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#80 『豊かな自然』は安いのか
2024年11月某日
地域活性化に関心のあるみなさんは、必ずと言っていいほど「その地域の強み、魅力、資源」みたいなものを考えたことがあるだろう。そして、それらを「ふせん」に書き出して、ペタペタとホワイトボードに貼り付けたこともあるだろう。筆者も同様である。ただし、基本的には「最後の発表役」にはあたりたくないと思っている。
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さて、地域、とくに日本の地方部のエリアの「魅力」に目を向けてみると、多くの場合「豊かな自然、美味しい食」というものが登場する。よく考えてみると、日本の都道府県のほとんどは、海に面した立地環境にあるので、「豊かな海の幸」はあるし、農業国ゆえに「地元の特産野菜」もままある。さらに、最近では「地域ブランドを付した肉牛」なども揃っているように思う。このことからすると、わが国のほぼすべての地方部は、「豊かな自然と、美味しい食、あったかい人」みたいな特徴があると表現することができる。ゆえに、これらは各地の「絶対的な素晴らしさ」である一方、地域間競争における「相対的な強み」と位置付けるにはすこし解像度が低い気がする。
筆者としては、とくに「豊かな自然」という地域資源の伸び代に期待している。最近、松島や砂丘といった、いわゆる「絶景」と呼ばれるような観光地に出向く機会があった。確かに素晴らしい景色で、思わず相棒のGRⅢx(コンデジ)のシャッターもすすんだ。しかし、「絶景」のその現地で筆者が支払ったものはといえば、1~2時間分の駐車場代と、数個のお土産代(筆者の家族はご当地マグネットを集めることを趣味としている)、自動販売機の買った「いろはす」くらいのものである。あまりに、安い。
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このことから思うのは、「絶景」は価値があるのに、価格に転換することが難しいということである。というより、その「装置」が不足しているように感じる。現状では、「絶景がある魅力的な地域」という「地域空間ブランド」を活用しながら、「観光地」としてエリアに集客し、ホテル・旅館・飲食店などの「サービス」でマネタイズしていくことが中心である。また、最近では「宿泊税」など、税のシステムを活用することで「景観代」を間接的に徴収するような動きもある。
では、もっと根源的な自然資源についてはどうだろう。「波」「風」みたいなものである。北海道のニセコ町では「雪」という資源を課金するための装置として「スキー」というサービスを活用している。その発想でいけば、「波」なら「サーフィン」なんかと掛け合わせてマネタイズする方法が考えられるし(宮崎県あたりでやってそうだ)、「風」なんかは「サウナの外気浴」みたいな体験を合わせることでマネタイズの道筋が見えそうだ。このように、「豊かな自然」を地域活性化につなげるには、「その資源の美しさ」ばかりをPRするのではなく、サービスという「装置」を設置し、「体験」に昇華さえて訴求しなければ、ユーザーとしては「お金の払い方がわからない」という点に、あらためて留意したいものである。
きれいな「海」「山」「川」など、美しい自然資源を維持することにはコストがかかる。タダものではない資源を、タダで売ってはいけない。おあとがよろしいようで。
ほなら。