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サン・マルコ修道院
Convento di San Marco
リッカルディ宮殿を出て左、大聖堂を背にして北へ5分ほど歩くと、緑の植え込みのあるサン・マルコ広場に行きあたります。
広場の周囲を見廻して下さい。サン・マルコ聖堂があり、その右側に隣接しているのがサン・マルコ修道院です。
13世紀、ここにはシルヴェストリーニ信徒会の礼拝堂が建てられていましたが、1427年にはローマ教皇エウゲニウス4世の命でドメニコ会士たちが移り住んできました。
そして、1437年にメディチ家のコジモは建築家のミケロッツォ・ミケロッツィに教会と修道院の全面的な再建を一任します。それは大小4つの中庭と菜園、2つの食堂、宿泊所、図書館、応接室、参事会室などを備えた大建築でしたが、コジモはいかなる経済的援助も惜しみませんでした。コジモはこの修道院再建に、40,000フィオリーニ以上もの巨額な財産を費やしました。
しかし、フィレンツェの歴史に今もサン・マルコがその名を強烈にとどめているのは、この修道院を拠点として活躍した2人の僧ゆえです。いうまでもなく、画家のフラ・アンジェリコと、やがてフィレンツェの政権をも握るジローラモ・サヴォナローラです。
現在は修道院の一部を博物館として公開し、修道院に所縁の深い美術品を展示しています。
修道院、つまり博物館を入るとすぐに、聖アントニーノの中庭があります。
Chiostro di Sant'Antonino
この回廊では 《聖ドメニコの脆く傑刑図》など、フラ・アンジェリコの数点のフレスコ画が見られます。
San Domenico in adorazione del crocifisso, Beato Angelico, 1442 circa, Affresco, 340×155 cm
その回廊に扉をもつ一部屋は聖堂参事会員室(Sala Capitolare)で、大作の《傑刑図》が描かれています。
Sala Capitolare
Crocifissione con i santi, Beato Angelico, 1441-1442 circa, Affresco, 550×950 cm
ゴルゴタの丘に立つ3本の十字架の下には、マリアやヨハネなどの人物のほかに、その場にいるはずのないドメニコ会の諸聖人が、ともにキリストの死を嘆き悲しんでいます。
Sala dell'Ospizio dei Pellegrini
そして、当時の巡礼者宿泊施設(Ospizio dei Pellegrini)を中心としたギャラリーには、《リナイオーリ(亜麻布製造組合)の祭壇画》や、《十字架降架》、《キリスト伝》など、多くの祭壇画が一堂に集められています。
Tabernacolo dei Linaioli, Beato Angelico, 1433-1436, Tempera su tavola, 260×330 cm
Deposizione dalla Croce, Beato Angelico, 1432-1434, Tempera su tavola, 176×185 cm
Armadio degli Argenti, Beato Angelico, 1450-1452, Tempera su tavola
階段わきの部屋は小食堂(Refettorio piccolo)では、ミケランジェロも一時期師事していたドメニコ・ギルランダイオの《最後の晩餐》のフレスコ画が描かれています。
Ultima Cena, Domenico Ghirlandaio, 1480, Affresco, 400×800 cm
同じ部屋の延長上に設定された晩餐風景の空間処理は、15世紀のフィレンツェ派画家のとくに目指したものでした。
さて、2階へつづく階段を上りましょう。
途中の踊り場から上を見ると、まるでこのサン・マルコ修道院を舞台としたような《受胎告知》が目に入り、その清楚で敬虔な雰囲気に心が洗われる思いがするに違いありません。
Annunciazione, Beato Angelico, 1440-1450, Affresco, 230×321 cm
つまり、この壁画は少し下から見上げるような視点で描かれているため、階段をゆっくりと一段一段上りながら近づいていったときに最も美しい印象を与えてくれます。
この《受胎告知》を見て、右手に折れると、細長い廊下のような図書室(Biblioteca)を見学することができます。
Biblioteca di Michelozzo
2本のイオニア式列柱が軽快な連続アーチを支えた知的で明るい空間はもちろんミケロッツォの設計ですが、整然と並んだ書見台の上には、羊皮紙に書かれた見事な装丁の大型写本が展示されています。
2階は、聖アントニーノの正方形の中庭を取り囲む3本の廊下からなっています。
そして、これらの廊下をはさんで43もの小さな僧房(Dormitorio)の扉が並んでいます。
各僧房には1439年から45年にかけて、フラ・アンジェリコとその弟子たちの手で『キリスト伝』の場面がひとつずつ描かれています。
短い時間ではとても全部を鑑賞することはできないてしょうから、フラ・アンジェリコだけの筆によるとされる数室を紹介しましょう。
《受胎告知》〔第3室〕
Annunciazione, Beato Angelico, 1438-1440, Affresco, 187×157 cm, Cella 3
《キリストの変容》〔第6室〕
Trasfigurazione, Beato Angelico, 1438-1440, Affresco, 189×159 cm, Cella 6
《嘲笑されるキリスト》〔第7室〕
Cristo deriso, Beato Angelico, 1438-1440, Affresco, 195×159 cm, Cella 7
《聖母の戴冠》〔第9室〕
Incoronazione della Vergine, Beato Angelico, 1438-1440, Affresco, 189×159 cm, Cella 9
そのほか、おそらくはベノッツォ・ゴッツォリも参加したと思われるコジモ・デ・メディチ専用に描かれた《三王礼拝》〔第39室〕は、見逃すことができません。
Adorazione dei Magi, Beato Angelico, 1441-1442, Affresco, 184×362 cm, Cella 39
道院長室(Quartiere del Priore)〔第12-13-14室〕では、サヴォナローラの遺品が保管されています。
サン・マルコ修道院/Convento di San Marco