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【戦略論】 コーポレート・ガバナンス(企業統治) 〜GE帝国衰退史から学ぶ〜
コングロマリット経営のお手本だったGEのコーポレート・ガバナンスを分析し、長期的な価値追求を目指す、投資家と経営陣の在るべき関係を考察する
エージェンシーコストとコーポレート・ガバナンス
米国的企業統治理論においては、エージェンシーコストの最小化が「企業統治(コーポレート・ガバナンス)」と認識されている
エージェンシーコストとは、「プリンシパル(依頼主)とエージェント(代理人)との利害不一致が引き起こすコスト」を指す
たとえば、GEの経営陣は株主からの指示に基づき、最大の株主利益を追求すべき立場にあるが、その目的に反する行動を続けた事例があった
(たぶん自己保身で)株主投資家のガバナンス要求をかわそうと、場当たり的なM&Aや事業分離を繰り返し、 抜本的な構造改革を先送りし、株主価値を毀損する「コスト」が発生していたのだ
一方、株主の利益追求により、企業の長期的価値が損なわれることを防ぐのも、ガバナンス強化の一環だ
アクティビストと長期的価値の追求
一般的なアクティビストたちは、常に「隠れた価値を解き放ち」、「株主価値を高める」という目標を掲げてくる
そしてGEのように株価が業界平均を下回っている企業に対して、株価向上の働きかけを行う
例えば、発行済み株式の1.5%しか保有しない、少数株主の立場にあるアクティビストだって、委任状争奪戦(プロキシー・ファイト)の脅威を隠さない
その結果、取締役会の席を得ることが可能となり、経営を一手に掌握し、そして経営陣を入れ替えることもある
負債による自社株の買い戻し、配当金の引上げ、人員削減によるコスト削減、工場の閉鎖、好調な事業部門の分離、不採算事業の売却なども推進していく
特に短期的なコスト削減は、従業員の賃金や雇用、そして長期的なR&D投資に直接影響を及ぼす。最初に失われるのは、イノベーションへの取り組みだ
しかしながら、全てのアクティビスト活動が長期的価値を犠牲にした短期利益追求に過ぎないと決めつけるのも行き過ぎだ
2016年のGEの粗利益率は21%、対してユナイテッド・テクノロジーズは28%、シーメンスは30%、この数字を見ると、GEは戦略の見直しが求められる状況にあった
例えば、amazonやteslaといった時価総額上位企業は、株主投資家の想像力を刺激することで、利益よりも売上高やユーザー数の増加に注力してきた
創業約20年のamazonも、売上高は大幅に伸びているが、利益はごくわずかだ
しかし、GEは技術・事業ポートフォリオと時代の変化との間にGAPが発生しており、全体的に見て事業に問題が見られ、Predixなどの対策だけでは長期的視点が欠けているという指摘もある
アクティビストたちは、こうした問題に対処するために株主価値の最大化を追求する
時には劇的な変更を提案し、大企業が本来持っている「ビジョン」を揺るがすこともある
ガバナンス・モデルの提言
このような状況下で、企業の経営陣は二つの戦略を考えるべきである
一つ目は、事業の本質的価値を明らかにし、それを反映した株価を実現すること
二つ目は、アクティビストの提案が短期的な利益追求であると判断した場合、その提案に反対するための適切な理由を提示すること
企業が持つ真の価値を明らかにし、それを株価に反映するためには、企業自身が現在と将来の業績を正確に評価し、その結果を株主に伝えることが重要
同時に、事業戦略や業績予測が株主価値にどのように影響するかを説明し、投資家が企業の価値を適切に理解できるようにすることも求められる
アクティビストの提案に反対するためには、その提案が企業の長期的な成功を損なう可能性があることを説明することが必要
それが適切な投資戦略を阻害する可能性がある、あるいは短期的な利益追求が社員の士気やイノベーションを阻害する可能性があるといった理由が考えられる
最終的に、企業は自身のビジョンと使命に基づいた長期的な戦略を維持しながら、短期的な利益追求とのバランスを見つけることが必要
そのためには、企業自身がそのビジョンと使命を明確に定義し、それを株主に伝え、共有することが重要である