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ボードゲームカフェを8年続けてみて思うこと【前編】

2015年5月から2ヶ月限定で実施する予定だったボードゲームカフェ武蔵新城@メサ・グランデ。2023年3月31日をもって終了となりました。多くの人に支えられてなんとかやってきた8年間。振り返ってみたいと思います。


ボードゲームを使って、何か活動をしたい人。

地域で何かを始めたい人。

脱サラをしたい人(?)。

「コミュニティ」に興味がある人。

まちづくりに携わっている人。


誰かの人生の参考になればと考え、色々と書きました。少しでもお役に立てば嬉しいです。

なぜ、ボードゲーム?


まず、僕がボードゲームでの活動を始めたきっかけについてお話したいと思います。

ボードゲームに触れたのは大人になってから。たまたま、ネットで見つけたゲームに興味を持ち、なんとなく買ってみたのが始まりでした。ちなみに、その作品とは不朽の名作「バトルライン」。


これをプレイした時の面白さったら!


すさまじくシンプルなルールながら、しっかり考えどころもあり。でも運の要素もあるので、頭の良しあしだけで勝負が決まらない

なんて素晴らしい!!!

どうやらこれは「ボードゲーム」というジャンルであることを知り、そこから複数のゲームを購入しました。もしも最初に遊んだのが「バトルライン」でなかったら、今のようなボードゲーム沼に入ることはなかったかもしれません。

その後、色々なボードゲームを体験していくうちに、水彩の美しい絵柄や、木彫りの可愛らしいコマなどプロダクトとしての美しさに心を奪われました。デザイナーのこだわりが随所に見られて、うっとりしてしまいます。

そして、実際に遊んでみると互いの戦略をバチバチにぶつけ合う陣取りゲームや、ひたすらに爆笑するコミュニケーションゲームなど内容についても多種多様な種類があり、ボードゲームの奥深さに虜になっていきました。

海外にはなんて面白いものがあるんだろう、と強く感動したのを覚えています。

この美しいボードや、可愛らしいコマを見て!
さて、ここにはいくつのゲームが混ざっているでしょう?



ボードゲームにハマってから数年は、友人と遊んでいる日々だったのですが。

ある日、公園を通っていると、ブランコ4台を占拠して、子ども達がずっとゲームをしている風景を見かけました。

イメージ図(ネット写真より)


「ブランコ占拠してゲームかぁ…」



「みんなで下ばっかり見ていて、なんだかなー…」


「この子たち、コミュニケーションちゃんと取れる子に育つのかなぁ…」



「!!!」


お互いに顔を見て爆笑できるボードゲームって、
 今の子どもたちに必要
なのでは!?」


と閃きました。


そこからの行動は早かったです。


ボードゲームの普及活動をするために、それっぽい(笑)資格を獲ろうと考え、「おもちゃコンサルタント」という資格をとり、活動を開始しました(おもちゃコンサルタントは素晴らしい資格です。オススメ)。

まずは、家の近所のこども文化センター(川崎市にある児童館のような場所)にアプローチ。たまたま館長が快く受け入れてくださったので、「おもちゃの広場」という企画をスタート※。

メインは乳幼児向けで、木のおもちゃ等で遊んでもらいつつ、学童期の子ども達にはボードゲームを紹介するという企画でした。

※おもちゃの広場は、おもちゃコンサルタントの資格を輩出している 芸術と遊び創造協会(旧 認定NPO法人グッドトイ委員会) のサポートを受けてのものです。詳細はこちら

こんな感じでした。※今はやっていません。

これがなかなかに評判が良く、継続的に実施することになります。

やってるこちらも楽しかったです

さて、ちょうど同じ頃(2015年)、川崎市が「地域の寺子屋事業」を起ちあげ、寺子屋先生を探しているところでした。たまたま行政職員の方と知り合った際に、ボードゲームの魅力と可能性を伝えたところ、「じゃあ、是非、寺子屋先生をお願いします!」ということになりました。


その後、川崎市内の複数の小学校でボードゲームの体験会や、講演会を実施していきました(※寺子屋先生は2023年現在でも続けています)。

寺子屋先生の様子
素敵な笑顔過ぎる!!
地域のカフェに呼ばれてボードゲームイベントを実施
マルシェに参加して、ボードゲームの販売もしました

こども文化センターや、小学校、地域のカフェにも呼ばれたり、イベントを色々とやったり、かなりてんてこ舞い。それでもボードゲームの素晴らしさが伝わって行くことや、多くの人の喜ぶ顔が見れることはとても嬉しいことでした。

しかも新聞やら地域紙やらの取材※も受けたりして。


※1 ボードゲームイベントなどでまちづくりに取り組む「わくラボ」の代表を務める
※2 独ボードゲームに熱中コンサルタントが指南



そんなわけで 「え?これビジネスでやって行けるんじゃね?」



勘違いをしてしまうわけです。

あとから分かるのですが、地域のために無償・もしくは廉価で働いてくれる若者の存在なんて、地域からすれば最高ですよね。

しかし、現実は甘くないことを後日思い知ることになります。…それは後ほど。




誰のためのボードゲームカフェ?


