《オンニッサンティの聖母》ジョット・ディ・ボンドーネ
《Madonna di Ognissanti》Giotto di Bondone
この《荘厳の聖母》は、フィレンツェのオンニッサンティ教会の主祭壇のためにウミリアーティ会が注文したもので、《オンニッサンティの聖母》とも呼ばれている作品です。
Madonna col Bambino in trono, angeli e santi (Maestà di Ognissanti), Giotto di Bondone, 1306-1310 circa, Tempera su tavola, 335×229,5 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 2), Firenze
金地背景という光に満ちた聖なる空間を象徴的に表した手法で全体が包まれているとはいえ、ここには明らかにジョットの天才的革新性が新時代の到来を告げています。画面の手前から奥行きに向かう三次元空間、人物の彫塑的な表現、衣服などの自然な質感と陰影に、中世キリスト教絵画の革新を告げる息吹がはっきりと伝わってきます。
堂々たる聖母子が座る玉座は遠近法に従って描かれています。絵画空間に三次元の奥行きをもたせるために、玉座から画面手前に伸びる階段を設けたり、画面前方に暖色を多く使用したりしています。手前に暖色、背景に青や緑の寒色を用いて遠近感を出す手法を色彩遠近法といいますが、ジョットは巧みにそれを利用しています。形体や装飾は当時のゴシック建築を反映し、象徴的に教会を示唆しています。
聖母のポーズと、右手で祝福の仕草をして左手に神の律法を表す巻物を手にしたキリストのポーズは、ともに教会の規範に則っています。しかし濃青色のマントの下にマリアがつける白いチュニカは、ビザンティンの伝統から離れたものです。この白はマリアの純潔を象徴していますが、ビザンティンでしばしば見られた色は赤でした。マリアの衣服やマントには現実的な質感と重みが与えられているとともに、抑えられた襞の内側には肉体のヴォリュームが確実に実在しています。マリアの髪は額で薄いベールに覆われていますが、細部に対する関心はその透き通るような表現に見てとることができます。マリアの表情も伝統的にパターン化されてしまった優しさではなく、神の母としての威厳と人間らしい親しみがあふれてます。
玉座の両脇には緑の服を着た2人の天使が立ち、マエスタのシンボルとなる王冠と聖体容器をマリアに差し出しています。このホスチアの入れ物は、キリストの受難とそれによる贖罪の約束を示すものです。これをキリストの人性の象徴とされた没薬を入れる手箱とみる者もいますが、そうすると、キリストの死を暗示することになります。
まだらな大理石を模した玉座の段の手前には、2人の天使がひざまずき、百合と白や赤のバラをさした壺を捧げています、百合と白いバラは処女マリアの純潔の象徴であり、赤いバラはマリアの徳の中でも慈愛を、そしてキリスト受難を思い起こさせます。またマリアは「棘のないバラ」すなわち罪なくして生まれた者と呼ばれていました。原罪以前にこの花は、地上の楽園で棘なく伸びていたとの言い伝えがあったからです。
他の天使は多彩な色の羽根をつけ、賛美の歌を歌うかのように口を開け、その後ろには預言者と聖人が集まっています。
ウッフィーツィ美術館/Gallerie degli Uffizi
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