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【短編】「color」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 002
夜、ひとりで寝ていたら、なんだかいろいろな周波数の振動が五月蝿い。
音でもなく光でもない周波数の混合体なので、フーリエ解析を行ってみたら、部屋の隅に女性が姿を現した。
RGBのAliceblueだった。
生気のない顔で俯いているが、こちらも静かに眠りたいので、社交辞令として「何かあったんですか?」と聞いた。
「ちょっとブルーで」と、さっきまでの五月蝿い振動とは打って変わって聞き取れないような音声波動で彼女は呟いた。
「そうですか。まあ、この世界、いろいろありますよね。」
時計を見ると、3時を回っている。話が長くなるのも嫌なので(明日は8時半からプレゼンなのだ)とりあえずそのままそっとしてベッドに潜り込んだら、彼女はいつのまにか#0000ffになっている。完全なblueだ。
このまま#00008b、darkblueになられても夢見が悪いので、せめて#add8e6、lightblueにでも色調補正をかけてしまおうかと思ったのだが、女性には優しくありたい。僕は見かけはぱっとしない分、いつもそのことを信条にしていた。
「まあ、明日はきっといいことありますよ。」
精一杯の気持ちを言葉にして寝返りを打ったら、また彼女の消え入りそうな音声波動が返ってきた。
「話を聞いてもらえますか?」
#87cefa 、lightskyblue。空が白み始めていた。
僕は小さくため息をついて、うなずき、体を起こした。
彼女は少しほっとした様子で、笑みを浮かべた。
波長は#f8f8ffになっていた。