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お前も殴っていい、だから俺も殴る

中学になり始めると、同じ年齢でも体の大きさにはかなり差が出る。
そして、精神的にも大きく成長していき、ちょうどその中間地点。

生徒指導による「改造シャープペンシル銃」の摘発により、流行も翳りが見え、
次に流行り出したのは、肩パンと首絞め。

「何かを使えば没収される」という結果生まれたものが、自らの体というのは、中学生ながら賢いのか馬鹿なのか。

肩パンはただ肩をぶん殴る、力試し。
首絞めは腕で相手の首を絞めて落とすという
どちらも単純なものだ。

当時の僕は、身長160〜162の体重は40kgくらいで、半ズボンから顕になる足があまりにも細いため、一時「棒」というあだ名がつけられていたくらい痩せていた。

そんな華奢なガキはガタイがでかいやつの標的になりやすいのか、よく肩パンをされた。
かとパンみたいなポップな名前だから、可愛く聞こえるが、普通に肩を殴るだけなので、
痛い。
特段いじめられているというわけでもないため強く否定もできず、
当時は「やめろよ〜」に(笑)をつけるくらいの惨めな反応をしていた気がする。

一時肩パンがエスカレートし、ボクシングジムに通っている(自称)のB君に殴られたり、授業中猿みたいに喚き散らすH君がしつこく殴ってきたりと、俺の肩はもう破壊寸前だった。

ある日H君のあまりにもしつこい攻撃の中、俺は「まじでやめろよ」に(笑)を隠し味に入れたくらいの具合で言い返す。

そうするとHは真顔でこう言った。

「お前も俺の肩を殴っていい。だから俺も殴る」


その時の僕は「理不尽」なんて難しい言葉を知らなかったけど、それを肌で感じた瞬間だった。

一発交代で肩パンをする。
まず俺の番、肩を殴る。
びくともしないし、むしろ俺の手首のほうが痛い。しかも、力を入れすぎたら倍にして仕返しされそうだから、へっぴり腰になってる。

次は奴の番
俺の腕3本分くらいに見える、いかにも硬そうで、もし人間が食用なら、あそこの部位は硬いからいらないと言ってしまうくらい、屈強な腕。
肩に力を入れる。

ドンっ
鈍い音が鳴る。

本当は泣きたかった。
でも泣いたらもう情けなさから僕は立ち直れない気がする。

また僕の番、奴が飽きるまで終わらない。
僕は20を過ぎた今でも
癖になったへっぴり腰で、ヘラヘラ笑う。

肩パンは続く
僕が本気で誰かを殴るまで、永遠に、、

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