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Netflixで 呪怨 呪いの家 を観たので感想とか考察とか

Netflixオリジナルドラマの呪怨を観たので感想とか考察とか。ネタバレあります。

どんな話?

 2000年に発売された呪怨(ビデオ版)から始まる、伽椰子と俊雄の理不尽かつ強烈な呪いの元になった実話がこれだ!という、元ネタもののホラードラマです。(もちろんフィクションです)

 呪怨シリーズから逆算的に作られているので、伽椰子が襲ってくるようなホラーシーンは殆どありません。ほとんどの犠牲者は人間に殺害されますし、それ以外は謎の失踪です。例外的に4人だけ、ホラーっぽい死に方です。

 1960年の事件に端を発して1997年までのエピソードで構成されていて、実話モノっぽい演出として、各シーン当時の大事件がテレビで流れます。唯一、劇中に幼女連続殺人事件の容疑者が出てきますが、それ以外は報道の中の出来事です。

 主人公は3人いて、まずは荒川良々演じる小田島。心霊研究家で、序盤では蒐集した怪談を書籍化することを目標にしています。もうひとりは黒島結菜演じる本庄はるか。序盤では駆け出しの女優で、テレビ番組で自宅の怪異を披露したことから、同席した小田島の興味を惹きます。最後は里々佳演じる聖美。序盤では母親と教師の不倫が原因で転校してきた女子高生で、悪いクラスメイトに目を付けられ、「あの家」で不良にレイプされます。

 はるかの怪異の原因があの家にあることが徐々に判明し、小田島はあの家を探し求め、聖美はあの家が原因で狂った人生を送ります。やがて、数々の犠牲者を出しながらあの家に全てが集まり、呪いの環が完成する、そんなお話です。

で、どうだったの?

 ホラーではあるんですが、それほどホラーな場面はありません。どちらかというとスプラッタ風味が強いです。殺人で血まみれになったり、お腹を割いて胎児を引き釣り出したり。要素的には、いじめ・レイプ・殺人・DV・不倫・売春・違法薬物摂取・グロというサスペンス的胸糞要素がてんこ盛りです。海外受けを狙った圧倒的な胸糞エンタメ感。

 ただ、後述の謎を探るための数々のヒントがあったり、呪怨シリーズおなじみの時空混在が発生したり、胸糞以外の楽しい要素も盛りだくさんではあるし、呪怨のアレはこれをアレンジしたんだな!みたいな感じの楽しみ方もできるので、呪怨ファンであればぜひご覧いただきたい。

 シーズン2とかあるんですかねネトフリさん!(チラッチラッ

黒い女の正体を考えてみる

 1995年の真崎・灰田家事件のあと、聖美は再びあの家を訪れました。庭から太めの細い枝を拾い、その枝を叩きつけてガラスを割って家に侵入、レイプされた時の写真を広げたところで芳恵・真衣(の亡霊)と再開し、二人に連れられて何処かへ消えました。(完全に余談ですが、あんな細くて長い枝をいくらガラスに叩きつけても、撓るばかりで傷もつかないんじゃないでしょうか。もうちょっとこう、物干し竿とかそれっぽいアイテム転がしておいても良かったのになあ、と思います)

 その少しあと、小田島は高坂と有安を伴ってあの家に入り、1960年に迷い込みました。そこで、5歳の小田島は白い服の女から子を託され「一緒に埋めて」と言われます。しかし、子の不気味さに思わず落としてしまうと、時を同じくして庭に黒い女が現れ家の中を凝視したあと、細い棒状のものでガラスを叩き割り、家に侵入すると素早く子を回収して逃走しました。

 聖美と黒い女は同じ話の中の出来事ということもあるので、「ああ、1995年の聖美が1960年に現れた黒い女なのかな。ちょっと行動違うけど」と思ってしまいます。初見の時は完全にそう思いました。しかし、時間が経つに連れて違和感が沸々とこみ上げてきます。どこにそんな違和感を覚えるのでしょうか。

 まず一番に思いつくのは、侵入後の行動です。聖美は家の中から出ることはなく、黒い女は子を奪うと逃走していきました。全然違います。

 次に外見です。聖美の髪はショートで、少しハネのある髪型でした。対して黒い女はセミロング、もしくはショートボブのようなまとまりのある髪型に見えます。もちろん黒いエフェクトに覆われているので、あくまで印象だけの話ですが。

