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映画は宿命だ。<『砂の器』研究報告>

はじめに

どうも、こんにちは。

『午前十時の映画祭10』をコンプリートした結果、感想を書きたくて仕方なくなり、ここ数日間、連日投稿を続けている大学生・大矢哲紀です。笑

今回、紹介する作品は、近年でもリメイクされ続けている松本清張さんによる傑作ミステリー小説の映画化

かなり硬派な作風ゆえ、映画館では、若干、ウトウトしてしまった作品wですが、このたび、動画配信サイトにて再鑑賞

というわけで、この年代の日本映画をあまり観ることのなかった筆者ですが、そんな目線から、可能な限り、分かりやすく解説していきたいと思います。

記事の文末には、現在、鑑賞可能なストリーミングサービスをご紹介いたしますので、興味を持った方は、ぜひ、本編もご覧ください。

それでは、どうぞ。


今回の作品

『砂の器』

監督:野村芳太郎/制作国:日本/上映時間:143分

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出典:https://eiga.com/movie/37374/photo/


あらすじ

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出典:https://tv.rakuten.co.jp/content/201731/

東京の蒲田操車場内にて、身元不明の男性死体が発見された。

被害者と思われる男性が残した「カメダ」という言葉を頼りに捜査を始めるベテラン刑事

日本各地をまわり、少しずつ情報を集める彼だったが、事件の真相にはある人物の壮絶な過去が隠されていた……。


刑事のリアルを再現した展開

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出典:https://tv.rakuten.co.jp/content/201731/

本作で特徴的なのは、淡々としたリズムで進む展開

現代の映画では観客に分かりやすくするため、登場人物の語る過去などは回想シーンとして登場することが多いですが、本作では、ひたすら丹波哲郎さん演じるベテラン刑事の事情聴取の様子が映し出されます。

一見、地味ともいえるこの展開は、現代の映画やドラマを見慣れた私たちにとっては、かなり苦痛を要する演出

しかし、これこそが本作の大きな魅力になっています。

ひたすら現地調査を続けていく刑事の姿には、当時の地道な捜査のリアルを感じましたし、結果として、これらのシーンの積み重ねが圧巻のクライマックスを大幅に盛り上げることになるのです。


時代背景ゆえの発見

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出典:https://cinefil.tokyo/_ct/17262345

1960年に原作が発表され、1974年に映画が作られたという経緯もあり、当時と現在のギャップに、かなり驚かされるのも本作の見どころ。

個人情報の提供や血液型による検査など、かなり杜撰にも見える捜査に違和感を覚えたり、携帯電話がないことで緊急時に人の助けを呼べない描写や、(インターネットが普及しておらず、)旅先で周囲の人々との会話が必須になっているため、対象の足取りが容易につかめる描写があったりと、今の常識では簡単に理解できない部分も多数。

さらに、そのギャップを大きく感じさせるのが、本作で最も重要なキーワードになる「ハンセン病」(別名:らい病)の存在。

らい菌によって皮膚や神経に大幅な変化を起こし、ひどい場合は筋萎縮や運動障害を起こしてしまう恐ろしい病

その患者に対する差別が色濃く残る時代という描写には、初見では理解しきれない当時の社会背景が影響しており、これまで知ることのなかった病の恐ろしさを認識することになりました。

(ちなみに、後に製作された中居正広さん主演の2004年版では、当時の社会背景なども考慮して「ハンセン病」の設定は変更されている。)


『過保護のカホコ』との意外な共通点

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出典:https://www.cinematoday.jp/news/N0103621

ここまで、本作の内容をざっくりと説明してきたものの、とはいえ、現代の若者にとっては、硬派な印象を拭い切れない本作。笑

というわけで、今回は、あえて近年放送された日本の人気ドラマ『過保護のカホコ』との共通点をお話していきたいと思います。

(単純に、筆者が最近一番ハマっているドラマであるということは、気にしてはいけない。笑)

『過保護のカホコ』とは、『GTO』『女王の教室』『家政婦のミタ』といった数々の名作を生み出した脚本家・遊川和彦さんによる2017年の連続ドラマ。(現在は、関東ローカルで特別編と題した再放送が行われている。)

内容をざっくり説明すると、過保護な家庭で育てられた大学生・カホコが、天涯孤独の同級生・はじめと出会い、自分の未熟さを知ったことで大人になるため奮闘していくというもの。

ここで登場するはじめこと、竹内涼真さん演じる麦野初というキャラクターが、まさしく本作に登場するある人物と重なるのです。

ある人物の正体はここでは伏せますが、親とはなればなれになり、人を信じることが出来なくなった境遇、一方で親に特別な思いを抱き続けているという精神的な矛盾、そして、そのトラウマを芸術へと昇華しているという点。

これらの部分が見事に合致しており、個人的に、この2人は似た人物のように筆者は感じました。

どちらの作品でも同様に複雑な出自ゆえに、彼らが人との関わり(特に恵まれた環境で生きる人たちとの関わり)において、ある種の苦手意識を持っているという部分も印象的で、育てられた環境がいかに人生を左右するのかを深く考えさせられました。


今回の小道具

今回は劇中に登場する砂の山を再現してみました。

(「砂の器」は作れませんでした。なんか、すいません……。笑)


おわりに

いかがだったでしょうか。

現代を生きる私たちにとって、一昔前の作品を観ることは考えもしなかった「当時の常識」を知ることに繋がる。

個人的には、そんなことをふと感じる貴重な鑑賞体験になりました。


ところで、本作では「宿命」という言葉がキーワードとして登場しましたが、映画を観ることにおいても、ある種、この言葉は繋がっているように感じています。

その日、その時、その映画を観たことで、人生が変わることもある。

つまり、映画と出会うタイミングは、ある種、観客において「宿命」なのではないか。

事実、そのような機会に出会えることは決して多くはないかもしれません。

しかし、そんな出来事が、いつか起こると信じて、どんなジャンルの作品でも気軽に挑戦してみたいものです。


最後まで、読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。

以下に、現在、本作を配信中の動画配信サイトをまとめてみましたので、もし、興味を持った方がいましたら、ぜひ、ご覧ください。

それでは、また次回、お会いしましょう。


<配信情報>

Netflixさん

Amazon Prime Videoさん

U-NEXTさん

FODさん

楽天TVさん

Huluさん


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