続いて、なぜボードゲームカフェを始めようと思ったのか。どうやってボードゲームカフェの場所を探したのかをお伝えしたいと思います。

前章のとおり、自分が「ボードゲームの達人」として地域に引っ張りだこになるにつれて、ボードゲームのできるたまり場(コミュニティカフェ)を運営したいと思うようになりました。

これは「ボードゲーム」という文化を日本(の子ども達)に伝えたいという思いもありましたが、もう一つ明確な思いがありました。

それは、大人こそ、思いっきり楽しんでもらいたいという思いです。

30歳を過ぎた頃から、自分の友人達が【会社(社会)】に埋もれていくように感じていました。久しぶりに友人に会っても、話題は会社の愚痴や社会への愚痴ばかり。明るい話は無く、ストレスフルな日常を確認するばかりでした。

酒に逃げ、酒に溺れ、人を傷つけるようになる友人など、辛くて見ていられなかったです。

例えば、子どもから見て、酔っぱらって愚痴ばかり言ってる大人になんて、なりたくないですよね。大人になっても子ども心を忘れず、楽しく生きている背中を見せたい。健全に楽しむことの大切さを伝えたい。

大人が、仮にノンアルコールでも思いっきり楽しめる場を作りたい、そういう気持ちがありました。

そこで、ボードゲームカフェのターゲットは【大人】にして、営業時間は水曜日・金曜日の夜のみとしました(のちに金曜日だけになります)。


いざ、ボードゲームカフェを始めようにも右も左も分からない。そこでまずは川崎市のコミュニティビジネス相談会というものを見つけ、そこに行くことに。そこで奇跡の出会いがあったのです!

僕は大学時代にまちづくりサークルを作って、商店街などの地域の活動を支援していたのですが、なんと、相談会の担当者が、その時に一緒に活動をしたNPOの方だったのです! 約10年ぶりの再開でした。

それでも向こうの方は僕を覚えてくれていて「あれ? あの時の安藤くん!?」という風になりました。今の考えを伝えたところ「あなただったら良いよ。うちのお店(メサ・グランデ)の営業終了後の時間を使って、まずはチャレンジしてみたら? 行けそうなら自分で場所を借りてやってみればいいんじゃない?」というお話をいただいたのです。

奇跡の出会いです。【情けは人のためならず】という格言をこの時ほど感じたことはありませんでした。

そんなわけで、大学時代の地域貢献活動がきっかけになり、メサ・グランデを貸してもらえることになりました。

さあ、ボードゲームカフェのスタートです!

オープン日の様子。オール知り合いです。
最初期の様子。懐かしい…。




え?誰も来ない


…うん。


そうなんです。びっくりするほど、お客さん、来なかったんですわ。


最初の半年とか、お客さん0人の日もザラにありましたよ…。


今思い出しても胃の辺りがギュッとなります。


ちょっと言い訳になりますが、今でこそ「ボードゲームカフェ」ってそれなりに市民権を得ていると思うのですが、2015年当時は、まだまだ珍しいものでした…。

そのため、看板を設置しても。


街頭でチラシを配っても。

「え? ボードゲーム? 何それ?」

「ボードゲーム? 暗そー

人生ゲームでしょww わざわざ行かないわ」

といった感じ。

ここ最近の活動でボードゲームに関する手ごたえを感じていましたし、


「ボードゲームカフェを始めるの!?
 めっちゃ面白そう! 毎週行くよ!


と言っていた多くの友達…。トモダチナンテ…。

うん、お友達の皆さんも、仕事も忙しいですし、実際は簡単には来れないですよね。


とにかく、自分の考えが甘かったことを身をもって思い知ることになりました。

この頃のメンタル、酷かったですね…。


ボードゲームカフェに行ったら、自分一人だけ!!

仕方がないので、店員さんと1対1のゲームをやり続けた。


そんな経験がある方っていると思うんですけど、あれ相当気まずいですよね。

大丈夫です。店員側も超気まずいので安心してください 笑

冗談です。お客さんとサシがイヤなのではなく、申し訳なさでいっぱいなんです(少なくとも僕は)。


楽しいゲームを山ほど用意しているのに、2人では面白くないので、そういったゲームを紹介することができない。本当に楽しい時間を提供できていない。そのことに申し訳なさがいっぱいなんです。

いちおう、このボードゲームカフェの運営は NPO団体わくラボ の活動という位置づけだったので、スタッフの子達も手伝ってくれていましたが、スタッフしかいない、みたいな日もあって、もうホントに泣きたい日も多かったです。


スタッフすらお休みで、本当に1人の時は心を無にしていました。




どうやって乗り越えたか?


