放課後城探部 二百十三の城

私達は玄宮園のある黒門に向かうためにもと来た道を歩いて山崎曲輪に差し掛かるところだった。

山崎御門に残された冠木門が少しずつ色づいてきた太陽の光に照らされて私の目にはまるで黄金の門に見えて少し神々しく見える。

周りが木々に囲まれて太陽の光が隠れて影になっているのも山崎御門を印象づけるのを手伝っていてそれが私の目を引いたのだ。

横目で見ながら歩いていると訪ちゃんが

「そんなにあの冠木門が気になるん?」

と声をかけてくる。

「なんか光があたって目立つから・・・」

「確かに目立つな。冬が近づくとすぐに日が沈もうとするから、このくらいの時間でも斜めの光が綺麗に照らしおるんやな。」

訪ちゃんは私の言葉にそう答える。

季節はまだ秋なのに10月も末になると急に日が暮れるのが早くなってなんだか嫌だなあと感じることもあるが、夕方になるのが早いおかげで雰囲気のある光にすぐなるのがこんなところで役に立つのだなあと感じていると先生が

「今は冠木門しかない山崎御門も昔は立派な櫓門だったのよ。少し低い位置にあるから今は埋門のように隠れているように見えるけどね。」

と教えてくれた。

「確かに周辺の石垣がそれっぽい形をしてますよね。」

「そこに着目できるようになったのは勉強している証拠ね。」

先生が褒めてくれたのでなんだか照れくさく感じる。

歴史関連のことで褒められたことなんてあまりないので褒められ慣れていないのだ。

「ところで冠木門って、どうして冠木門っていうか知ってる?」

先生は私を褒めたところで唐突にクイズを出題する。

訪ちゃんも私も急なことに戸惑いながらも頭の中で考えるとあゆみ先輩が

「先生、どうせなら3択問題にしませんか?そのほうが答えやすいですし。」

と提案してくれる。

ヒントのないクイズほど難解なものはない。

3択だと多少当てずっぽうでも当たるのだから私にとっては都合が良いことこの上なかった。

「急に3択の答えを考えないといけない私の身にもなりなさいよ。」

先生はそう言って先輩に抗議するが先輩は

「あまりにもヒントがないと当たらないし、つまらないですよ。3択なら答えが目に見えますし、わかりやすいですから記憶に残りやすいですし。」

「そう・・・?」

と先輩が推すので先生は渋々少し考えて

「じゃあ1・門柱の突き出した部分が冠のように見えるから、2・歌舞伎踊りの元祖阿国の屋敷の門の形状に似ていたから、歌舞伎の文字が変化して3・門の上部の門柱を貫く横木を冠木と言うから。」

なんとか3択を絞り出してくれた。

先生の作った3択に先輩はニコニコと私達の答えを待っている。

私がう~んと悩んで考え込んでいると横で訪ちゃんも腕を組んで考え込む。

どれもありそうな答えだけど2番だけはやけに内容がはっきりしている。

阿国という人がいつの時代の人かは私にはわからないけど歌舞伎の元祖というくらいだからとにかく人気があった人だったのではないか?

そんな人の屋敷の門に似た形状ならば言葉の語源にもなるのではないかと考えると私の2の答えに心惹かれた。

「私は2です。」

先生に答えを伝えると先生はフフッと笑って

「訪は?」

と訪ちゃんの答えを急かすが訪ちゃんは

「ちょっと待って・・・」

と考え込んでから

「答えは1や」

とおもむろに先生に答えを伝えた。

訪ちゃんの答えに先生は私が答えた時と同じようにフフッと笑うと

「答えは・・・」

と難しい顔をしてしばらく答えを溜める。

私と訪ちゃんはドキドキしながら先生の顔を見つめて答えを待つ、その仕草が先生の優越感を刺激したのかニッと笑ったような気がした。

あまりにも溜めるので先輩もドキドキしながら先生の答えを待っているようだった。

そしてついに耐えきれずに訪ちゃんが

「もうええから答えを教えてや!」

と先生を急かすと先生はついにゆっくりと口を開いて

「答えは・・・3よ。」

と言ってニヤッと笑った。

訪ちゃんは

「なんやそんな溜めることや無かったやないか・・・」

と気を持たされたことに不満を口にすると先生は

「3択、4択のクイズっていうのは気を持たせてこそ面白いのよ。そう言う決まりなの。」

先生はなんだかよくわからないことを言って私達を煙に巻くのだった。

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