星々ワークショップ第3回読書会
星々ワークショップ第3回の読書会に参加した。
梨木香歩「海うそ」を読んで、気になった箇所と理由を発表する。
1.「龍目蓋――角小御崎」の章、冒頭の雨のシーン。葉っぱが揺らぐという物理的な描写から、ウネさんや自分が揺らぐという説明につながる。映像ではできなくて、文章ならでは。要素のつながりという観点では、最後の方で滝に打たれるシーンに対応している。また、不本意なことがあっても、わりと周囲の状況に逆らわずに従っている登場人物のキャラクターの比喩にもなっている。
2.「龍目蓋――角小御崎」の章、アコウの木。「世界が〇〇のようだ」のように、明示的な比喩になっている。私が物語を書くときに、「物語の語り部が観察している事象と、語り部を含む世界が同じ構造をしている」「入れ子になっている」というのを何度か試みて、失敗している。この箇所のように明示的に示唆するというのがアリなのだ、と思ったのと同時に、こんなにさり気なく書くのは、難しそうだとも。要素のつながりとしては、最後のリゾート開発に対応するのだと読み取りました。この箇所を読んだときに、そういう結末を予感しました。
3.「五十年の後」の章、ドライブで息子に頼むシーン。主人公に嫌悪感を持ちました。主人公は遅島に対して何もしてないのに、報いとか言ってる。困ることもないはず。飲食店が閉店すると聞いて、それまで大して金を落としてないのに残念だと言うような、中途半端な客っぽい。その嫌悪感があったからこそ、この後の展開で、主人公の人生全体における、自分ではどうしようもない喪失が背景にあることが明かされて、「あーなるほど」というシンパシーをもった。
他の人の発表で、まったく自分が見落としていたと感じた箇所もある。
・木簡をきちんと見ていくところに、記録として残すことに価値を見出している
・「奇跡」というのもテーマのひとつ
・「雨にゆれる」と「蜃気楼のゆらぎ」の対応
今回の学びを生かして、失うということをテーマにして文章を書くというのが、次の課題。結び目、要素の対応を入れる。はず。
結末が読み取れてるのか、が、かなり危うい。地図に書かれている「海うそ」が蜃気楼を指しているというのは、ストレートに明かされていると感じているんだけど、他にも解釈があるのか?
最後の最後は、長い回り道の末、最終目的地(つまり人生の終了)に正しく辿り着こうとしている、ってことでいいんだろうか?