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「夜逃げの達人」①初めての夜逃げ
私は今世間的には夜逃げ状態…ふと振り返ると幾度ともなくこの「夜逃げ」に関わる人生でした。
そんな皆さんにあまり縁のない「夜逃げ」のお話を今回は体験から物語調にしてみます。
■人生初の「夜逃げ」
初めての「夜逃げ」は小学校四年生の頃
小学校に上がる頃、念願のマイホームを手に入れて借家暮らしから脱して数年間は普通の家庭だった。
両親共働きだったので、学校から帰りいつものように2つ歳上の兄と2人親が帰るのを待ちTVを見ていた。
突然夜に親戚の叔母と母親が来て、予め用意されていた段ボールが押入れからどんどん叔母の軽バンに積まれていく。
何をしているのだろう?と幼心に他人事のようにTVを見ていた。
「すぐ戻るから出かける準備しといて」
叔母の家にでも行くのだろうか、と兄と2人とりあえず出る準備だけして待った。
すると少し離れていた叔母の家に行っていたにしては、思うより早く戻ってきた。
促されるまま車に乗り込むと、着いたのは見たこともないボロい長屋だった。
「今日からここがおうちやけんね」
父親も後から来るのかな、あの玩具持ってくれば良かったな、などとくだらない事を思いながら
とりあえず二部屋しかない知らない家で、母親と兄と川の字になり眠った。
あまり環境が変わるのを恐れた母親の配慮で、名字も変わらず隣の小学校に通う程度の距離でしたがこれが「夜逃げ」人生の始まりだった。
理由は両親が他界した今もわからないが、恐らく父親の借金が原因と思われる。
しかしこの頃は「夜逃げ」した自覚なく、「引越し」した程度の思いで
何より前の家の時より狭く、大好きな母親が常に近くに居たのでそれはそれで満足してた。
■父親と幼少期
父親は特に暴力を振るうわけでもなく、色々と物は買ってくれたので嫌いではなかったが、苦手でもあった。
日曜日には父親がパチンコしてる間に、私はパチンコ屋の近くのユニードというスーパーのゲームセンターで、もらったお金でクレイジークライマーをやっていた。
昭和のゲームセンターでは保育園児が1人でゲームをやってるというのが当たり前だった…わけではなく当然に物珍しさから高校生くらいの集団に囲まれて話題になっていた。
暫くすると父親が迎えに来て、ガンダムのプラモデル(当時300円の物)をパチンコの勝ち負けに応じて1つから3つ買って帰るのが日常だった。
兄は小学校6年生だったのもあり、そのまま同じ小学校に通って卒業した。
兄はあまり父親と仲良くなかったので、父親が兄を訪ねてくることは無いという母親の判断だったがそれは正しかった。
新たな生活にも慣れて、新しい学校でも友達も出来て離婚や片親という事は理解していたが、イジメなどは無かった。
私の後に転入してきたその後の友人も同じ環境だったり、普段から特にそこをマイナスに感じる人達もクラスにいなかったのは幸いだったが、もしかしたら担任の先生の見えない努力のおかげだったかもしれない。
■「夜逃げ」の自覚
月日は流れ私も中学生になった。
基本的にただのゲームオタクで漫画が大好き、ファミコンよりパソコン(当時マイコンと呼んでいた)が早く欲しい健全な(?)中学生になった。
ここで問題だったのは、隣の小学校に通っていた程度の距離だった為に中学生ではまた前のクラスメートと同じになるという事だった。
母親も中学生になれば、もう大丈夫だろうという気持ちと先に入学した兄が問題なく生活している前例で安心していたのだが
私は一度離れている事をあまり考えていなかった。
入学式が終わり、新しいクラスメートも決まり知ってる顔も知らない顔も含めて色々と話をしていきうまくやっていけそうだと安心した私は別のクラスの友人に会いに行った。
そこで事件は起こった。
「あっ!夜逃げしたヤツやん!」
廊下に響く程の大声でこちらを指差す人間が居た。
以前の家の近所に途中から越してきた元クラスメートだ。
皆がこちらを振り向くが、自分には「夜逃げ」という概念が無い。
しかし確実に此方を指差している…混乱した私はその場を逃げるように去った。
今となってはすぐに察する状況も、小学生の頃の話で初めてのことに全く実感が無かった私
この日初めて理由は聞けなかったが母親に「夜逃げ」であった事を聞かされショックを受けたのを覚えている。
そこからこれまで話をしていた周りの反応がおかしくなり、暫く同じ小学校出身の友人としか話をしなくなった。
今思えばクラスではイジメにあっていたのかな、という状況。
その元近所の男はBと言うが、小学校の頃に同じ境遇で後から転入してきた友人Yと同じクラスだった。
数日して休み時間Bが私の事を面白おかしくクラスで話をしている、とYから聞いた。
恥ずかしさと怒りが込み上げ、また母親を馬鹿にされたと思う気持ちも相まって次の授業中は1人頭を抱えていた。
■「夜逃げ」望まない転機
そして休憩が始まる時間に私は行動に出る。
Bがトイレから出てきたところを捕まえて、問いただすがBは笑いながら本当だから仕方ないと言う。
後は記憶に無いが、気がつけばBが泣きながら謝るのを許さず馬乗りで殴っていた。
友人のYがBの友人が助けに入るのを阻止していた。
ゲームオタクとしてドット絵と2次元を愛し一生を終えるはずだった男の人生が狂った瞬間である。
この後は見事に転落人生に入り、Yは中学生の番長的存在になり私と2人で学校をサボっては自由気ままに生きる時間になる。
あの時Bが「夜逃げ」を指摘しなかったらきっと今頃はシステムエンジニアとしてかなり稼いでいた…とは思えないけどFXよりゲーム課金で死んでいただろうか。
しかしこれはまだ「夜逃げ」に関わった人生の始まりでしかない。
十代の後半には自分以外の「夜逃げ」した人間の跡とともに生活する「占有」で生きていく事になるとは夢にも思わなかった。
〜②に続く〜