リモート面接難しくない?(ある面接官の悩み)
今年はグループである株式会社しまうまプリントの採用担当をしている私です。今年の年賀状シーズンにはジャニーズ(Sexy Zone)から菊池風磨さんに出演いただいていることでおなじみです。
先日弊社グループのCTOと話をしていたときに、リモートのコミュニケーションの難しさがあるよねという話が出ました。
「面接での見極めというか、その人を知ること」が難しくなってきたよね、と。
採用の成功は「良い人物を採用すること」だけではなく、「採用した後に活躍できる人物を採用すること」ではかるべきだと思うので、良いと思って採用したけど...ということはできるだけ減らしていきたいものです。
リモート面接でわからないと言われていたこと
今まで、面接をリモートで実施することによって雰囲気(体の大きさなど)がつかみづらいという話はよく出ていました。当社新卒メンバーにも180cmを超える人がいるのですが、リアルに初めてあって「うわっでかっ!」ってついつい言ってしまうアレです。場合によっては清潔感に関すること(極端な例では体臭)などのNG項目が発見できなかったなどの話もちょこちょこ見かけます。もちろん、身長は選考においてなんの関係もないので、ただ驚いたというエピソードなのですが。
また当初はツールなどに不慣れであることに付随する問題点(カメラの位置で上から目線になってしまう等々)ということもいくつかありました。
その他には、当社ではほとんど実施していませんが、知識を問う質問はその場で検索できてしまうため使えない、などという問題点を感じているところもあるようです。
しかし、実際にリモートワークが普及し始め、使う側が慣れてきた、リモートワークが当たり前になってきたことで発覚し始めた問題点があります。
それは、リモートでの会話は簡潔であることが良しとされることです。
簡潔に話すようになった
これと面接の相性が実はあまり良くないのではないかと感じています。もちろん、ビジネスコミュニケーションとして簡潔であるのは良いことです。
一方で、「考えを聞く」というような場面において、簡潔なやりとりは面白みが少なく、深みに欠ける傾向があると思います。
面接官「今まで関わってきた仕事の中で一番大変だったことはなんですか?」
候補者「○○プロジェクトです」
いや。これは候補者側がやや極端で、例えば、
候補者「○○プロジェクトは、△△なものなんですが、そこで✕✕なことがあり、私はそれを☆☆して乗り越えました」
ぐらいはお話いただきたいなあとは思うんですが...これもまた、とても簡潔になってしまうと思うのです。
リモートでの沈黙はデジタルである
ここでいう「デジタル」とは、0か1か、ということです。例えば話し手が自分の会話を終わらせるかそうでないか微妙なニュアンスのボリュームの「えーと」という発声は、リモートであればそれが相手にきっちり伝わるような「えーと」でなければなりません。
テキストでいえば「候補者さんが入力中です...」に相当する何かを表現しない限り、相手には伝わりません。これにより、言いたいことを十分に話しきらないまま終わる状況につながってしまうように思います。
リモートにおける会話はターン制になりがちで、一度自分の発言を終えてしまうと相手のターンになってしまいます。次の質問が自身のいいたいことを引き出してくれるような質問でない限りその話が掘り起こされないのです。
※ もちろん、これは面接官側のスキルにも大きな問題があると言えますが、リモートの面接ではそれが起きやすく、ましてや面接という場では 「さっきのあそこ、もうちょっと補足させてほしいんだけど...」 ということがはばかられてしまう雰囲気を候補者が感じがちです。
しっかり聞き、伝わっていることを確認しながら話す。これを心がけて話していると、実際にリアルで話すよりもツール越しに話すほうがなんとなく時間が経過してしまうなという印象を感じている方も多いと思うのですが、実際に面接記録を見てみると、リアルでの面接よりも私の担当する面接では少しだけ ツール越しの面接でやりとりの回数、総話数が減っている傾向が見られました。
質問のやりかたで改善できるか?
