イチローと野中郁次郎氏に共通の考え~感性と暗黙知

経営学者の野中郁次郎氏が亡くなった。新刊「二項動態経営 共通善に向かう集合知創造」がまさに出たところだった。氏と言えば、旧日本軍の戦史研究に基づく「失敗の本質」(共著)の組織論と「知識創造経営」(共著)のSECIモデルによる知識経営論。そして今でも多分これからも褪せない理論だから傍に置いておきたい(たとえ積読でも!)。近年、経営のデータ分析偏重に警鐘を鳴らしている印象を受けていた。

そして、データ偏重野球に警鐘を鳴らしているのがイチロー。BS番組での松井秀喜氏との対談の中でも出たテーマ。「自分の頭を使わない」野球になっている、だから「退屈」と。
言葉にしにくい、他社との共有が難しい感性、感覚、勘所、つまり暗黙知。一方、共有しやすく、誰にも理解しやすいデータ、数値、傾向、つまり形式知。
ここに「評価」という補助線を入れると、人の評価とコトの評価に分かれてくる。今回は人の評価の話に限定すると、つまり、事業組織内で人を評価する時、感覚・感性に頼った人事評価は(社員目線では)多くの人にとっては嬉しくない。ここは、データに基づく人事評価に軍配が上がるのかもしれない。

ただ、どのようなデータを評価に使えば、社員の動機付けにいいのかは、実はデータ自体は教えてくれず、企業の事業特性や企業内の経験から来る感性や感覚に寄るところが多い。というのも、「どのデータを使って評価をすれば社員が納得し、公平に感じるか」というデータ結果を得るまでに数年単位での時間がかかる。あまりに現実のスピード感に合わない。
データは選択が肝になる。どのデータを選択するかは、人の感性の問題になる。

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