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さいはての地「石川県珠洲市」に恋をした

奥能登国際芸術祭というイベントをご存知でしょうか。
2017年に第一回が開催され、2020年に第二回の開催が決まっている芸術祭です。

キュレーターは北川フラム氏で、新潟県の、瀬戸内海のと同じ方です。
昨日、2020年の一般公募向けの説明会がありました。
今年からゆるゆる集まりだした35歳以下の若手建築士のコミュニティで、何か作品を出してみたいという話になったので、説明会という名のバスツアーに参加してきました。
同じ県だけど、遠くて身近に感じていなかった珠洲市ですが、すっかりさいはての地に恋をしてしまいました。

1.石川県珠洲市ってどこ?

石川県珠洲市は、石川県能登半島の一番端っこにある自治体です。
人口は昭和25年ぐらいが最大で約38,000人、そこから減少が続き現在は約14,000人まで減っています。
本州で最も人口が少ない市とのことです。
同じ石川県内でも金沢からのアクセスがとても悪く、基本的に車でしか行けません。
公共交通で行くならばバスに限られています。
どれぐらい遠いかというと、時間距離で言えば金沢から南に向かって彦根城のある滋賀県彦根市に向かうのと同じぐらいです。
金沢駅から新幹線を使えば東京駅と同じ2時間半かかります。

同じ県なのに身近に感じていなかったのは、単純に距離の問題です。
ほぼ旅行に行く規模の移動時間なので、他の県に出掛けてしまいますね。
そのため行く機会が少ないです。
唯一行くのが、星を撮影しに行く時です。
星を撮る際、街の光が邪魔をします。
そこで光害マップというものを確認してみます。

能登半島の先端は真っ黒、つまり光害が限りなく少ないのです。
特に天の川を撮るのが好きなので、春先に東の空に横たわる天の川を撮るには最適な場所が珠洲市です。
そこで撮影したのがこちら。

昨年の3月に珠洲市の見附島という場所で撮った天の川です。
写真好きには有名なスポットなので、ハイシーズンには平日の夜中なのにたくさんの三脚が並んでる日もあります。

2.前回の芸術祭はどうだったのか

2017年の奥能登国際芸術祭は、1度だけ見に行くことができました。
作品が珠洲市全土10の地域に広がっており、車で地域間を移動し、徒歩で地域の作品を回っていたので、全38作品のうち10作品ぐらいしか見れませんでした。
2020年も基本的には10の地域に作品を分散させるみたいです。
この10の地域というのは、公民館単位のコミュニティです。
大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭も地域のボランティアスタッフに支えられています。
作家によって地域住民と一緒に作品を作ったり、近所のおばちゃんが作品の受付をしたりと、地域住民が積極的に関わっているのが北川フラム氏がキュレーションする芸術祭の特徴です。
正直、大地の芸術祭も瀬戸内も奥能登も高齢化の進んだ過疎地です。
元気が無い地域です。
そこをアートの力で地域住民が当たり前と思っている日常や歴史、風土に魅力があることを自覚させ、住民参加で作品作りや運営をすることで、地元住民に誇りが生まれます。
その誇りにより、まだまだ俺らの町も捨てたもんじゃ無いと地域住民が元気になります。
この地域をアートの力で元気にすることこそ北川フラム氏の真骨頂だと思います。
昨日訪れた際、道の駅で働いているおじさんも言ってました。

芸術祭のおかげで老人が元気になった。
僕らにとって当たり前の日常、風土、風景にこんなにも人を惹きつける力があるなんて、芸術祭がなければ気付くことができなかった。
だから第二回が開催されるのは嬉しいし、もっと多くの人に珠洲を好きになって欲しいから、がんばっておもてなしするんだ。

こう言える地元の方がいる自治体って素敵だと思いませんか。
2017年ただ物珍らしさで、写真を撮りに行く程度で遊びに行きましたが、2年経った今年地元の方の感想を聞けてよかったです。
ちなみに2017年に撮った作品をインスタでアップしていたら、作家さんに見つけてもらい、公式写真として提供依頼を受けました。
眞壁陸二氏の「青い船小屋」という作品です。
眞壁さんは今年開催中の瀬戸内国際芸術祭にも出展中なので、訪れた際は是非ご覧になってください。

3.珠洲の良いところ

昨日訪れて、3つの珠洲の魅力を改めて感じました。
1つ目は海がきれいなところです。

北側の外浦は岩場が多く、南側の内浦は砂浜が多く、それぞれ自生している植栽も異なっています。
同じ市の中にどちらも豊かな異なる自然環境があるのは大きな特徴です。

2つ目は食事が美味しいことです。
バスツアーに組み込まれていたランチが、スズ弁というお弁当でした。

お品書きが手書きで可愛いのですが、それはさておき内容が素晴らしいです。
ここに入っているのは、地域の人が日常的に食べているものを元に作られています。
のと豚をいしるという魚醤で焼いたもの、かじめという昔船のスクリューに絡まって処分していた海藻を食材利用したもの、地元のお米など、とにかく珠洲ずくしです。
このお弁当は前回の芸術祭で想像以上の来場があり、数少ない飲食店が混雑したり、コンビニのお弁当も売り切れたりといったことへの反省から生まれたと聞きました。
来場者をおもてなししたい、せっかくなら地元の食材で、普段食べている地域食を楽しんでもらいたいというおもてなしの精神から生まれたお弁当です。
道の駅で800円で売られていたので、是非お買い求め下さい。
夜は1泊2日食事付きで1万円以下のリーズナブルな民宿があり、そこで地酒とお刺身を楽しめます。

3つ目は人が温かくて優しいところです。
道の駅のおじさんのエピソードを書きましたが、フランクに話しかけてくれて、とても優しい対応をしてくれます。
他にもバスの案内をしてくれた事務局長も、バスの移動中ずっと町の特徴、魅力を話してくれました。
バスから手を振ると町の人は、手を振り返してくれます。
これは元々お祭り文化が根付いていて、その一つに客人をもてなす「ヨバレ」という文化があるからだと思います。
ヨバレとは、お祭りの際にそれぞれの家の座敷にご馳走を並べて、親戚や友人、その友人とどんな人でもおもてなしをする文化です。
そのためお祭りの日は、道を歩くと各家に大きな机とそこにいっぱいのご馳走が並べられ、多くの人で飲んで食べてと宴会をしています。
お祭りに対する熱量も異常なほど高く、一度能登を出て金沢や他の地域で働いている人でも「祭りだから地元に戻らなきゃいけない、祭りだから仕事を休む」という価値観を持っています。
それほど祭りに対する熱量を持っていて、おもてなしをする文化があるので、芸術祭というコンテンツとの相性が良いのかもしれません。

4.これからどんな作品を考えようか

石川県でも金沢市から2時間半、新幹線で向かう東京と時間距離が同じさいはての地である珠洲市。
第一回目の奥能登国際芸術祭が成功し、第二回目の開催が決定しました。
写真を撮りに行くぐらいはしていたけど基本的に夜中なので、町を回って楽しんだのは今回が初めてと言っても過言ではありませんでした。
今回感じた珠洲の良さと、建築らしい創造的で論理的な思考を合わせて、仲間たちと良い作品を提案できたらと思います。
公募の締め切りは10月末ということで、仕事の合間を見ながらがんばります。
公募通過できたら、次は仲間たちと民宿で地酒とお刺身をたくさん楽しんで、ゆっくりできたらいいなと思います。

建築と写真で素敵な生活のサポートをしたい