
oji週報 2025/02/08〜2025/02/14
今週誕生日だった皆さん、おめでとうございます。
2月8日
久しぶりにコピーバンドのライヴをした。コピーしたバンドはToto。好きな人には説明不要と思うけれども、AOR〜プログレ辺りの流れを幅広く含む音楽性をもったバンドで、どうしても難易度は非常に高くなる。ここ数年でやったコピーバンドのなかではトップレベルに練習したと思う。結果、観てくれた人のリアクションはかなり良かったし、演っている側も楽しかった。
普段やらないと言えばやらないジャンルのバンドだったので、タイム感や音づくりに関しては新しく学ぶことも多く、そういう意味でも気づきに満ちたコピーだった。いちおう10年と少しベースを弾いているけれど、まだまだこれから身につけられるスキルは色々あるなと気づけたことは、とてもいいことだったと思う。
まったく真新しいことをするのもワクワクするけれど、今までやってきたことの枠内で未体験のことにトライするというのも時として同じぐらいの新鮮味がある。
あとこれも久しぶりに英詞の歌を(コーラスで)歌った。学生時代にRとLの発音をきちんと勉強しておいてよかった。
2月9日
上田市で寺尾紗穂さんと君島大空さんのLive観。
ライヴの前に「二月猫」という古本とレコードのお店に伺う。上田駅からみて千曲川沿いに西へ行ったところにある上半過(かみはんが)という地域にある。西上田駅から歩いたら1時間かかった。歩くのは好きなので問題ない。
店名のとおり猫にまつわる本のほか、文芸のラインナップが充実していて個人的にツボだった。頑張って2冊に絞って買った。レコードも面白そうなものが多くあって迷ったが、頑張って3枚に絞って買った。
店主さんも穏やかな語り口で上田に関するお話を色々してくださり、ありがたかった。また来ます、とさらりと言うには少し遠い街だけれど、近所にあったなら間違いなくリピートしていたと思う。
その後、歩く方向を変えて上田原駅方面へ。途中のラーメン屋でチャーシュー麺をいただく。東京近辺でラーメンを食べに行くとだいたい追加トッピングなしの「中華そば」とかを注文するのだが、少し遠い場所のラーメン屋だとなんとなくチャーシューとか味玉が乗っているのを選んでしまう。今回は後から来た常連風の客が軒並みチャーシュー麺を頼んでいたので、見立てが合っていたようである。実際美味しかったですしね。
ライヴ会場は上田映劇という劇場で、大正6年(1917年)創業という。改修工事や耐震補強などはある程度経ているだろうけれど、こういった「場」を100年以上も守り続けている人たちの努力は筆舌に尽くし難いものがあるだろう。
君島さんの演奏を観ているとpractice、という単語がふと浮かぶ。長年の練習を積み重ねて得たであろうギター・歌唱のテクニックを感じるので、まずそういう意味でのpractice。もう一つは日常の活動、営為としてのpractice。高度な音楽でありながら、私の日常生活に驚くほど自然に馴染み存在している。そんな音楽である。
寺尾さんの演奏を受けて心に浮かび上がる第一の感覚は、深い敬意である。ライヴでも楽曲のバックグラウンドなどの解説をしてくださるのだけれど、そのテーマは身近な人との別れや戦争のことなど、けして笑顔で頷きながら受け止められるものではない。しかしながら、紡ぎ出される音楽には親しみやすさと言ってもよいような、聴き手の心にやわらかに染み込む成分が満ちている。それは詞曲に込められたメッセージを他者に伝える、という楽曲の意義を考えたときに必然のものであるように思う。
少し前のこと、君島さんの独奏を観にいったときに寺尾さんの「愛よ届け」をカヴァーしておられた。なので今日のアンコールはひときわ心打たれた。
2月10日
休みが明けて、1日だけ仕事してまた休み、というのは却って調子が狂うというか、疲れるような気がしている。できれば明日も外に出て活動しておきたい。
昨日ずっと上田で0度前後の気温に晒されていたせいであろうが、東京の寒さは幾分マシに思える。夜はそりゃあ冷え込むけれど、日中でだいぶ盛り返す。何しろ普通に生活しておれば手がかじかむということがない。今これをスマホで打っていて「かじかむ」が自動変換されたんで知ったんだけど、「悴む」と書くようですよ。「憔悴」の「悴」だ。
2月11日
喫茶店で珈琲を飲んでいたら、隣の席からふと「ピザにパイナップルが乗ってるのって許せます?」という問いが聞こえてきた。盗み聞きなどいい趣味ではないが、ついでに少し聞いてみると「ん? うん。子どもの頃はよく食べてたよ」と返事の声。そして冒頭の問いの主。「……私、意外と許せるんですよね」。はい、空気読んだ。なんだ「意外と」って。
最初に「許せるか?」という問いかけをしている時点で、恐らくだが相手側にも「許せない側」のポジションを期待しているのがうっすら伝わる。しかし、その期待に沿わぬ答えが返ってきた(+言葉遣い的に相手のほうが立場が上)ので、角を立たさぬよう会話の流れを調整したに違いない。たぶん。ま、そのわりにはチャレンジングな口火を切ったなとは思う。
ちなみにあのハワイアンピザというやつはギリシャ系のシェフがカナダのレストランで考案したものらしい。名古屋生まれの台湾ラーメンみたいなものだろうか。
2月12日
おかしな夢を見た。鳩やらハクセキレイなんかの鳥たちがやたらと自室のなかに迷い込んでくる情景で、前後の脈絡などはあまり覚えていない。悪い夢ではなかったが、夢の中でめんどうだな、と思ったことは覚えている。
だってなんかこう、追い出すのも野暮じゃあないですか。
2月13日
柴田聡子さんの詩集『ダイブ・イン・シアター』(青土社、2024)の刊行記念イベントに行った@twililight。朗読と読んだ詩の解説、そして質問コーナーもあり楽しかった。
柴田さんはライヴには何度も行ったけれど朗読会というのは初めて(というかご本人も初めてとのこと、だったと思う)。次にいつこういった機会があるかはわからないけれど、またあれば行きたいと思う。
書かれる言葉と読まれる/話される言葉の違いについてはぼんやり考えていたけれど、「歌われる言葉」というのもあるよな、と今更ながら気づく。ソングライターとして詩を書くとき、そこには歌われることを前提とするか否かというところで違いが生まれる(或いは生まれないということも当然ありうる)。柴田さんならではのそういう視点の話もあり、とても興味深かった。
2月14日
この日は朝かなり早めに起きた。早く起きて夜まで普通に過ごすと一日が長い、そんな当たり前の気づき。
そして本日がヴァレンタイン・デイであることには、乗り換え駅の控えめな装飾で気づいた。クリスマスにしてもハロウィンにしても、街中の季節の装飾というのが一時期よりかなり落ち着いたように思うのは私だけだろうか。人々の心が落ち着いたのか、あるいは心の落ち着かない人々からクレームでもあったのか。あとは単純に企業や自治体の抱える経済的な事情かもしれない(というかこれな気がする)。
まあ私個人としてもあまりハデハデした装飾ら好むところではないので全然これはこれでよいのだが。ちなみにあのハートマークというやつの造形は結構好きである。