2つありますが、1つ目は簡単です。


あきらめないこと。

「あきらめたら そこで試合終了」と安西先生も仰っていますが、本当にそのとおり。あれは至言です。

また、「失敗なんてない」というのが僕の持論でして。


世の中には「良い結果」「悪い結果」があります。間違いなくある。


ただ、「悪い結果」が出たとしても、それは「良い結果」に向けての通過点でしかないわけです。


「悪い結果」が出たまま、あきらめて終わってしまえばそれは確かに「失敗」なのですが、やり続けている限り、「成功」に向けた発展途上である。


というびっくりする程、ポジティブで往生際の悪い持論があります。


そのため、このボードゲームカフェも集客が上手くいっていなくても、きちんとした接客をしていれば、きっとファンは付いてくる、と信じていました。


(補足)僕のボードゲームカフェの場合は、「売り上げに対する●%を賃料とする」という契約だったので、売り上げが無ければ賃料が0円なのです。普通は、賃料やアルバイト代が日々発生するわけなので、上のような考えは通用しませんのでご注意ください。実際の事業となれば、赤字の金額的ラインを決めておくか、期間のデッドを決めておいて、それを超えても改善しなければスパッと止めるのが一般的かと。


もう1つ。

これも当たり前かもしれませんが、一人ひとりのお客さんを大切にすることです。感謝を忘れないこと。

例え、1対1であろうが、その数時間を楽しい思い出にしてもらうこと。

僕から見れば多くのお客さんのうちの1人ですが、向こうからすれば人生で1回だけのボードゲームカフェかもしれません。そう思えば、この一期一会を大切にしようと思えるわけです。



そうやって、歯を食いしばって継続していたところ、徐々にお客さんも増え、2年くらい継続していると「常連」と呼ばれる方々が生まれていきました。

そうすると面白いように好循環していきます。お客さんがお客さんを呼び、お店全体の雰囲気も良くなっていきました。「店の雰囲気は客が作る」とよく言いますが、非常によく理解できました。


特効薬なんてないんですよね。

用意するボードゲームのラインナップを工夫するとか、SNSでの発信とか、やれることは色々あるんですけど、強いて挙げるのであれば1番大切なのはお客さんが楽しい顔をしているかを丁寧に観察することだったように思います。


わくラボのスローガンは「あそびを通して人の心をつなぐ」です。



これをボードゲームカフェに落とし込むと、

面白いボードゲームを提供する

ではなくて、

「ボードゲームを通して楽しい時間を共に過ごし人の笑顔を繋げる

といったところでしょうか。

店主はどういった店を目指すのか、を大切に考えるべきだと思います。


ボードゲームカフェってその性質上、「ボードゲームで遊ぶこと」を最上位に置いている人も当然いらっしゃるのですが、うちのお店は「みんなで楽しい時間を過ごすこと」を最上位に置いてくれる人が常連さんとして残っていったように思います。

常連が多い店って新規客を許さないクローズな印象もあるのですが、うちの方々はウェルカム体質。

「おお!よく来た!」

「どっから来たん?」

「どんなボードゲームが好きなん?」

「家どこ?近いん?」


大阪のおばちゃんレベルの詰め寄りを見せ、仲間に引き込もうとしていました。笑


それと、うちは一貫して、お一人で来た人に寂しい思いをさせない、という点は気遣っていたつもりです。

そんな感じでコロナ前は毎回満席くらいの集客。コロナ禍では長い休業も繰り返しましたが、なんとかお客さんが戻ってきた感じでした。


しかしながら、ボードゲームカフェのスペースを貸してくれているメサ・グランデ側の業態変更に伴い、レンタルスペース事業が終了となり、ボードゲームカフェ武蔵新城も終わりを迎えることになります。

メサ・グランデでの営業が終了することをお客さん達に伝えた日の皆さんの沈みっぷりったら…。本当に楽しみにしてくれているんだなと、とても嬉しい反面、どこかで再開しないといけないという気持ちにもなりました。

閉店することをホームページ等で発信してからは、久しぶりのお客さんもチラホラ来てくれるようになり、わざわざ顔を見せに来てくれる気持ちが本当に嬉しかったです。毎回泣きそうでした。笑

最終日は、皆さん閉店後も、お喋りしてなかなか帰らず。

「さあ!今日は朝までやるぞ!」

という帰りたくないオジサンをなんとか帰宅させ、お店を閉めたときの寂寥感はすごかったです。この8年間の色々な思い出が蘇って来て、何とも言えない気持ちになりました。

確かに、開店当初や、仕事で忙しい時期や、体調不良でも店を開けないといけないとか、その他もろもろ、しんどかったことも多かったはずなんですが、思い出せるのは良い思い出ばっかりなんですよね。不思議なもんです。


「テレストレーション」で信じられないくらいの画伯が出てきたり。

「私の世界の見方」でこの場では書けない回答で盛り上がったり。

競りゲームで、入札金額のほうがリターンより上回っていたり。

とにかく楽しかったです。一緒にお店を作り上げてくれたお客さん達には感謝しかありません。

最終日。たくさんのお客さんで満員でした。
とあるお子さんが最終日にくれた手紙。さすがに泣いちゃった。



「ボードゲーム」の話はいったん終わり。残りは、ボードゲームカフェを運営して、自分が何を考えて、何を得たか、というお話です。



後編へ続く。

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