放課後城探部 二百十七の城
楽々園を出てすぐ左手の受付にチケットを渡して私達はいよいよ玄宮園に入る。
玄宮園は楽々園のすぐ隣の庭園で楽々玄宮園と呼ばれる大きな大名庭園らしく、楽々園は無料公開されているけど玄宮園は天守とセットで有料公開になっている。
受付の横の細い通路を抜けるとすぐに大きな池があって池のそばには大きな屋敷のようなものが庭園を飾るように置かれていた。
池は城の南側に広がっていて奥には橋が中洲に二本かけられていて通路の左手には楽々園の書院などが広がっていてなんとも言えず贅沢な庭園になっていて素晴らしい景観となっていた。
「これは・・・」
私が大名庭園に入ったのは和歌山城に続いて二度目だが玄宮園はそれよりも大きくて広くてゆったりとしていた。
天護先生は屋敷の方向に振り返ると空の方向を指して
「あそこを見上げなさい。」
と促すので私と訪ちゃんは先生の指差す方向に振り返るとそこには彦根城の天守が山から顔を出して庭園に華を添えていた。
「凄い庭園やな・・・」
訪ちゃんは思わず感嘆の声を上げる。
池には天守が反射して写し出されていて玄宮園の美しさに拍車をかけていた。
「相変わらず玄宮園は良いわね。」
先生は遠くの山に飛び出した天守を見つめる。
「私も素晴らしいと思います。」
あゆみ先輩は先生の言葉に頷いた。
「栗林公園や日本三名園と比べると玄宮園は規模が小さくなるけど彦根城の天守を庭園から拝むことが出来ると考えればそこにアドバンテージがあるわよね。」
先生は他の庭園と比べて玄宮園の良さをそう評しする。
先輩は少しだけ悪戯っぽい顔をして
「先生はどの庭園が一番好きなんですか?」
と玄宮園に感動している先生にそう聞いた。
きっと先輩は先生を困らせて見たくなったのだ。
だけど先生は全く迷うことなく
「香川の栗林公園よ。」
と即答したあと、
「だけど、今日だけは玄宮園が最高よ。」
そう言って先輩に余裕のある笑顔を見せた。
「なるほど、そう来ましたか。」
先輩は先生の答えにちょっとだけ残念そうな顔をした。
「私をからかおうだなんて100年早いわよ。」
先生は先輩に向けてしたり顔で言うと先輩もニコッと笑って
「確かにこんな良い雰囲気を演出されたらさすがの栗林公園も今日だけは勝てないかも知れませんね。」
先輩はそう言って鏡面仕立ての水面に写し出された天守を見つめてそう言った。
先輩の言葉に先生はなんだか誇らしげに
「その通りよ。」
そう言って少しずつオレンジ色掛かってきた空が鏡面の水面に映る天守を彩って美しさに拍車をかける。
「これだからお城が好きなのよね・・・」
先生はいつもの自由奔放な先生と違って目をキラキラと輝かせていた。
堅牢で機能美に溢れる強い城、威厳あふれる格好のいい城、庭園などで着飾る美しい城、こんなにも色んな顔を知ってしまったら誰も先生に異論を唱えるはずはない。
「ホントその通りですねぇ・・・」
私達はお城と出会うことが出来て本当に幸せだと思う。
私達はみんな美しい庭園に心奪われるのだった。
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