例えば面接官の質問を、「一番大変だったことはなんですか?」から「一番大変だったときに、どのように取り組みましたか」とか「どのように考えましたか」という質問に明示的に変更するという方法もあるでしょう。できるだけ相手がたくさん話し続けてくれるように、ボールを相手に渡すようにすれば良いかもしれません。
もしシンプルに返ってきてしまったとしても掘り下げていく中で、「少し考えていただいても結構です」などと付け加えることで、じっくり考えて発言してもらうよう促すのも良いかもしれません。
リモートにはリモートならではの面接方式があるのでは
時折機会をいただく登壇の場などで感じることがあります。リモート環境での良さは、カンペを見ながら話すことができたり、準備をしっかり整えて臨むことができることです。そしてエンジニア職においてはその恩恵を受けやすい職種であると思います。即興的なことはあまり仕事では求められない印象があります。
そうなると、しっかり(とはいえコスパを検討する必要はありますが)と準備する材料を提示した上で面接に臨んで頂くという方が、今後の働き方にはフィットするのではないかと考えています。
例えば、理想的な組織・困難への対応・マネジメントの考え方・設計思想etcについては、新卒時代を思い出しますがエントリーシートを作成し、そこに記入していただいたことをベースに面接をする、という方法を考えています。
職務経歴書はどうしても過去のことで事実のみが書かれがちです。そしてその自己PRは、若干盛った内容が抽象的に書かれがちです。
一方で面接では、実際にどの程度のスキルがあるかの確認ももちろんながら、そのときなぜこのような判断をしたのか、どのような課題を設定してそれを解決したのかが求められます。その先には現在もしくは将来における会社の課題を解決可能な人物なのかを期待して選考しているわけです。
面接=会議と考えたら?
特定のケースにおいてどう考え、困難を乗り越えていくか。そういったことへ向き合うのには時間が必要です。面接を、候補者と企業が何らかの目的に向けて成果を出そうとしている会議と考えてみたらどうでしょうか?お互い十分な準備をして、良いディスカッションをしてみるというのはいかがでしょうか。
それぞれにはもちろん裏の目的があることはあるのですが、それは営業の商談でも同じだと思います。その商品を導入することによって企業にメリットがあり、営業側はその対価として売上が入る。候補者と企業の関係も、構造は違えど候補者からしてみたら数多の企業の中から自分がよりよい条件でよりよい働きのできる企業を選ぶというメリットがあるわけです。
とはいえうまくいかない。
通常の会議が簡潔な言葉で進行可能なのはそれがハイコンテキストであるという一面が大きいと思っています。
そこまでの経緯をともに過ごしている。情報はある程度共有されている。目指すところは同じという前提がある。これら事前の状態、コンテキストが十分共有されているからこそのいつもの会議なのです。
一方ある程度短い時間で知り合うところからお互いの見極めまで持っていく面接という場面においてはローコンテキストな状態かつ、考えて話すことが求められます。
・ローコンテキスト
・その場で考えて話す
・リモートだから簡潔
上記の3つがリモート面接を難しくしている原因なのではないかと思いました。まあ、普通の面接でも上の2つは変わらないのでそもそも面接が難しいんですけど!
無理やりまとめ
・面接はローコンテキストかつ考えて話すので難しい。そこにリモートが加わったことで難しさを増した。
・体験入社等、よりお互いを知るための機会を作っていかないとこの難しさは解消しないだろう。
・考えるための材料を事前に与えておくことでローコンテキストを減らす必要がある
・エントリーシートを書いてもらう
・募集の段階で課題がしっかり伝わるようにしておく
・一次面接にて課題を伝える
採用担当としてはこのような取り組みがより大事になってくるのではないかと思いました。
求職者の方については逆の目線で、企業の求める課題を早い段階でキャッチしてそれに対しての自身が貢献できるポイント、それが伝わるストーリーを作って、可能であれば職務経歴のアピールなどに活用すればよいのではないかと思います。