Palazzo Vecchio
シニョリーア広場に面して立つレンガ(硬質砂岩)作りの建物が、一般に「ヴェッキオ宮殿」と呼ばれる建物です。
アルノルフォ・ディ・カンビオの設計で1299年に着工し、1314年に完成しました。この建物の呼び方を「一般に」と書きましたが、建設当時はプリオーリ宮殿(Palazzo dei Priori)と呼ばれていました。
塔の位置が中心より右にずれているのは、既存のフォラボスキ家(皇帝派)の塔「ヴァッカの塔(Torre della Vacca)」を利用してつくられたためで、この塔は増築されて高さが94メートルとなり、ドゥオーモのクーポラができるまで、最も背の高い建物でした。この「世俗の鐘塔」は、その圧倒的な高さによって、有無を言わさぬ断固たる力を表現し、まさに都市の誇りを際立てて象徴するものとなりました。
この建物は16世紀まで何度も増築され、政治形態の変化とともに名前も変わりました。プリオーリ宮殿からシニョリーア宮殿(Palazzo della Signoria)、ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)と変わり、16世紀後半に初代トスカーナ大公コジモ1世の住まいがピッティ宮殿に移ってからはヴェッキオ(古い)宮殿と呼ばれるようになりました。ずっと昔の13世紀の建設なので、「古い宮殿」という訳ではありません。フィレンツェがイタリア王国の首都であった時代(1865-71)には、国会議事堂の一部として使用されました。
シニョリーア広場を観光で訪れる人の多くは、要塞のように威厳のあるヴェッキオ宮殿は博物館としての機能しか持たないと思っているようですが、実はここは現在でもれっきとした市庁舎で、住民登録、出生届や死亡届の提出の際には市民は必ず立ち寄らなければならない場所です。市議会もこの中で開かれていますし、立派な市長室もあります。
また結婚を予定しているカップルには素晴らしい式場「赤の間(Sala rossa)」を無料で提供してくれます。実際には公示の費用としてごくわずかの印紙代が必要ですが、書類を提出しさえすれば誰でも希望の日に挙式できます。
ヴェッキオ宮殿/Palazzo Vecchio