湯ばあば走りとギラギラハート
朝、駅へ急ぐ。小走りで走る。
息が切れる。歩きそうになる。
ここで歩いては、電車に乗り遅れる。会社に遅れる。
なるべく体力を保ちつつ、前へ前へ、効率よく移動しなければいけない。
見てくれは、関係ない。
ぐっと背を丸め、腰をかがめる。
膝を曲げ、おばあさんのような格好で、自らを前へスイープする。
私は、湯ばあば。
ああこれを、「湯ばあば走り」と名付けよう。
あの大きな頭に比して短いスカートのなかで、くの字の足が、ごきぶりのようにサササーと動いているに違いない。
湯ばあば走りは成功し、あと1分のところで7:35発の電車に間に合った。
◇ ◇ ◇
夜、会社から帰る。
にこにこ😊 している娘に声をかける。
私「受験が近くて、すっごいピリピリしてるんじゃない?」
娘「そうだよ。さわるもの全部キズつけるよ」(にこにこ😊)
私「さすが受験生!」
娘「ギラギラハートだよ」(にこにこ😊)
いやー、娘は、2003年、こないだ生まれましたからね。
まさかの昭和のチェッカーズを持ち出してくるとは思わなかったね。
受験生なのは確かなんだけど、にこにこなのは、すでに1校受かったから。
ほんとよかったね。あなたの徳に幸があったね。
夫が、食器を洗いながらつぶやく。
「その歌、ギラギラハートじゃないけどね」
なんでもないようなことが幸せな一日である。