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逆接を使わない説得法(上級者向け)

おはようございます。毎日投稿17日目になりました。

説得の心得

   相手を説得したいとき、まず先に相手を褒めるという方法があります。これを使わないのは三流、使えば二流といったところです。
 
   例えば、上司Aが、平気で遅刻してくる部下Bに対して注意する場面では、以下のようになります。

〈三流〉
A「遅刻してくるなんて社会人として恥ずかしい。社会人としての自覚を持ちなさい。」
B「はい、すみません。気をつけます。」
〈二流〉
A「最近業績がいいのは君のおかげだ。だけど、いつも遅刻してくるのは見過ごせない。君の努力がもったいない。」
B「はい、すみません。気をつけます。」

   〈三流〉は間違ったことは言っていませんが、結果を見るとBはきっと数日は直しても結局は遅刻癖が元に戻るでしょう。
   〈二流〉は一見良さそうに見えますが、Bからしてみれば、「褒めから始められて嬉しくなったけど、遅刻を注意するための前置きでしかなかったのかな」と心の底で思ってしまいます。

国を救った司馬懿の説得法

   では、何が〈一流〉なのでしょうか? 
 
   ここで、またまた僕の愛するThree Kingdoms(三国志の長編ドラマ)から〈一流〉の説得法で国の危機が救われた例を見てみましょう。(因みに、Three Kingdomsは吹替版がYouTubeで見られます。)

   魏王という位で、皇帝の位に間近に迫った曹操が病死した後、その息子の2人が跡継ぎ争いになりかけていたときのこと。その2人とは、長子の曹丕と、武芸に長け大軍を率いた曹彰です。
   曹操は没前、長子の曹丕を跡継ぎにすると遺言を残しました。しかし、大軍を率いた曹彰は、「この軍で兄を攻めれば必ず位を奪取出来る」と考え、曹丕のいる許都城に迫りました。
   慌てた曹丕は、師匠のような存在であった(のちに諸葛孔明のライバルとなる)司馬懿という知恵者に曹彰の説得を頼みます。司馬懿は城外にいる曹彰のもとを訪れ、以下のように説得します。

   曹彰 「父王(曹操)の印綬はどこにある?」
司馬懿 「先王(曹操)は長子の曹丕様を跡継ぎにするようご遺言を残されました。よって先王の印綬は現在の魏王(曹丕)がお持ちです。」
   曹彰 「私には精鋭10万の兵がいる。許都城の守備兵はたかが1万だ。私が命じれば2日で陥落するぞ!」
司馬懿 「お見事です。曹彰様の武勇があれば、許都城を2日とは言わず、半日ででも落とされるでありましょう。なぜなら曹丕様には兄弟で傷付け合うことを望んではいらっしゃらないからです。先王が亡くなられたばかり、宮殿を血で汚したくはないのです!」…(続く)

   最後の司馬懿の発言に注目して下さい。まず、相手の曹彰が言ったことに対して被せるようにして褒めています。
 
   そして何より、「しかし」や「でも」などの逆接を使っていないということです。人は、褒められている時は相手によく耳を傾けようとします。
 
   しかし、逆接の「しかし」「でも」を聞いた瞬間、無意識にも耳を閉じようとしてしまいます。ここで逆接を使わないことが役に立つ訳です。逆接を使わず、相手に耳を傾けさせたまま説得に繋げる訳です。
 
   誰しも、自分の考えや行動を変えられるのは快く思いません。大切なのは、相手自身に自分の行動の愚かさを気付かせることです。上の司馬懿の例では、まさに曹彰自身に自分を客観的に見させ、これからやろうとしている事の愚かさに気付かせることに成功しています。

一流の説得法

   では、最初に例を挙げた上司Aと遅刻する部下Bの例ではどうなるでしょうか?僕は以下のやり取りが一流なのではないかと思います。

〈一流〉
A「最近君のおかげで業績がいいから、少し給料を上げよう。君はまだまだ伸び代があって○○万円も夢じゃない。なぜなら君は遅刻して来ている分みんなより時間的に不利だからね。」
B「はい、分かりました。頑張ります。」

   見ての通り、逆接は使わず昇給を褒める過程で遅刻を直すメリットを提示しています。こうすれば、遅刻癖を直そうと無理に思わなくても自然と直っていくかと思われます。
 
   すぐにはこのようには考えつかないかもしれませんが、このような説得法があると知っておくだけでもいつか使える時が来るかもしれません。
 
   是非、然るべきときに使って頂ければと思います。

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