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大きく育っていくのはどれ? (こどもてつがく低学年)

育ち盛りのこども達が「育つ」について考える!


 
今日は夏休み初日。厳しい季節でありながら、楽しいイベントものんびりした時間もたっぷりある夏休み独特の空気感。そのせいか集まりもいつもよりゆったりとしていました。

対話のルール確認を改めてと、アイスブレイクのかるた遊びをして、本題へ入ります。

今日のテーマは『大きく育っていくのはどれ?』
前回同様イラストが描かれたカードをヒントに対話します。

カードのタイトルは、
・悲しみ😢
・物語📖
・プレゼント🎁
・ぬいぐるみのクマ🐻
・檻の中のライオン🦁
・花瓶の花🌷
・遊んでいるこどもたち👦👧
・サンタクロース🎅
・パンケーキ🥞
・地球🌎

生き物じゃないものから、概念から、地球まで、幅広いラインナップ。考え甲斐がありそうです。

育つ=サイズが大きくなる?

大きく育ちそうなものを、順番に検討していきます。

まずは『花瓶の花』

「水をやったら、葉っぱが出てくるし、背が高くなる」

でも、土に埋まってるわけではありません。

「土だったら、大きく広がって、めっちゃ育つ」
「花瓶だと、大きさが足りなかったら、水も足りなくてしぼんじゃう」

続いて『檻の中のライオン』

「檻の中だから、走り回れなくてあまり大きくなれない」
「自然の中のほうが、自然を感じて育つ」

次は『遊んでいるこどもたち』

「こどもやもん、育つ」
「おなかから生まれてきて、大人まで育つ」

こどもはどうやって育つんでしょう?

「ごはん食べる」
「牛乳とかいっぱい飲む🐮」
「ごはんだけ食べると太るけど、運動したら大きくなる」

「遊んでいるのは育つことと関係するかな? こどもが大きくならないときはある?」とファシリ。

「ごはん食べなかったり、運動してなくて、お家でいたら育たない」

これはどうでしょう?
『地球』

「育たん!」

地球が育つとしたら、それってどういうこと?

「太陽よりでっかくなる🌞」

今まで出てきた話だと、
育つ=サイズが大きくなる。
確かに間違いではなさそうです。

斬新すぎる意見

「地球がでかくなったら、俺たちもでかくなる。地球がでかかったら、俺たちはもうちょっとでかかったはず💪」
「うん!」

斬新な意見に、同意する子どもたち。
柔軟で自由で。なぜか確信に満ちていて。

「地球が大きくなったら、自分たちも大きくなるのは、どうやって知ったの? たとえばお家が大きくなったら、大きくなるの?」とファシリが聞きます。

「大きくなったら、イェーイ✌」
「パパとかはもう、育たんよ」

「地球が育たないってどうやってわかったの?」とファシリ。 
何かを正しく把握できたのなら、それに至った経緯もまたきちんと説明することができるのかもしれません。

「地球は毎日でかくなってないから」

こども達は1年に1回しか大きくなってない?


「自分たちはどう?」とファシリ。

「1年に1回しか大きくなってない」
「そうそう、1年に1回、(手で示して)これぐらい伸びる」

斬新な意見にも、なぜか同意の嵐!

学校で身長や体重を計るのが1年に1回だからかな?
こども達の考える「成長」という概念、本当に面白いです。

「地球が1センチずつ大きくなってたとしたら、成長していてもわからないんじゃない?」とファシリが疑問を残します。

『パンケーキ』は意見が分かれました。

育たない派は
「食べたら、なくなるから🍽」

育つ派は
「作ったら、またできるから」
「こどもやライオンは水で育つ。パンケーキは育てるというよりも作る」

「作るのと、育つのは同じこと?」とファシリ。

「育つのは水をあげて大きくなること。作るのは自分たちが作って食べる

なるほど。水やりという手助けはあっても、花は自然と大きくなるもの。一方で、作るときは、人間の意思がすみずみまで働いているのかもしれません。言葉はまだまだ足りないかもしれませんが、こどもたちが考えていることが確かに伝わることもあります。

続いて『サンタクロース』

「これ、王様ちゃうん、サンタクロースに見えないけど」というツッコミが

「サンタクロースは育ちます! 人間と一緒だから🌱」
「育つより、腰が折れる。折れていくと、背が低くなる」

「背が低くなることは、育たないこと?」とファシリ。
「うん、ちっちゃくなっていく」

今まさに、身体が大きくなっている子どもたちにとって、育つ=サイズが大きくなる、という考えは力強いものであるようです。

「育つことは、身体が大きくなるってこと? 頭の中は関係ないのかな?」ファシリが新たな問いを立てます。

「物語」や「悲しみ」は大きく育つ?

