命懸けのカニ漁とチームの絆:リーダーとフォロアーの物語
リーダーシップとフォロアーシップはチームの成功に欠かせない要素です。極限の状況で見られる信頼と絆が、どんな職場にも応用できる大切な教訓を教えてくれます。
チームの絆:フォロアーシップと信頼の力
前回の記事では、特殊部隊から学ぶリーダーシップの一つの側面についてお話ししましたが、読んでいただけたでしょうか?まだでしたら、是非読んでみてください【記事はこちらです】。ところで皆さんは、「フォロアーシップ」という言葉をご存じでしょうか?
フォロアーシップとは、リーダーを支えるフォロワー(部下やチームメンバー)の積極的な役割を指します。単に指示を待つだけではなく、主体的に考え、行動し、チームの成功に貢献する姿勢が求められるのです。この概念はリーダーシップと表裏一体でありながら、実際には見落とされがちな重要な要素です。
しかし、フォロアーシップを発揮するには、ある重要な前提が必要です。それは、リーダーがフォロワーに信頼されていることです。正に特殊部隊の例と同じですね。では、ここで、一つの実例を紹介しましょう。
フォロアーシップが機能しなかった経営者の実話
ある会社の経営者がキックオフミーティングで従業員に向けて、フォロアーシップの重要性について熱弁を振るいました。「皆が主体的に行動し、リーダーを支える意識を持つべきだ」と語りかけたのです。
ところが、この経営者には致命的な問題がありました。それは、従業員からの信頼が極めて薄かったことです。従業員たちは、「この人のために頑張りたい」とは思えませんでした。その理由は、日々の言動がリーダーとしての信頼を損ねるものであり、彼の示す方向性に納得感がなかったからです。
このような状況下でフォロアーシップの重要性を語っても、従業員たちの心には響きません。フォロアーシップは決して単独で機能するものではありません。リーダーが示す方向性や態度にフォロワーが共感し、信頼できて初めて意味を持つのです。この経営者の例は、フォロアーシップが信頼の上に成り立つものであることを教えてくれます。
世界で最も危険な仕事とフォロアーシップ
対照的に、フォロアーシップが機能している好例として、「世界で最も危険な仕事」と言われるカニ漁の現場を考えてみましょう。極寒の海で行われるカニ漁は、命を懸けた過酷な仕事です。船が転覆すれば即座に命を失うような環境の中、乗組員たちは命がけで作業を続けます。
ここで注目したいのは、船長と漁師たちの間に築かれた強い信頼関係です。船長は、的確な判断力と冷静な指揮を求められ、乗組員たちにとって文字通り「命を預ける存在」となります。その信頼があるからこそ、漁師たちは恐れることなく危険な作業に取り組むのです。
実際に、仲間が波にさらわれて海に落ちる危険な状況が起きた場合、乗組員たちは漁の進行を一切後回しにし、全員で救助に当たります。命がけで仲間を引き上げ、時には漁を中止してでも病院に連れて行くこともあるのです。
こうした行動は、チーム全体に深い信頼と責任感がなければ成立しません。信頼されない船長が「フォロアーシップの重要性」を語ったとしても、誰も耳を貸さないでしょう。フォロアーシップは、リーダーシップの質が高いからこそ機能するものなのです。
フォロアーシップの本質を見つめる
フォロアーシップの本質は、「主体的にリーダーを支え、チームの成功に貢献する」ことにあります。ただし、それを実現するには、リーダーが信頼され、フォロワーたちが「この人のために頑張りたい」と思える状態が不可欠です。信頼されるリーダーシップがあって初めて、フォロアーシップは力を発揮します。
皆さんも部下やチームメンバーにフォロアーシップを求める前に、自分自身のリーダーシップを一度再点検してみてはいかがでしょうか。日々の言動が信頼を築くものになっているかを見直すことで、チーム全体の力をより引き出せるようになるかもしれません。
では、次回もお楽しみに。