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内製開発チームエピソードゼロ ふろ恋で実現したかった「頑張る人に、いいエネルギーを。」

こんにちは。2回目の登場の及川です。
今回は、箸休め的に、私が過去に携わった、とあるアプリについてご紹介したいと思います。といいますのも、東京ガスという会社の懐の深さを示す一つの事例だなと思うからです。個人的に今思い返しても、この企画を通してくれた会社や当時の上司・部下・同僚に感謝してもしきれない思い出です。
すでに終了しているアプリなので、ご存知ない方もいらっしゃると思いますが、東京ガスとして、「ふろ恋」というアプリを2020年3月にリリースしました。(残念ながら、2022年3月に終了。)
恋愛ゲームの要素と、声優さん・絵師さんが錚々たるメンバーをそろえたこと、そしてまた、それを東京ガスがサービスインしたということで、一部の方には話題になったものです。

声優・絵師の皆さま その節は大変お世話になりました!ありがとうございました!

ちなみに、現在は、myTOKYOGASの中にひっそりと一部コンテンツを配置しております。https://members.tokyo-gas.co.jp/furokoi/top.html

これがどんなアプリなのか、一言で言い表すのが難しいのですが、恋愛ゲームの要素を取り入れた、入浴支援アプリです。
(ご興味のある方は、以下もご参考にしてください。私も一部出演しております。)

このアプリがどういう経緯でリリースするに至ったかについて、ご紹介いたします。

お客さまに選ばれ続ける存在になりたい

エネルギー会社として非常に大きな変換点となったのが、2016年の電力の小売全面自由化、2017年の都市ガスの小売全面自由化でした。それまでのエネルギー会社といえば、特にBtoCのお客さまにとって、空気のような存在であり、会社を選ぶという意識はなかったと思います。私は、エネルギー会社としての転換期にこの自由化に向けて対応する部署に2015年1月に異動になったのですが、この業務に従事するにつれて、価格が安いといった機能面の充足だけでなく、お客さまに東京ガスのファンになってもらい、選ばれ続ける存在になりたい、と思うようになりました。

「頑張る人に、いいエネルギーを。」

東京ガスには、「頑張る人に、いいエネルギーを。」というキーメッセージがあります。個人的に、自分の所属する会社ながら、すごく気に入っています。このメッセージを訴求したTVやラジオのCMなどを目にするにつけ、「なかなかいいなあ」と思うものの、これを体現する具体的な商品やサービスが少ないように感じ、これはもったいない、と感じていました。
エネルギー会社として、ガスや電気といった文字通りのエネルギーを提供するだけではなく、生きる活力としてのエネルギーも提供することができたら、こんなにすばらしいことはないのではないかと思うようになりました。

「つらいとき 日本人には 風呂がある」

一方、日本人としてもったいない、と思う事実がありました。それは、浴槽にお湯をはらずに、シャワーだけで済ます人が増えている、という事実です。日本の住宅は、浴槽の普及率が高いのにもかかわらず、使われていないというのは悲しく切ないことだと思いました。
こんな川柳があります。
「つらいとき 日本人には 風呂がある」
私の尊敬するかつての上司が、キッチンバス工業会主催の第8回「台所・お風呂の川柳」で神田松鯉賞を頂いた作品です。これこそ、おふろの価値を見事に表現しているように感じます。
一日疲れていても、お風呂につかることによって、気持ちが前向きに切り替わった体験ってありませんか?「今日も一日頑張ったなあ、明日も頑張ろう」と思えるきっかけになる可能性のある場所、それがお風呂だと思っています。スターバックスの価値の本質は「The Third Place」と言われますが、お風呂も、家の中にありながら、そういう価値を体現しうる素晴らしい場所であり、もっと入浴体験を向上させ、明日への活力を提供できる何かを作りたい!と思い至りました。

加えて、先述の通り、私は自由化を対応する部署におりました。電力の小売全面自由化が2016年4月と決まっている中で、私は電気契約の付帯サービスを創る担当で、そのサービスを期限までに完成させなければならないというプレッシャーと激務で忙しい日々を過ごしていました。何とか、期限内にサービスインすることができたですが、それは、私以上に頑張っている先輩の姿があったからです。その姿に、助けられたり、勇気づけられ、なんとかやってこれました。私は、そのような恵まれた環境に感謝するとともに、必ずしもそのような同志に囲まれず、日々悶々としている人も多いのではないかと思うようになりました。つまり、人が抱える不満の大半は、「自分が努力しているほどに周りから大切にされていない」というところにあるのではないか、と仮説を持つようになりました。もっと一日の頑張りを大事にしてあげるということと、先述のお風呂の価値を結びつけることで、お湯という文字通りのエネルギーとあわせて、生きる活力としてのエネルギーを提供したい!そんなサービスを創りたい!と思うようになりました。また、そのようなサービスをリリースすることで、先輩に恩返ししたい、と実現への思いを強くしました。
 
そんな構想をいろいろな方にお話ししていたところ、セガの伊藤さん(現セガ エックスディー社COO)に出会いました。私の思いに共感していただくともに、具体化を議論するうちに盛り上がり、お手伝いしていただくことになりました。グループメンバーと伊藤さん他セガ社のメンバーとともに、コンセプトワーク・プロトタイプの作成、ユーザーインタビュー等を経て、会社に企画を提案し、2019年3月に予算が承認されることになりました。

異動、出戻り、そしてアプリ終了

ところが、なんと私が2019年4月に別の部署に異動になってしまいました。制作は、残されたメンバーに託すことになりました。私は遠くから見守ることしかできませんでしたが、残ったメンバーが頑張ってくれて、豪華声優・絵師の皆さまにご協力いただくことができ、何とか2020年3月にリリースできました!
しかし、タイミングが悪いことに、リリース前後からコロナ禍となってしまいます。スタートダッシュするために予定していたリアルイベントが開催できなくなり、また、巣ごもり需要をうまく取り込めず、当初計画していた目標には遠く及びませんでした。関わったメンバーで挽回に向けて奔走してもらったのですが、厳しい状況は変わりませんでした。
そしてなんと2021年4月に、私が元の部署に出戻りの異動となります。再び関わらせていただくという幸運に恵まれたものの、その後もいろいろと挽回策を講じましたが、なかなか成長する絵が描けずに、2022年3月、自ら幕を閉じることになりました。
いろいろと反省することはあるのですが、リーン・スタートアップの手法を取り入れなかったことが大きな失敗だったのではないかと考えています。本アプリは、スタートダッシュする必要があった面は否めないのですが、今にして思えば、小さく初めて、ユーザーの声をもとにサービスを磨きこむことに予算と時間を使うべきであったと考えています。この教訓が、内製開発チームを立ち上げる一つの大きな動機となりました。

ユーザーからの感謝のお手紙

ただ、収穫がなかったわけではありません。アプリ終了宣言をしたのち、複数のファンの方からお手紙をいただきました。まさに「頑張る人に、いいエネルギーを。」を実現できていたことを実感させていただいたお手紙でした。その一部を最後にご紹介させていただきます。

※ご本人様の掲載許可をいただいております。
お手紙を頂戴するだけでなく掲載許可もいただき、改めてありがとうございます。

「頑張る人に、いいエネルギーを。」を実現する目論見はまだ諦めていません。ふろ恋終了を無駄にしないためにも、いつかまたお客さまに喜んでいただけるサービスをリリースできるよう、日々精進したいと思っています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!