最強を決める、ブラックペッパー14種比較
前書き
ふとした拍子にアメリカで人気の銘柄「Tellicherry」を入手。せっかくなので、国内市場に出回っているブラックペッパー、黒胡椒の差が気になり、14種類買いそろえて食味テストを行った。
当記事内では、その一部商品を掲載している。
「辛い黒胡椒が欲しい」、「香りの良いものが欲しい」、「安くて良いやつが欲しい」などの参考にされたし。
食味テスト詳細は以下のGoogleスプレッドシートにてまとめている。
食味テスト 項目説明
【評価項目】
①香り(フローラル、甘さ)②香り(柑橘、爽やかさ)③香り(ウッド、青さ)④辛味(強さ)⑤苦味⑥甘味・旨味
【原産地】
味に対し明確に差が出るのが原産地だった。
国内で手に入る黒胡椒の産地の多くがマレーシアかベトナムだが、こちらは大きく差が感じられなかった。
【大きさ】
無作為に選んだ10粒の大きさを、マイクロメーターで計測。小数点第二まで計測可能で、小数点第三以下は目分量で四捨五入を行った。
※大小のサイズ差が大きい商品もあれば、殆どが大きめな商品もあるが、ペッパーミルで挽く分には大差ないかもいしれない。
※大きさによって風味が変わることもあるのかと思ったが、ハッキリした結果は得られなかった。
【グラム単価】
大金を払えば質の良いものが手に入りやすい。そんな中、ワインでも日本酒でも、安価で美味しいものを見つけることを楽しみにする人もいることだろう。
※大手メーカーは大量販売しているからこそ、一定以上の品質のものを安価で提供している。味は高級品より一歩劣るとしても、価値が低いことは決してないのだ。
【色味】
商品写真を見れば、色味の差が確認できる。
これは産地による差かもしれない。
黒胡椒にまつわる豆(粒)知識
【胡椒のルーツ】
インドのマラバル地方やスリランカのマータレーが原産国として挙げられるようだ。
【生産量順位】
【主な名産地、銘柄】
1971年時点では胡椒の最大の輸出国はアメリカだったらしい。供給先の状況は大きく変化していないせいか、日本で見かけない銘柄も存在する。
当時の報告文は下部「参考資料」にて引用している。
GABAN ギャバン ブラックペッパー
原産国
ベトナム
(パウダーはマレーシア産だが、ホール(粒)はベトナム産らしい。何かしら事情があるのだろう。)
評価チャート
感想
ド定番のスパイスキング。全体的に控えめな数値。
ウッドと柑橘のバランスのいい香りは、慣れ親しんだ安定感をおぼえさせる。
味はまず苦味から始まり、ピペリン特有の後から来る辛味が尾を引く。全体で比較すれば、辛味が痛烈ということはなく、じわじわと広がるタイプだ。
S&B ブラックペッパー
原産国
マレーシア
評価チャート
感想
こちらも定番商品。
甘味を感じるが、辛味はかなり少なく感じた。
香りはGABANよりも柑橘、フローラル香に優れるように思う。
S&B 有機ブラックペッパー
原産国
スリランカ
(商品ラベルの原産国欄は、パッケージデザインとは別に刻印できるようなデザインだった。
これは不作や基準を満たさない場合、別国から仕入れることもあるから?)
