『MOURNING into DANCING』 #10

"Thou hast turned for me my mourning into dancing" Psalm 30:11

「あなたは私のために、嘆きを踊りに変えてくださいました。」詩篇30:11

不慮の事故により、両足切断も免れないというほどの重症を負う。先の見えない日々、血の滲むようなリハビリ生活、しかしその中で受け取った多くの励ましと愛が障害を乗り越える力となっていく。福原タカヨシの手記。毎週金曜日更新。

第10話　「Runner」

2016年3月。

「無理せず、あきらめず」をモットーに、リハビリと筋力トレーニングに勤しむ日々が続いていた。短時間ならば車の運転も出来るようになったため、スポーツジムにも通い始めた。復活のステージから数ヶ月が経ってもなお、心は燃やされていた。再びプロのシンガーとしてステージに立ち、この喜びを証していきたい、と。

真新しい手帳には、四日市のジャズライヴハウスでのゴスペルライヴ、続いて東京、新中野にあるライヴハウスで「3.11忘れないコンサート」と題してツーマンライヴ、さらには東日本大震災から５年目をおぼえて、被災地である宮城県での支援コンサートが入っていた。移動だけでもかなりの負担だ。考えてみると、事故による怪我から一年程で、このスケジュールは少々無理をしていたなと思う。夜になると38度を超える熱が出るのも珍しくなかった。このとき既に、右足は蝕まれていたことを、後になって知るのであった。