わたせせいぞうの吸引力
以前、NHK Eテレ「SWITCHインタビュー」に、亀梨くんの対談相手として、わたせせいぞう氏が出ていた。わたせ氏のファンという、亀梨くんからのリクエストだったらしい。
比較的若い亀梨くんが、というか、わたせせいぞう ど真ん中世代ではない彼が、なぜ、対談相手に指名するくらい好きなのかは、ちょっと謎だったが、まぁ、いろいろあるのだろう。年上彼女が好きだったとか?(想像)
そういえば前に、白金台を歩いていたとき、ふっと、「わたせせいぞうギャラリー」という、やや庶民的なスポットを見かけた。
へえ、こんなところに常設してるんだ、と思った。
通りすがっただけだけど、昔は、ちょっと遠いロマンチックな別世界、と思っていたのに対して、実はオープンマインドな人なのかも、と思った。
テレビのわたせ氏は、だいぶお年をめしているが、彼の絵の世界観を壊さない、にこやかな、やさしげな人に思えた。何より、かつては独特のヴェールに包まれていた人が、テレビに出て、自分の思いなどを語っているところに、好感をいだいた。ご本人の、おとろえぬ好奇心を感じて、いいなぁ、と思った。亀梨氏も当然、喜んでいるようだった。
で、わたせせいぞうの吸引力である。
JR東日本+JR北海道がやっている、「大人の休日倶楽部」である。
「鉄」な私は、50才を超え、大人の旅を吹聴する駅貼りポスターがあると、人々でごったがえす階段の途中でも、上りながらチラッとチェックするほどには、ターゲティングされていた。
しかし、吉永小百合さんバージョンは、お高いんでしょ、平日ヒマな人じゃないと行けないんでしょ、という感じがして、アウト・オブ・コンサーンだった。
しかし、ここで、わたせせいぞうのパワーを見せつけられるのである。
「大人の休日倶楽部」ウェブ入会キャンペーンや、「大人の休日倶楽部パス」という期間限定でおトクに乗りホですよー、という告知ポスターは、わたせである。
イラストが、引き寄せる。
今ならウェブ入会すると抽選でポイント当たるとか、気ままな旅に割安で行けるとか、ほら、50才を超えた大人のみなさん、おトクですよ、鉄道で旅しましょうよ、と。
昔、漫画「ハートカクテル」は買ったけど、内容はぜんぜん覚えてなくて、そのイキフン(雰囲気)だけが、ほんわかと、30年も私らのなかに、残っているのである。
あの晴れやかな、明るい、優しい、そよ風のような、新鮮な、気持ちいい世界に、行けるのか、大人の休日倶楽部。52才のワタシはお得なのか。
しかしだよ、年会費が2600円くらいするんだよ。
いくら電車代が5%オフだって、5万円以上乗らないとペイしないじゃない。5万円って、妄想してる北海道の鉄の旅でもそこまでいかんよ。お得じゃないよ。
え、初年度は年会費無料? 早く言ってよ〜。なんで大々的に書いてないの?
でも、大人の休日倶楽部カード=VIEWカードで、クレカ必須でしょ?
ちょっとずつ終活に向かういま、余計なクレカは、作りたくないんだよなぁ。
これ、大きなネック。
差し迫った旅行と、閑散期のお得なきっぷと、クレカ作りたくない気持ち、それらが拮抗した。
入ろうか、入らないか。
やめとくか、いや、やっぱりお得か?
そのボーダーラインで、せいぞうは、いや、せいぞうが描く、爽やか服に白いハットで斜めこちらに目線を投げかける女性(完全に脳内イメージ、もうチラシすら不要)は、爽やかな風に吹かれながら、笑顔で静止しているのだ。
入るんかい、
入らないんかい、
ミルクボーイの心の振り子の、隣のページで、永遠に微笑み続ける、せいぞう。
いつしか、入会のメリットとは別に、心の振り子がせいぞうのイラストの上で行ったりきたり。
えいっ、もう、わたせせいぞうの大人の休日倶楽部の世界に惹かれとるやんけ!
そう思って、入会しました。
クレカって、問題なければ、簡単に作れるんですね。
届いたカードに、せいぞうはいないけれど、もう妄想のなかで、わたせワールドになってるので、気をよくしてお盆の特急券を購入。
「このカード、初めて使うんですが、5%オフで使えるんでしょうか?」
「はい、ありがとうございます。大丈夫ですよ」
気をよくしてお会計近くなったとき、
若い、みどりの窓口の女性が
「あっ、すみません、お盆の期間は5%オフの対象外になってしまうんです」
やられたー。崩れゆく思わく。
なんでデカデカと書いてないかなー。
でもいいや、大人の休日倶楽部パスの期間、あのローカル線に乗って、もとを取ろう。
わたせせいぞうのイラストの世界が想起される旅は、心明るく、楽しい旅なのだ。
そうして楽しんだ、お盆の北海道旅行。
最高。最高すぎる。夢ってかなうのね。
宗谷本線。ぬかなん、ばっかい、サロベツ原野。音威子府そば。
そして、恋をしてしまった、あの駅。
知らんかった。ホームからポツンと離れたノラ駅。
貨車駅舎というのですね。
暗いなか、だれもいないところで、窓からあかりを放ち、まるで、誰も知らない、令和の猫バスのような。
きみ(駅)がそこにいると思えば、私は東京にいても、心にポッと灯りがともり、元気が湧いてくるんだ。
でも、かなしいことに、きみ(駅)は、次の春で、その役目を終えることが、決まってしまった。
秋のきみ(駅)も、冬のきみ(駅)も、ちゃんと見たい。
つーか、明るいうちに、立ち降りてみたい。
列車の本数が少ないから、一度おりたら何時間か、きみ(駅)といっしょさ。
そんなところに、Web限定「大人の休日パス東日本・北海道スペシャル」のチラシとポスターがざんざか、ざんざか! 行かんかい!と。
今度こそ、初めての「大人の休日倶楽部」を行使して、えきねっとで券を買ったわ!
通常4万円以上の列車代が、ほんとに26620円ポッキリよ!
新幹線や特急も6回までとれて、まじおトク!
金曜しごおわ、会社の最寄りが東京駅なので、デパ地下でチラシ寿司弁当買って、北海道新幹線に飛び乗って(うそ、30分も前からホームで待ってた)、ラビザミーステリー♪
東京から北海道への4時間なんて、弁当食べて、ポッドキャスト聞いて(新幹線でも途切れない!)、ネットみて、noteでも書いてりゃスグよ。
いま、新青森をすぎ、津軽半島から、関門…じゃないわね、青函トンネルをくぐれば、そこは北海道。新函館北斗から〜の、留萌本線めざして、きみ(駅)に〜会いに行くよ〜きみ(駅)に会いに〜行くよ〜♪