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ワールドカップが見せてくれた3分間の夢。

楽しみでしかなかったんです。

ワールドカップという舞台での
直接対決が決まってからの5ヶ月間ずっと。



でも、いざ始まってみたら違いました。
とんでもなく複雑な思いに支配された9日間。



【 11月23日 】

・日本 2-1 ドイツ
・コスタリカ 0-7 スペイン

立て続けに観た2試合。

後半の真っ向勝負で
あのドイツを相手に逆転勝ちを収めてしまった
日本が見せてくれた果てしない可能性。

明るい要素が何ひとつ感じられない
観てるのもつらくなる程のコスタリカの大惨事。


【 11月27日 】

・日本 0-1 コスタリカ

ついに実現したワールドカップでの直接対決。
期待していたのは3-2の撃ち合いで日本の勝利。

が、心の躍ることのない消極的な両チームの戦い。
グループ突破が厳しくなった日本への失望感と
プライドを回復できたであろうコスタリカへの安堵感。


【 12月1日 】

・日本 2-1 スペイン
・コスタリカ 2-4 ドイツ

パソコンとiPadで同時視聴。

またも披露してくれたアグレッシブな姿勢と
逆転勝ちでグループリーグ突破という
これ以上ない結果を残した日本への高揚感。

粘り強く戦うだけでなく
これまでなかった打って出る姿勢で逆転したものの
最後には押し切られてしまったコスタリカへの無念さ。




3試合ともに
どちらかが勝っては、どちらかが敗れ。

最終的にも
日本が1位で勝ち抜け
コスタリカはグループリーグ敗退。

だからずっと
喜びと悲しみの両方が湧いてきては
それらが混ざり合って
ぐちゃぐちゃとした感情になって。

ただ一瞬だけ
ほんと一瞬だけクリアな感情になりました。

同時に行われた第3戦の後半
日本が48分と51分のゴールでスペインに逆転。

コスタリカはドイツ相手に58分に同点ゴール
そして70分にはまさかまさかの逆転ゴール。


「 あ…このまま終われば…
    スペインとドイツが敗退して
    日本とコスタリカがグループリーグ突破だ… 」


両チームが勝てば
そうなることはもちろんわかっていたし
その結末を心の底から望んでいましたが
正直、現実味の薄い願望、というか夢でした。

それが後半も残り20分ちょっとになって
日本、コスタリカともにリードしてるという状況に。

それまでその夢は
白黒でぼんやりとしたものでしたが
急に色づき、鮮明に見えてきたのです。

あまりに興奮してしまい
気づけば、一緒に観ていた詩(0歳8ヶ月)に
スペイン語でバモバモ言っていました。





日本がドイツとスペインを倒して
決勝トーナメントに進出するだけでもスゴイのに
それがコスタリカと一緒に
グループリーグを勝ち抜いていけるって…

ここまで来たら、どうしても叶ってほしい…


お願い、お願い…


本当にお願いします…




3分間の夢、でした。




73分にドイツが同点ゴール。
そして、85分・89分の追加点で万事休す。
日本は勝ち抜き、コスタリカの敗退が決まりました。

たった3分間の夢。

でもこれまで感じたことがないほどに
人生の素晴らしさを味わえた3分間。

まさに「 Pura Vida!」でした。


6月15日にあったプレーオフで
コスタリカがニュージーランドに勝ち
日本と対戦することが決まって以来
11月27日をずっとずっと楽しみにしてきました。

けどだからこそ
いざその決戦の日が近づいてくると
もう来ないでくれという気持ちも湧いてきて。

夢中になって読んでいた本や
楽しくてたまらないミュージシャンのライブが
このままずっと終わらないでほしい…
そう感じるようなちょっと切ない気持ちでした。

そんな気持ちになれるって、なんて幸せなことだろう。

それは
自分がコスタリカでプレーできたからというよりも
そこでたくさんのステキな出会いがあり
たくさんの人たちが私利私欲なく助けてくれ
たくさんのピュアな想いに励まされてきたから。

「モンゴル800」が『あなたに』という曲で


「 人にやさしくされた時
    自分の小ささを知りました
    あなた疑う心恥じて
    信じましょう心から 」


と歌っていましたが、まさにそうで。

自分の小ささを知れるって素晴らしいこと。
だって、自分の大きな可能性だって知れるんだから。

あの国に行かなかったら
ここまで自分に対して
ワクワクできなかったかもしれない。

だから自分にとってコスタリカという国は
「超恩人」みたいな存在なんです。



コスタリカでの
2年間のフットボールライフを終える3日前
最後の最後にコスタリカが
さらに好きになってしまう出来事がありました。

糸島移住に向けた引越しの準備中に
そのことをFacebookに書いたことがあったので
ここに掲載してみようと思います。



引越しの荷物整理をしているとき
14年くらい前のコスタリカでの写真が出てきました。

プロとしての
2部リーグのシーズンを終え
本格帰国をする3日前に行われた
アマチュアリーグの試合写真です。

一緒に写っているおじいちゃんは
毎週火曜日と木曜日の
お昼にある草サッカーで
ボールを蹴っていた仲間で
たまにこうして彼が監督をする
アマチュアの試合にも
参加させてもらっていて。

帰国直前に
いつも気にかけてくれていた
彼のチームでまた試合ができることは
かなりかなり嬉しいことでした。

キックオフ直前。

試合が始まる気配がないまま
味方チーム、相手チーム、審判

何故だかそこにいるすべての人たちが
センターサークルの
ラインに沿って並び始めました。

よくわからないけど、自分もそれに倣うことに。

すると、おじいちゃんが
ゆっくりと輪の中心に入ってきました。


「 うちらの大事な仲間が
    日本に帰ることになりました
    テツ、中に入って来てくれ 」


言われるがまま、彼の前に立つと


「 よくうちらの町に来てくれた。
    本当にありがとう。
    一緒にボールを
    蹴ることができて嬉しかったよ。
    お前はもう家族と同じだから
    いつでもこの町に
    帰ってきていいんだからな 。
    今まで本当に本当にありがとう 」


そしてトロフィーをくれたのです。

自分のことを知らない
相手チームの選手や審判
そして試合を観に来ていた人たち
みんなが拍手を送ってくれました。

自然と、こみ上げてくるものが。

コスタリカに初めて上陸したときには
この国のことは何も知らず
スペイン語もまったくわからず
サッカーができる場所も当然なく
知り合いだって1人もいませんでした。

だからこそ
「人との出会い」がなかったら
で、それが連なっていかなかったら
こんな嬉しすぎる別れはなかったんだなって。

出会いの凄さを知れたこと
しかも頭じゃなくて
身体で実感できたことが
コスタリカで感じた一番大きな喜びでした。



今回のワールドカップ直接対決があったことで
コスタリカという国を知ってもらう
いろいろな機会をもらうことができました。


双子の弟ルイのインスタライブで一緒に話したり



「日刊スポーツ」で取り上げてもらったり




KBC九州朝日放送の
「シリタカ!」という番組で取り上げてもらったり



コスタリカを
より多くの人に知ってもらうことは
自分にとって小さな恩返しだと思っているので
そんな機会がもらえて嬉しい限りでした。

2026年ワールドカップは
カナダ・メキシコ・アメリカの共同開催
出場国は、32から48に増加します。

日本とコスタリカ、また対戦してほしいなぁ。
でも今度はぜひ決勝トーナメントの舞台で。
それもベスト8をかけた試合とかでやってくれたら…


次なる夢の始まりです。


最後にコスタリカの写真をあれこれと。

Pura Vida!



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