人が「そうそう!」と言いたくなる雰囲気にプラスして、美化した子供時代を回想する大人、子供を愛情を持って見守る大人までが表現されているように聴き取れます。私達も音楽を聴いた人々が、他の人々の心の中を想像できるような音楽を作りたいものです。

ドビュッシーから学ぶことの五つ目は「ディズニー風」です。

ドビュッシーが生きた時代に映画はありましたがサイレント映画でした。サウンド・トラックが使われたのはドビュッシー没後10年以降の話です。そして、ステレオのサウンド・トラックができたのは、さらに10年後ディズニーの『ファンタジア』が公開された時です。この『ファンタジア』では8曲のクラシック曲が含まれますが、ドビュッシーが参考にしたムソルグススキーや、ドビュッシーを受け継いだデュカスは入っているのに、ドビュッシーは入っていないのです。個人的に長年不思議でしょうがなかったのですが、「あまりにそのまんま過ぎるから」という個人的な結論で片付けました。《遊戯》という曲を聴いてください。存在しないのに「あ、このディ
ズニー映画観たことある!」と誰もが言ってしまうのではないでしょうか。恋の気分の表現、昔の音楽語法とは異なる展開法など、今のディズニー的な雰囲気に欠かせない音楽的要素が詰まっています。大いに参考にしたいものです。

まとめ

この記事が皆さんの音楽人生を変えるきっかけになれば嬉しいです。

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津本幸司
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