脳もつくられる順番がある
人間の脳は生まれた後につくられます。そして大事なことは、脳にはつくられる順番があるということです。まず最初が「古い脳」、そして次に「新しい脳」という順番です。この順番は逆転することはありません。内側の古い脳から、外側の新しい脳へと、少しずつ進化をとげるように出来上がっていきます。
「古い脳」の機能:姿勢の維持、睡眠、食欲、情動、呼吸、性欲、自律神経などの本能的な働きをします。
「新しい脳」の機能:知能、情感、言語、微細運動、知覚などの働きをします。
人間の脳には、内側の中心部分に呼吸系や循環系を司る、生命を維持するための脳幹という部分があります。その周りに「意欲」や「やる気」、「生きる力を駆動」する間脳と大脳辺縁系があります。哺乳類になると外側がだんだん大きくなり、人間においては、前頭葉を含めた一番外側が最も大きく進化しました。この一番外側の「新しい脳」は人間しか持ち得ていない、知育に関係する部分です。これがあるおかげで、人間は言語や論理を発展させ繁栄してきたのです。知育偏重の早期教育は、この新しい脳を鍛えることに主眼を置いたものが多いといえます。
「意欲」や「やる気」は脳の内側に関わっています。そこを育てないで外側の知育だけを伸ばそうと知識だけを詰め込んでしまったら図書館のような人間になってしまいます。知識はあっても、「それをどのように使ったらよいのか分からない、使う気にもならない」では困ります。幼児期には脳の中心部を育てることが大事なのです。では、どのようにしたら脳の中心部を育てることができるのか?レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」がヒントになりますので参考にしてみてください。
バルシューレでいう「子どもの発達段階に即した学習」は脳科学の側面からも重要な考え方です。「早く大人と同じことができるようにさせたい」と考えるのは、内面の意欲を高めるための貴重な時間を奪ってしまうことになるので避けたいものです。まずはしっかり「古い脳」が働くように子どもを育てましょう。古い脳が働くということは、早寝早起き、3食しっかり食べて、規則正しい生活をすることです。まずは、意欲的に運動に取り組めるよう生活リズムを整えることが重要です。