第一章 音響から読み解く『ライチ・光クラブ』1-1.はじめに 飴屋法水の演劇作品、とくに東京グランギニョル時代の舞台を、「音響」に焦点をあてて検証してみる必要があるのではないか。いつの頃からか、そう思うようになった。 そのような考えを抱くに至った理由は二つある。一つは東京グランギニョルやその後の飴屋の活動にまつわる資料を収集する過程で、飴屋自身の発言や当時の舞台を観劇した人々の証言の中に、しばしば「音」にまつわる言及が見られるのに気付いたこと。そしてもう一つは飴屋が八十