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妄想
夜、布団に入りスマホをいじる。
マンション備え付けのWi-Fiが不調のため、動画もまともに見れない。
読み込みマークが画面中心に現れるたびに自分の中のストレスゲージが溜まっていき、
それが最大に達した時、俺はスマホを枕にぶん投げて、「あぁ!!、」と1人叫ぶ
惨めな声は、部屋の壁に跳ね返ることはなく
口から出た瞬間、すぐに溶けてしまう。
俺が今叫んだ言葉が、好きな人への愛の言葉だったり、希望に満ち溢れた言葉だったら、
窓も壁も通過してどこまでも飛んでいくのに、
スマホを投げた先が、床ではなく枕というところにも無性に腹が立った。
俺は俺の嫌いなものにさえ、傷の一つもつけらないのだ。
そんなことを考えていると、全く眠れなくなりコンビニまで出かける。
行きつけのコンビニにつき、酒を選んでいると、
作業着姿、ビール腹の中年男が、割引シールの貼られた弁当と、コンビニオリジナルブランドのストロングゼロを、クセのようにカゴに入れていた。
彼に奥さんはいるのだろうか、いたとしても冷え切った関係か。服装からみるに肉体労働で月収は相当低いだろう。毎日22時過ぎまで仕事をし、割引されたコンビニ弁当と安い酒を腹に入れることで、1日をなんとか誤魔化し、もう見尽くしたAVで惰性のような自慰行為をして無理やり眠り付く。そんな日常を繰り返していることだろう
俺は頭の中で酷い想像をしながら、
俺の中で作った彼の人生に自分の未来を見ながら、
焼酎ハイボールを手に取りレジに向かった。
帰り道、カップルが腕を組みながら歩いていた。
女が男に「それディスってるって!!」と笑いながら話しかけていた。
彼らはとても笑顔だった。本当に幸せそうに笑っていた。
すれ違う時、俺は少しだけ息を止めた。
彼らから見た俺はどんな顔をしているのだろう。
いや、そもそも、
あの無垢な瞳の中に今日の俺など映ってすらいないだろう