まとめ記事⑫ まとめのまとめ
これまで①ー⑪までまとめを書いてきました。三ヶ日の最終日に【まとめのまとめ】をかかせていただきます。先日の投稿⑪
クリニックでは孤独
医局や大病院におられるときには身近に複数の医師が所属する組織がありますが、一人の個人開業医になると基本は孤独です。地域の医師会などがメインになって、これまで行けていた学会などにもあまりいけなくなってしまう現実があります。
・確かに学会に行こうと思えばいけますが、実際にはいろいろあっていけない>オンラインで解決されつつあります(交流という意味では減りますが 患者さんのために知識を増やすためには貢献しています)
・オリンピック選手にはなろうと思えばなれますが、そのリソースをかけることは現実的ではない。
・勉強すればできるようになるかもしれませんが、実際にはなかなか勉強を開始出来ない分野もあります
・インターネットを調べればわかりやすい説明資料は探せますが、患者さんがたくさんいらっしゃる診察の流れの中で 苦手な分野の適切な情報をすぐに引き出すことは難しいです。
「Theoretically possible, but Practically impossible【理屈上は出来ますが、実際は、、、】」なことを解決したいというのが いろんな場面で意識していることです。
医師は万能の神?
医師の皆さまは医学部に入られる際には かなりのことをほぼ完璧にこなしてこられたと思います。そういったご自身の経験から、医師は出来ないこと・出来ない人に対して不寛容になってしまったり、自分のせいにしてしまう、苦手なことには最初から手を出さないという傾向がないですか?
特に一緒にチームで働いているコメディカルの人々に対して先生はTEAMと思っておられても 相手は遠慮していますし、萎縮している方も多いです。
様々なコメディカル(CO-MEDICAL)の方は制度上「医師の指導の下」で働いているためSUB-MEDICALのようなイメージをコメディカルの皆さまや医師がお持ちかもしれません。 しかし、CO-OP(生活協同組合)やCOEDUCATION(男女共学)のようにCO-には「共に協力して」という意味があります。 患者さんにとって、医師は医師、コメディカルはコメディカルさんのプロの仕事を連携してやってほしいと思っているだけです。 医師が受付のことを出来るとは思っていませんし、 医師が検査機器を上手に使えるとも思っていません。医師も気楽に他の医師やコメディカルの皆様に依存すればよいのです。そうすると自ずと他人にリスペクトが出てくると思います
内部で?外部で?モテたい
多くの組織にアルアルなのですが、 本来は外部の顧客(患者さん)の満足度を上げなくてはなりませんが、 患者さんは目の前に自然にお越しになると勘違いしていると、直接給料をもらうために内部向けの目標達成を目指してしまうことが多くなります。直接の評価者である院内のマネージャーや院長の機嫌を損ねないようにという働き方になってしまうのです。
つまり患者さんの方を向いて仕事してね!と口では言っていても、院長先生がコメディカルのスタッフに対して「いつもどおり」とか「そんなことわかるでしょ?」「言うとおりにして」と一回でも言ったことないですか?
一回こう言われるとスタッフは自分の評価がそこで決まるわけですから患者さんのためとはいえ院長の意見と違う場合には 院長の都合に合わせてプロとしての仕事を100%行おうとはしなくなります。
そうやって院内は内向き志向になることが多いです。
情報は情けに報いると読むことができる。 プラス情報は経営者のところにどんどん集まって来る。 なぜか 経営者がプラス情報に情けをかけてやっているからである。 マイナス情報の場合には 経営者は冷たく扱う傾向にある そういう経験を2,3回すると 部下はもうマイナス情報を経営者のところになかなか届けなくなる そのうちに経営者は裸の王様になってしまう。
つまり、内部に対しては「あなたの評価は私がしますがなにか?」と脅しが効きます。しかし、これはコメディカルのスタッフのパフォーマンスを100%発揮させないことになります。
院長の基準以上に成長はしません
現実にはこれが当てはまらないとも言われていますがイメージがしやすいので「リービッヒの最小律・ドベネックの桶」を紹介させていただきます
「植物の成長を桶の中に張られる水に見立て、桶を作っている板を養分・要因と見立てる。これならば、たとえ一枚の板のみがどれだけ長くとも、一番短い部分から水は溢れ出し、結局水嵩は一番短い板の高さまでとなる。」となると 結局先生のいつもの態度や運営方針で他のメディカルスタッフが 先生に忖度すればするほど パフォーマンスが下がり 患者さんの評価が下がることになりませんか? そういった意味でクリニック長である先生が 第一回目でも書いた ミクロ的には良いと思われること(俺の言うことを聞け)がマクロ的には悪くなる(スタッフが患者さんではなく 給料や職のために内部指標である先生に忖度することで患者さんの評価が下がる)ということになる合成の誤謬が出てくるのです。