評価チャート
感想
有機栽培の黒胡椒を使用しており、そのせいか粒はホロっと崩れるような食感(別のスリランカ産胡椒も似た食感だった)。
香りはひろがる燻製香が特徴的だった。
旨味を感じ、辛味は強くはないもののシャープに刺さる。
朝岡スパイス 黒胡椒原形
原産国
ベトナム
評価チャート
感想
デパ地下に陳列しがちなちょっとリッチなメーカー。ボトルもオシャレ。
味覚はまず苦味が来て、それを追うように辛味が舌を包む。苦味が消える頃にはマイルドな甘味・旨味が現れ、次第にすべて薄らいでいった。
香りの主張はバランスよく上品。数値で見ると特徴が無いように見えるが、全体的にバランスが取れており、万人受けしそう。
マスコット ブラックペッパーマラバル
原産国
インド マラバル地方
評価チャート
感想
意外と多くないインドマラバル産(黒胡椒の原産とされる)。
噛む前の香りはフローラルな印象だが、咀嚼すれば柑橘が顔を出してくる。同等のウッドもあり、調和がとれている。
味は辛味より先にマイルドな甘味・旨味が来る。それを追うように持続力のある辛味が広がっていく。
神戸物産 ブラックペッパー
原産国
中国
評価チャート
感想
業務スーパーで置かれている黒胡椒。自社で輸入も行うので非常にに安く手に入る。
辛味は遅れてやってくるが穏か。ちょっとした熟成香のようなものも感じる。
クラタペッパー 黒胡椒 ブラックペッパー
原産国
カンボジア
評価チャート
感想
ひと際漂うフローラル香。総合的にはマイルドな香り。
舌の先端から味わえば、まずはそこへシャープな辛味が突き刺さり、次第に舌全体へ順々に行きわたる。辛味は長くとどまることなくじわじわ余韻を残しながら薄らいでいく。自分の場合、舌の側面に微弱な辛味が留まり続けた。
辛味のシャープさと強さの両方で最高水準に達している。他の商品に比べて粒も大きめ。
倉田さんスゲー。
源気商会 ブラックペッパー
原産国
インドネシア ボルネオ島
評価チャート
感想
香りは何故かチリパウダー(ケイジャンスパイス)の香りがした。クミンやガーリック(硫黄系の香り)が混ざったかのよう。インドネシア全般に言えるわけではないだろうが、アミン臭(イカや魚の臭い)を含む傾向にあるせいだろうか?
咀嚼すれば甘い香りが広がる。また、じわじわやってくる辛味は細い針が束になって舌に刺さるかのよう。辛味は広域に渡らず、比較的局地的。
前田屋 野生の胡椒
原産国
マダガスカル島「アンジョゾロベ」
評価チャート
感想
広く流通している黒胡椒とは品種が異なる。
突き抜けるウッド香に、共演をなすような柑橘。相対的にフローラル感は薄い。ほぼ山椒のような香りだ。咀嚼すると柑橘の香りが立つ。
野生の胡椒だからか、基本的に実は小さい。
味は苦味がかなり目立ちつつも後を引き、辛味はほぼ感じない。わらびなど山菜のような風味があるので、苦味の正体は灰汁だろう。
Spice Lab Tellicherry Whole Black Peppercorns
原産国
記載なし
ケラーラ州だと思うが…
評価チャート
感想
香りはフローラル、ウッドがやや強い。4オンスの袋から香りを嗅ぐと芳香剤に近い香りがした。
辛味は刺すような刺激が続いた。雑味含めて強い味と言えそう。
総評
まだまだ世界中には見知らぬ黒胡椒があふれている。今回はその一部のみ比較した。
安さや手軽さで言えば、S&B有機とマスコットが優秀。成城石井や気の利いたスーパーで手に入る。
加熱調理に大量に使うなら、GABANがかなり優れているだろう。
そして少量非加熱で料理にアクセントをもたらすなら、クラタペッパーと源気商会が秀でていた。
参考資料
香辛料の需給事情について(松倉十一 著 · 1971)
ちなみに、ブラジル産黒胡椒を楽天内で見かけた。レビューを見た限り、香りは弱いとのこと。
活用例(サザンスパイス 渡辺玲さんのブログより)
黒胡椒の用途は、挽いて肉の下ごしらえに使うのもいい。粒のまま油で炒めてココナッツミルクと合わせるカレーも良いだろう。フランスではイチゴに少量の胡椒を挽いてアクセントを与えたりもする。
ブラックペッパーはどう扱うかが重要。目的に沿って使い分けれるよう理解を深めていきたい。
そういえば、タイトルに「最強を決める」とか書いてるが、別に決めてない。