Z世代に伝えたい、優しい世界の作り方(1章)⑪
早朝に山の頂上で景色を見るのが僕の日課だ。今日は先約がいた。
「おさむ、この山は他に人は住んでいなかったのかい?」
「この山にはライフラインが通っていなかったからな、人は住んでいなかったんだ、キャンプというのは不便を楽しむものだからな」
僕はキャンプに興味がなかったから、やったことがなかった。テレビやインターネットやゲームがない生活なんて考えられなかった。しかし、なくなってみたら何もないことが幸せに感じるものだな。
山頂から森を見ても全く人の気配がない。もしかして、僕ら以外の人間は死んでしまったのではないかと思う。
それにしても、家賃や税金や年金のためにお金を稼がなければならなかった生活が懐かしい。災害の前は生活をするために必死だったからな。