内部に対してはそのように院長の言うことを聞けと言い 給料を直接支払っているのは俺だと強権を発動することが出来ても、外部の医療機関にはそれは通用しません。
外でモテる
外部にモテるとはどういったことでしょうか?また話をずれたところから展開します
井手「A先生がモテるのは(紹介を受けるのは)先生が他の人をモテさせているからです。」
A先生「(またはじまった、わけわからん話が。) モテさせている?」
井手「A先生にはいつもお世話になっています だから紹介させていただくんです」
A先生「たしかにいつも井手先生のわけわからない話に付き合っていますので 十分お世話しているつもりです。でもそんな話を聞いてくれる先生たくさんいるじゃないですか?」
井手「いえいえ でも話を聞いてくれても 僕をモテさせてくれないところには紹介しないですよ」
A先生「でも僕は先生に女性を紹介したりしていませんよ」
井手「いえいえ、患者さんをしっかり診ていただいています」
A先生「そんなことだけでいいの? 誰でも出来ることでは?」
井手「それが一番大切なのです。」
紹介というのは自分にとって当たり前でない疾患・患者さんを、その疾患を当たり前と思っているであろう先生に見てもらうということ、と言い換えることが出来ると思います。
後医は名医
以前のまとめ記事でも書かせていただきましたが、先生方の収入が残念ながら普通でないことを意識して発言しないと 世間の人から叩かれるように。
先生の知識は先生にとって当たり前でも、紹介されてきた患者さんにとってはこれまでわからない 対応不能と言われてきているので非常に不安な状況です。そして紹介する先生は 自分が出来ないことを恥じながら紹介しています。 こういったときに 紹介される先生はいろいろな面で有利なのです
・前医(一般的には開業医)での試行錯誤の結果を知ることができる、
・生体の自然治癒過程
・そして専門性を持つ
など「後医は名医」という言葉があるように前医は不利な立場にあります。いわば、後医は後出しジャンケンをいているようなものです。
ですので、後医の先生が「これは医師にとっては当たり前の知識です。知らないのはおかしい」という発言をすると」
・患者さんは前医に対する信用をなくす
・前医は紹介先の先生(後医)に不信感
ということになります。 そうすると、その後医のところには前医は紹介したくありません。 もちろん 専門性が尖りすぎてその先生しかいないというところならそうですが
やはり患者さんの気持ちや前医の遠慮や恥ずかしさなどを考慮した対応が必要かと思います。 これは決して馴れ合いを意味するものではありません。
専門性のカバー領域が相対的に狭くなりつつある情報爆発の現代においては、ある分野で後医である医師も、自分の専門外においては前医になる可能性が高いことを理解しなくてはなりません。こういった時代において、医師同士も気を使い前医と患者ともに不安にさせない様に医療を行うことが長期にわたる安定した医師間、医師―患者間関係を維持させる方法だと考えます。もちろん地域における専門性の希少性がある程度あることが前提にはなりますが、希少性にあぐらかいてはいけません。
専門性
医学情報というのは、こうした医学INDISERとしての医学リタラシーを踏まえて、はじめて意味を持つものです。医療従事者は、プロフェッショナルとして日々こうした医学リタラシーを鍛えてきたわけです。従って、自分が対応できない、自分の専門外になる疾患に出会った場合、自分とは異なる専門性を持った(異なる医学リタラシーを持った)医師に、リスペクトを払って、患者を紹介するという行動に出るわけです。それはなにも恥ずかしいことではなく、そうして紹介できる仲間がいることを、むしろ誇りに思うものではないでしょうか。こういった領域の足りない部分をカバーしあっている、例えば外科の先生は内科の先生がいるので外科に専念できるのです
自身は自立しているつもりでも それは他の先生が他分野をカバーしてくれているから 専門にダイブできるのです。
しかし、専門性が単なる診療科の表出だけでは役に立たないので サブスペシャリティレベルまで表出してもらわなくてはならないのです。以前は 先生ご自身に自分の専門性を!とお願いしていたのですが 「私なんか 恥ずかしくて、、、」という方が多くて自薦は難しいと実感しました。そこで いつも紹介している信頼している先生(他薦)という形を取ろうと考えました。単なる他薦だと 学会で有名な人などの登録ばかりのDRY情報になってしまいがちです。しかし、紹介先というのは 地域と専門性そしてその先生の患者さんや前医への対応などDRY&WET情報がMIXTUREされたものです。
患者さんはもうpatientではない
昔のように医学がパターナリズムの時代で情報が医療ギルド内でのみ共有されていた時代なら どんなに遠くてもどんなに傍若無人な紹介先でも紹介したかもしれませんが、現代はギルド内の紹介だけでは患者の期待に応えられなくなっております。 中学・高校時代、単語patientは名詞では患者、形容詞では我慢強いという意味と習いましたよね?
