吉原へ(キャラと散歩へ行こう)
江戸や昔の東京の大都市は、今でいう新宿や池袋、渋谷などの副都心ではなく、浅草あたり下町、隅田川一帯だったのでしょうか。
隅田川沿いには花見もさかん、さらに屋台も火よけ地として建てられ、芝居小屋もあったらしい。内側には江戸城もある文京区や千代田区。
こんな御江戸を今回は、アイドルたちサブカル文化を輩出した吉原を舞台に紹介しよう。
ただ、胸糞悪いキャラといっしょにwww さらに最後、こいつはみっともないくらいやらかしますから、それを汲んで、吉原に立ち寄りたい人たちはぜひ一緒に行きましょう!!
吉原へ案内するぜ!
吉原へは行ったことあるかぇ?
なに?無い!?
お江戸にはよく行くのに、江戸っ子の憧れの吉原は行かないのかぇ?
江戸でなく東京? 知ってるサ。ウチに出入りしている大工の参兵衛て野郎が度々、「照子、照子」と、未来とやらにしゃべりかけてるからね。アタシにも数百年後の未来が見える眼を神様に寄越せと言えば、なに、簡単にもらえるものだヨ。金さえ捧げれば、神さえ動かせるのだねぇ。
あんな参兵衛のような下衆の野暮天なんかがこんな便利なもん使うもんじゃないんだヨ。今日は参兵衛の野暮天の醜態はカットして、粋人のアタシが吉原を知らない貴方たちを連れてってあげよう。
アタシの住む深川から、猪牙(ちょき)船に乗る。猪牙船は隅田川を行く、そちらでいう高級タクシーみたいなものだ。
羽振りが良くねぇと猪牙船にゃ乗れねぇが、まあ、ふだん働く自分へのご褒美さ。世の中の緊張で頭使っている貴方たち、欲望を発散させねぇといけねぇや。
まあ吉原に顔出すのはアタシにとり仕事みてぇなもんだがな。アタシの口先で、多くの大工の仕事がありつけるってもんだ。
吉原に行くときの、隅田川の景色は良いもんだ。そっちの世界も舟遊びは良いもんだろ。
隅田川の桜は御公儀(幕府)が植えて、江戸屈指の桜の名所となっている。
そろそろ日が暮れて良い感じだゼ。
今戸橋から隅田川をはずれ、日本堤に向かう。
猿若町には寄らないが、まあ雰囲気でも。
紙洗橋は、傾城(遊女)らも使う浅草紙をつくる職人らが、紙を水(この水路の)でさらしているのだが、「漉き返し」(リサイクル)で紙を煮つめた紙を冷やしている間に職人らが吉原に行き、何もしないで帰るらしい。こっから「冷やかし」って言葉ができたのだが、金の無ぇやつは野暮ってぇな。うちの大工らも職人といっときながら、野暮天ばかりさ。
さて、日本堤で上陸だ。
吉原までもう少しだ。
吉原から出るものが、名残を惜しむ、見返り柳。
もてたヤツ、ばかり見返る 柳なり。アタシもあとで、ここで名残を惜しむゼ。
吉原へ、女を抱こう!
アタシが最近、かわいがっている花魁だ。輝紫といってな。まあ、アタシの嫁になりたいとかいうカワイイやつさ。
アタシが毎晩羽振り良くやってるから、それが目当てなんだろうがな。金のあるうちに手懐けておいてやろう。
「ねぇ、いつわっちをお嫁さんにしなんす?」
「そこの大店の工事な、あそこが終わったらだな。」
「ぬしさん、良い人でも居りんすか?」
「輝紫、おめぇが一番カワイイよ。」
「わっち、ぬしが間夫ざんしょ? 早くお嫁にしておくんなんし。」
「今夜はオイラの、嫁だぜ…」
「あぅン…
「はあ。こいつももうダメだな。早いこと手切れ金でも渡して、ていの良い話つけて(縁を)切っておくか。」
「ぬし、ねぇ。もっとしておくんなんし…」
翌朝。アタシは早朝から帰ることにした。
「待っておくんなんし。煙草入れを忘れてなんし。」起きて来やがった。
「ねぇ、次はいつ? 今夜も来なんす?」
めんどくさくなったなぁ。ん? 誰だ? 刀か? やべぇ、抜いてきた??
「角田屋か?」 なんでオイラを知っている?
「ぬしは、たしか!?」 輝紫の馴染みか?
短刀を抜いて振りかぶってきた男は、オイラをめがけて刺しにきた。緊張で動けねぇ!?
「!!」
輝紫はオイラをかばい、首を刺された。輝紫の情夫か? なぜオイラに??
「お花という女は知ってるだろう、角田屋。てめえにやり込められ、金巻き上げられて隅田川に身を投げたとよ。
俺は、その関係者(兄)から金で雇われものだ。へっへ…」
「まて、これで何とかしてくれねぇか。」
「へっへ…金があれば何でもなる、か。 まあ、おめえもこれからの身の振り方を考えねぇとな。おっと、そろそろ人が来たぜ!」
気づけば、オイラは一心不乱に走り去るしかなかった。
これで吉原の工事の話は全部台無しか。親父に怒られるのだろうな。
まあ、オイラがやったわけでもなし、どうにかなるだろう。
エピローグ
男女の愛憎入り乱れる、廓。
吉原近くの浄閑寺は、多くの遊女たちのご遺体が投げ込まれ(葬儀に出され)、遊女たちの墓が集まっている。生まれては苦界、死しては浄閑寺といわれるよう、貧しい農村で親に生きる金銭を得られるために売られ、金を持つ男たちを慰め、やがて梅毒など性病や嫉妬心などに犯され、大半の遊女たちは若くして他界していくのだった。
浄閑寺の若紫もそうである。才能あり人気があった若紫は、多くの富豪たちに贔屓をつくるも、恋した人と添い遂げようとした。
しかし、別の遊女に恋した男が、その遊女が別の男を客にとり、無理心中しようとしたが叶わず、若紫を刀で刺した。血の海にまみれた若紫。
彼女は、幸せの中に咲いた一輪の花のごとく人生において大花咲き乱れ、そして散ったのである。
彼女はもっと恋した男と添い遂げてほしかった。その悲劇が今の世にまで物語として紡がれ残ったのだろう。
同じように、浄閑寺には比翼塚もあり、借金で犯罪にも手を染めるも生活が成り立たなかった谷某が、品川の盛糸と無理心中したという、人間のクズが美談となった話もある。
何事も、歪な話が美談として語り継がれるものもあるが、この若旦那もこのあとどうなったものか。自由に考えてもらいたい。