 さらに、服装に相違があるように見えます。聖美が家に侵入する際、青系の長袖カーディガンを着ていました。ガラスを割るシーンでは、袖口がしっかり手首と密着していて、まったくずり落ちた様子はありません。対して黒い女のシルエットから、服の袖口は手首より少し下に位置しているような膨らみが見て取れます。

 黒い女の特徴に合致しそうな女性がひとりいました。それは諸角智子です。あの家に引っ越した日は青系、砂田洋に襲われるイメージのあと救急車で運ばれた日は白系と色こそ違いますが、同じように袖口が手首より少し下で、ふんわりした服を着用しています。髪はショートボブ。

 逆に、聖美と黒い女が符号する点もあります。例えば、俊樹は黒い人間を描いては「ママ」と言っていました。俊樹の母親が黒い女であることを示唆しており、つまりは聖美が黒い女である、と考えられます。また、実際にガラスを割って家に侵入しています。

 これはどういうことなのでしょうか。仮に輪廻転生とか業とかの概念を用いるのであれば、聖美と智子の二人で黒い女の業を担っていたのではないでしょうか。聖美は白い服の女から子を託され、俊樹の母親の役割を務めました。最後に1995年のガラス割りで、1960年に影響を及ぼしています。

 一方で、1955年に白い服の女が出産した子が消えています。単純に考えると1960年の小田島に子を託したものとなりますが、そこで聖美が奪ったとすると、1988年に白い服の女が直接聖美に子を託したこととの矛盾が生じます。

 もしも1960年の黒い女が智子だとしたら。彼女は1995年に迷い込んだ際、真崎圭一に食事を与え歓待していました。つまり家の呪いの環の一部になっていることを示しています。家の呪いの環を継続するには、智子の子に俊樹と同じ魂を入れる必要があります。しかし白い服の女から託されるシーンはありませんでした。これは、既に1960年に迷い込んで1995年の聖美と同化した状態で家に侵入し、小田島が落とした子を奪って魂を入れたのではないでしょうか。

 そう考えると、1997年の砂田洋出現から1955年に白い服の女の姿になり、1997年に戻って出産にこぎつけた、つまり劇中で明確な死亡や失踪に至らなかったことが腑に落ちます。

白い服の女の正体も考えてみる

 黒い女のところで諸角智子を持ち出しましたが、これは白い服の女にも言えると考えています。1955年の砂田洋殺害のシーンは1997年の智子から始まっています。また、その後は救急車で運ばれていますので、無事に出産したのだろうと推察できます。また、1995年に真崎圭一を家に招き入れる直前、白い服の女らしき足が見えていました。これは、白い服の女の業をも智子が担っていたからでしょう。

 もうひとり、これは分かりやすく本庄はるかも白い服の女の業を担っていると思います。ラストシーンで砂田洋に攫われていることが一番大きく、攫われた時の服装(夜のため色は不明で、ボタンブラウスぽい)も、深沢道子が最後に見た女の服(ほぼ上半身だけで、ボタンのブラウスぽい服)に似ています。さすがに攫われてから出産までの時間を考えると同じ服を着続けたとは考えづらいので、白い服になったのはあとのことでしょう。道子の亡霊がはるかにテープを埋めさせているのも、砂田洋がはるかを攫うきっかけを作ったものと考えられます。

 また、智子の部屋に砂田洋が出現した際に居合わせ、砂田殺害を目撃している点も、はるかと智子の二人で白い服の女の業を担っていることが原因と考えています。1997年に砂田を見ているのは、はるかと智子の二人だけなのです。

 こうして考えてみると、最終話のチョイ役でしかなかった智子が実は白黒両方の業を担い、呪いの環を先に進めるためにも重要な役割だったということが分かりますね。

生き残りの基準はなに?

 家に入った事があり、生き残った人物は以下。
・小田島泰男(心霊研究家)
・高坂保(刑事)
・佐々木篤(不動産屋)
・有安君江(児相職員)
・諸角智子?(妊婦)
・警察の捜査人員(高坂以外の刑事、鑑識など)

 例えば"リング"では、貞子の複製に役立った人物だけ呪いを免れたように、本作でも何かしらの法則に基づいて生き残ったものと考えられます。これがフィクション版の呪怨シリーズだったら、問答無用で全滅してますから、"現実"は優しいものです。では、どのような法則だったのか、少し考えてみましょう。

1. 犠牲者を増やす役割を担っている者

 リングのルールに類似していますが、小田島と不動産屋が該当します。小田島はあの家の怪談を世に出すことで、興味を惹かれた者が訪問する可能性を増やしています。不動産屋である佐々木は、商売としてあの家の住人を割り当て続けることで犠牲者を増やし続けます。