続いて『物語』

「育たないでしょ」
「古くなっていく、本自体が古くなる」

「中に書いてある物語も育たないかな?」とファシリ。
「うん」
「紙に書いて、ページを増やしていったら、増えていく」

「書き足すことは、育つこと? 桃太郎の続きを書いたら、それは育つことになる?🍑」とファシリ

「別のこと。本自体が増えたり、厚さが増える」

物語が育つかどうかは、もう少し検討の余地がありそうです。

さらに『悲しみ』はどうでしょう?

「いやなことがあったら、増える」

増えるという言葉もよく出てくるようになりました。
増えることと、育つことは関連しているでしょうか?

次は『クマのぬいぐるみ』

「ぬいぐるみの綿を増やしても、ぬいぐるみが増えるわけじゃない。ちょっとは大きくなるけど、最終的にはやぶれる」

育つこと、作ること、増えることの違いとは?

ここまでで一旦まとめます。
いままで浮かんできた疑問を、紙に書いてみます。

じっくり検討中


その中で、

・育つことと、作ること、増えることは何が違うのかな?

という、とっても良い疑問が出てきました。

しばし、作るもの、増えるものはどれかという分類タイムに。
そして、それぞれのカードにかかれているものの、質自体に違いがあるのではという話にもなりました。

・植物と本の違いは?
・悲しみは物ではなく、気持ちでは?

生きているものには目や鼻がついている?

続いて話題は「何が生きているのか、生きていないのか」という話に。確かに、何かが育つということは、何かが生きているということと関係がありそうです。

「花も子どもも生きてる。サンタクロースも生きてる」
「パンケーキは生きていない。だって目も鼻もついていない」

確かに、生きてるものには目や鼻がついてることが多いのかも? でも本当にそれだけかな?

「地球は生き物?」とファシリ。地球にはたぶんですが、目も鼻もついていませんね。
「生き物じゃない」

カメラマンとして参加していた大人がが質問します。
「地球がまわってるということが生き物っぽいと思います。あと、流れ星は死んだ星だという話を聞いたことがあります✨」

死ぬことがあるなら、星も生きていて、もしかしたら育っていることもあるのかもしれない?

あらたな天国観👼

「星って死んだ人じゃないの?」
「神様じゃないの?」
「天国におる人。天国におる人が死んで、また生き返ったら星になる」

こどもたちの宇宙や、天国にまつわる話は刺激的で、凝り固まった世間知がほぐされていくようです。


おとなたちも勢いあまって議論に参加!

パンケーキは生きているのか問題

「地球もいつか死ぬのかな? いつか死ぬならそれは生きてるってことだと思う?」とファシリ。

「パンケーキは死ぬ。食われて死ぬ」
「腐って死ぬ」

「じゃあ死ぬなら、パンケーキは生きてる?」とファシリ。

「生きてる」
「生きてないんちゃう?」
「生きてるけど、食べられて死んじゃう」

生き物のように膨らんだり縮んだりするパンケーキ。そして酵母の存在。パンケーキは果たして生き物なのか、大人でも意見が分かれそうな問いです。

パパやママはもう育たないのか問題

「生きてることと、育つことは関係してる?」とファシリ。

「パパは育たない。お父さんがコーヒー飲んだら育たないっていいよったよ☕」

「お父さん、お母さんはもう育たたないの?」とファシリ。

「自分たちでいいよった。子どもは遊んだら育つけど、大人は大きくならない」

「自分たちが育ってるのはどうしてわかったの?」とファシリ。

「お家で計ってるから」

サイズ以外で育つものはある?

「身長、体重、年齢以外で育ってるところはある?」とファシリが問いかけます。

「顔?」
「性格?」

成績のことも少し気になるお年頃。

「1年前に比べたら、100点が取れなくなっちゃった🖊」

「お母さんや、お父さんが、勉強してテストの点が良くなったら育ってるといえるかな?」とファシリが問いかけます。

「育ってはないけど、頭は育っとる」
「背とかは伸びんけど、頭が、脳みそが成長していく」

「お母さんや、お父さんが身体を鍛えて、握力が増えたりしたら?」ファシリが畳み掛けます。

「手の強さが強くなってる。手だけが成長しとる」
「パパは太ってるけど、鍛えたら育つんじゃなくて、痩せる、かな」

本日の対話はここでおしまい。

振り返りとして、印象に残った地球のイラストを描いてくれました

子どもたちの中で、当初強固にあった「育つ=サイズが大きくなる」という考え。そこからスタートして、育つという言葉の意味にはそれ以外にもいろいろありそうだぞ、という予感は少なくとも生まれたように思います。

成長真っ只中にある子どもたちが考える「育つ」を巡る対話。毎年のように身長も高くなり、体重も増え、できることが増え、成長していく渦中にある感覚。遠い昔には、自分もそのただ中にあったはず感覚を、今はもう忘れてしまっていることに、気づかせてくれました。

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