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福祉不信を生み出すもの:こんな高齢者福祉事業所がある。

※おことわり:事例の特定を避けるため、フェイクを入れたり、具体的な数字は書かないようにしました。しかし、本筋はこのとおりです。

ある日開かれた、「養護老人ホーム入所判定委員会」でのこと。

「養護老人ホーム」とは、身寄りがない・災害や立ち退き等で住居がない・経済困窮など、一人では暮らしていけなくなった高齢者が、行政(市区町村)の判断によって入所する施設。高齢者にとってのセーフティネットだ。

特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどが契約制となって、こうした「儲からない人たち」を利用者として受け入れづらくなった今、養護老人ホームの役割はますます重要度を増している。

その判定委員会で、こんなケースがあった。

有料老人ホームに入所中の女性である。夫の厚生遺族年金がある。入院にでもならなければ、貯蓄に手をつけずとも、年金は充分手もとに残る計算だった。

この有料老人ホーム入所の後、起きたことは、おおよそこのようなことだった。

この事業所に所属する担当のケアマネジャーから、機能訓練としてデイサービスの利用を勧められ、やはりこの事業所のデイサービスを週2回利用し始める。月々の出費が増えた。

歩行器や外出用の杖など、さまざまな品物のレンタルを受けた。さらに、転倒が心配だからと、居室には、もとからある手すりに加えて、追加の手すりがたくさん設置された。この事業所は、福祉用品のレンタルを行っている。

月2回の通院は、これまで自分一人でやってきたが、危ないですよということで、やはりこの事業所のヘルパーがつくこととなった。時間単位で料金が発生するようになる。

道路の向かい側のコンビニへ買い物に行こうとすると、「道を渡るのは危険ですから」と付き添ってくれる。これが外出介助として、介護保険外サービスとしての料金が請求された。

かくて、介護保険の自己負担額を限度いっぱい、月によってはそれ以上まで使わされた上に、介護保険外サービスも次々追加されていき、いつしか年金収入以上の生活費がかかるようになってしまっていた。彼女は、やむを得ず、年金にあわせて、貯蓄を使いながら生活することとなった。

そして、途中持病の悪化もあり、貯蓄が底をつき、借金を背負うようになるには、4年かからなかった。

自宅は空き家で老朽化し、バリアフリーも何もなく、彼女が一人で住める状態ではない。子らはいずれも遠隔地に住み、それぞれギリギリの生活をしており、援助も期待できない。

そういう経緯で、彼女は養護老人ホーム入所判定委員会にかけられることとなった。年金にて借金を返済し、いずれ期を見て、ケアハウスか、入所中に介護度が重くなれば特別養護老人ホームに入るということで話がつき、彼女はひとまず、養護老人ホームに入所することとなった。

その事業所の有料老人ホーム入所中の利用者が、養護老人ホームの入所判定対象となったのは、これが初めてではない。

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