2. 呪いの環をつなぐ役割を担っている者

 曖昧な内容ですが、どうやら単純に犠牲者を増やすことが呪いの目的ではなさそうです。どういうわけか、白い服の女は我が子を絶やすなとでも言うように、各時代にばらまいている節があります。しかし母親の役割になった者は無事では済みません。聖美は既に連れて行かれましたし、智子も劇中では生存だと思われますが、子の成長に従って役割を終え、失踪することになるんだろうと思います。

3. 不明

 刑事の高坂と児相の有安君江については理由がサッパリわかりません。高坂については、解釈によっては家に纏わる事件を追うことで関係者を家に呼び込む道具として利用されているのかも知れません。そういった意味では理由1に該当するとも考えられます。

 有安君江に関してはもうね…最終話でニゲテーをくらったので、劇後に酷い目に遭うか失踪してるかだと思うしかないです。不明すぎる。

 その他のモブ捜査員も家に入っていますが、あれは劇外で酷い目に遭って全滅していてください。

残っている謎

「一緒に埋めて」とは

 白い服の女が子を託す時に告げる「一緒に埋めて」とは、何のことなんでしょうか。劇中の情報だけでは明確になりませんでした。何を何と一緒に埋めて欲しかったんでしょう。

 中盤、真崎圭一は妻から胎児を取り出した後、あの家の庭に埋めました。最終盤では、はるかが例のテープを同じ場所に埋めています。道子は、あの家でテープを再生している最中に圭一が胎児を埋めるシーンを見たようです。その際に「あなたもそこに埋められているの?」と聞いていました。しかし、劇中の新聞記事によれば砂田洋を殺害した女(仮に女Aとしましょう)は家を出て出産し、その後死体で発見されたようです。あの家の庭に女Aが埋まっているはずがありません。これは一体…

 ところで、新聞記事の砂田洋の死体が発見された際の記事を頑張って拡大して見ると、どうやら砂田洋は女Aを攫う以前にも同様の誘拐を繰り返した事が仄めかされていました。女性を攫っては妊娠させ殺害を繰り返していたとすると、これまで白い服の女だと思ってきた女Aは、もしかすると白い服の女とは別人なのかも知れません。女A以前に真崎千枝のような殺され方をした被害者がいて、本人も胎児も庭に埋められ、それが白い服の女になった、とか。

 ここにきて真崎千枝が登場しちゃいましたね!単なる不倫女でヤベえ奴というだけでなく、白い服の女の業を担っていたのは、実は真崎千枝だったかも知れないと。そう考えると、真崎圭一は砂田洋の業を担っていて、だからこそ「あの子をあの家に庭に埋めるべき」という発想になったことに合点がいきます。

 そして、少し前に白い服の女の業を担っていると書いた、はるかと智子については、白い服の女でなく女Aの業を担っていることになります。

屋根裏部屋について

 これ最大の引っかかりポイントでした。整合性のつく説明を思いつきません。1995年の真崎・灰田家事件のあと、小田島と高坂、有安があの家を訪れますが、その際に刑事だか鑑識だかが屋根裏部屋を発見しました。この時に「内側からしか開かない仕掛け」と説明しながら、屋根裏部屋の内側から蓋を開けています。これに対して「女性を監禁していたんでしょうか」なんて言うものだから、つい「(屋根下部屋の)内側からしか開かず、屋根裏に人を閉じ込めるのに使っていた」と思ってしまいがちですが、この「内側」は何処から見た内側なのでしょうか。

 劇中の状況を考慮すると、どう見ても屋根裏部屋の中からしか開かない、つまり屋根裏の外にいる人間から開けることはできない、となります。小田島と高坂だけで訪れた際、小田島が聖子を幻視して屋根裏の蓋を押しますが、開かなかったことからも、屋根裏部屋を内側として考えるべきなのではないでしょうか。そうすると「閉じ込められていた」という状況が成り立たなくなります。この家で、誰が誰をどのように支配していたんでしょうか…。さっぱり分かりません。

 単なる思い違いで、普通に屋根裏の中から開けることはできない仕掛けをされていて、鑑識さんが仕掛けを解除したから屋根裏側から開けられたのだ、と思いたいです。

 こんな感じで考えれば考えるほど沼にハマっていきそうなので、いったんここでお開きにしましょう。シーズン2があるといいですね!(了)

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