患者さん同士の医療機関情報交換は盛んですので 患者さんは心の中ではもう我慢していません。しかし、患者さんに検索を任せるとSEO対策にまみれたランキングに左右されてしまいます。
相互依存関係
しかし、すべての紹介先を知ることは出来ません じゃあGOOGLEでも調べても紹介できない 多くの紹介先は知れないとなるとどうすれば良いんだ?
これも以前書いた JALやANAに申し込めば世界中の都市にいけます それは 提携航空会社の便に連携してくれるからです。つまり その地域や分野に強い先生の紹介先情報に便乗させてもらうのです。 便乗だけでアライアンスは成り立たないですよね 例えば アメリカの航空会社は羽田から地方には飛んでいません それはJALやANAに依存です そうやって 他のDRが先生の地域や専門分野で困っているときには利便を提供するということです。
これが今回の紹介先登録プロジェクトの背景と思いです。 もちろん 青臭いことは重々承知です。しかし、以前佐々木淳先生のFACEBOOKの記事で響いた記事がありまして
ここにもかかせていただきましたが、
患者が医療機関を自由に選択できる権利。
医師が医療機関を自由に経営できる権利。
地域医療の「ニーズ」とされてきたのは、実は双方の「ウォンツ」なのかもしれない。
医師は開業を通じて「自己実現」を目指す。
患者は「使い勝手のいい」医療機関を探す。
医師と患者のそんななれ合いの中で、平和に育てられてきた日本の医療システム。
という部分が耳が痛いですよね。
動かないから無理筋のまま
そういったことを患者さんの受診フローを考えて社会保障負担のトータルな減少を考えていければなーと少しでも動けばなと考えております。他にも医療機関情報WEBサイトや名医サイトあるじゃないかとなりますが、決してスーパードクターや神の手を意味する専門家の登録サイトではありません。厚生労働省も専門医について記述しておりますように
「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」と定義しているのです。こうした「過剰でない適切な」専門性を自身で持って紹介を受けたり、そのような専門性をもつ医師を探して紹介したりすることが求められます。
コールドスタート問題 ドッグフード
この紹介先登録プロジェクトが意味を持つためには、
①意義を十分理解していただける医師の参加
②参加している医師の数が十分ある必要性があります
しかし、プロジェクトが立ち上がった直後は、このどちらも存在していないことに気づかれるでしょう。これが「コールドスタート問題」です。
そこでお願いしたいことがあります。このプラットフォームを実現するために、ご理解をえられた医師のみなさまに、このサービスへの参加 知人への紹介をしていただきたいのです。
はじめは先生方の御理解が得にくく使いにくいシステムであると思います。マイクロソフトは、こうした活動を称して「ドッグフードを食べる」と言いました。マイクロソフトは、自社で開発したサービスのベータ版を、まず、社内に導入して評価するという伝統を持っているようです。ベータ版は、バグが多く理想からは程遠い状態です。それは「美味しい食事」ではなく「ドッグフード」と言わざるをえないレベルなのです。
お忙しい先生方にお願いするのは恐縮なのですが、「ドッグフード」を食べていただきたいというのが、私がここで訴えたいことです。
NYAUWという活動を始めたきっかけ
【1院・1人ではどうしようもないというため息】です。学会・医局・研究会・医師会などがあるじゃないか?という声が聞こえてきます。もちろん 医師にとっては非常に役に立つ組織ではあります。しかし、患者さんはそのようなセグメントの切り方で医療を見ておりません。 たとえば、「杉並区医師会の眼科の先生の中で対応してほしい」ではなく 「自分の疾患をできるだけ最小のコストで、より良く対応してほしい」が患者さんの要望です。時間・お金・精神的負担が最終的に少なくなるなら 先生の診療圏外の専門家にでもかかるのです。そういった際には 自分のいつもの専門内・近隣の紹介先だけでは対応できない場合もあります。「みなさんがいつもの紹介先情報をシェアしていれば患者さんの受診体験向上になるのでは?」と仮説を立て【信頼する紹介先のクリニック登録の数珠つなぎ】プロジェクトを立ち上げました。なるほどな!と思われたクリニック院長先生ログイン・登録してください!